25歳の男性。野球の試合で走塁中に大腿後面に違和感と痛みが生じた。直後に整形外科を受診したところ、大腿部エックス線写真では骨折を認めなかった。この時点での物理療法で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
設問の状況は、野球の走塁中に大腿後面に生じた急性期の軟部組織損傷(肉離れや筋挫傷など)を示唆しています。X線写真で骨折がないことが確認されており、炎症と疼痛が主な問題であると考えられます。急性期の軟部組織損傷に対する物理療法の基本はRICE処置であり、中でもアイシング(冷却)は、血管を収縮させて出血や浮腫の拡大を防ぎ、炎症反応を抑制し、痛みを軽減する効果が期待できるため、この段階で最も適切な選択肢です。他の選択肢は温熱療法や血管収縮・拡張を促すものであり、急性期の炎症を増悪させるリスクがあるため不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 交代浴は血管の収縮と拡張を繰り返し、血行促進や浮腫軽減に効果があるとされますが、急性期の炎症が強い状態では刺激が強すぎ、症状を悪化させる可能性があります。正しくは:急性期の炎症が治まり、慢性期に移行した段階で考慮されます。選びやすい理由:血行促進効果があるため、回復期に役立つと誤解しやすい。混同注意:温熱療法と冷却療法を交互に行うため、どちらの効果も得られると錯覚しやすい。
- 2. 極超短波は深部加温効果のある温熱療法ですが、急性期の炎症が強い状態では、熱によって炎症をさらに悪化させ、出血を増大させるリスクがあります。正しくは:炎症が治まり、組織修復や疼痛緩和を目的とする慢性期に適用されます。選びやすい理由:筋肉の深部に作用するため、筋損傷に効果があると思われがち。混同注意:深部温熱療法全般が急性期には不適切であるという原則を忘れてしまう。
- 3. 正解。野球の走塁中に生じた大腿後面の痛みは、ハムストリングスなどの筋挫傷や肉離れの可能性が高く、X線で骨折がないことから、急性期の軟部組織損傷と考えられます。この時期のアイシング(RICE処置の'I')は、血管を収縮させて出血や浮腫を抑制し、炎症反応と疼痛を軽減するために最も適切です。正しくは:急性期の軟部組織損傷において、炎症、出血、疼痛、浮腫を抑制する目的で使用します。選びやすい理由:寒冷刺激が痛みを増悪させると誤解する人もいる。混同注意:温めることで血行を良くしようとする考えと混同しやすい。
- 4. ホットパックは表層加温効果のある温熱療法です。急性期の炎症がある部位に温熱を加えると、血管が拡張して血流が増大し、炎症反応や出血、浮腫を悪化させる恐れがあります。正しくは:炎症が治まり、筋の緊張緩和や血行促進を目的とする慢性期に適用されます。選びやすい理由:温めることで痛みが和らぐと感じる人もいるため、選択肢として魅力的。混同注意:慢性期の温熱療法の効果と急性期の禁忌を混同しやすい。
- 5. パラフィン浴も温熱療法の一種で、主に手足の関節拘縮や慢性疼痛に対して用いられます。急性期の筋損傷に対しては、ホットパックと同様に炎症を増悪させるリスクがあり不適切です。正しくは:関節拘縮の改善や慢性疼痛の緩和など、主に手足の慢性期の疾患に適用されます。選びやすい理由:温かさによるリラックス効果を期待して選びたくなる。混同注意:特定の部位(手足)への適用や、慢性期に対する適応を忘れてしまう。
国試ポイント
急性期の軟部組織損傷に対する物理療法の初期対応(RICE処置の原則)と、温熱療法の急性期における禁忌を理解しているかどうかが問われる。特に、筋損傷が疑われる症例で骨折を除外した後の初期対応が重要。
混同注意
温熱療法(ホットパック、極超短波、パラフィン浴)は痛みの軽減や血行促進効果があるため、慢性期の症状緩和には有効ですが、急性期の炎症や出血がある状況では症状を悪化させる可能性があり、混乱しやすいポイントです。交代浴も回復期には用いられますが、急性期には不適切です。
次に同じ論点が出たら
急性期を過ぎ、炎症が軽減し、疼痛が落ち着いてきた段階で、回復促進や機能改善を目的とした物理療法(温熱療法、マッサージ、運動療法など)の導入を検討します。
関連知識
RICE処置(Rest: 安静、Ice: 冷却、Compression: 圧迫、Elevation: 挙上)の各要素とその目的。物理療法における温熱療法と寒冷療法の適応・禁忌。筋挫傷、肉離れなどの急性期の軟部組織損傷の病態生理。