75歳の男性。冠動脈バイパス術後。病棟での運動療法中に胸部不快感を生じた。そのときのモニター心電図〔別冊No.4〕を別に示す。この患者にみられるのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
提示されたモニター心電図では、P波が不規則に出現し、QRS波形は細く、RR間隔が不整であることから、心房からの興奮がランダムに心室に伝導される心房細動の典型的な波形が認められます。これは冠動脈バイパス術後の75歳男性が運動療法中に胸部不快感を生じた状況であり、心房細動による心拍出量低下や心房収縮の消失が不快感の原因となっている可能性が高いです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。モニター心電図ではP波が確認できず、基線に不規則な細動波(f波)が認められ、RR間隔が完全に不規則(absolute irregularity)であるため、心房細動と診断できます。症例の75歳男性という年齢や冠動脈バイパス術後という背景も心房細動の好発条件に合致します。選びやすい理由:特になし。特徴的な心電図所見から判断しやすいです。混同注意:心房粗動
- 2. 洞性徐脈ではP波が先行し、PQ間隔、QRS波、ST-Tが正常で、心拍数が60回/分未満となります。提示された心電図ではRR間隔が不規則でP波が確認できず、心拍数も必ずしも徐脈ではありません。正しくは:P波が正常に存在し、QRS波に先行し、RR間隔がほぼ一定で心拍数が60回/分未満であること。選びやすい理由:運動療法中に胸部不快感という症状から、心機能低下による徐脈を連想する可能性はありますが、心電図所見が異なります。混同注意:洞性不整脈(呼吸性不整脈など)
- 3. WPW症候群は、副伝導路の存在によりPQ時間の短縮とQRS波の立ち上がりにデルタ波を認めることが特徴です。提示された心電図ではPQ時間の短縮やデルタ波は認められません。心房細動と合併することはありますが、この波形はWPW症候群の特徴を示していません。正しくは:PQ時間の短縮とQRS波の立ち上がりにデルタ波を認めること。選びやすい理由:WPW症候群も頻脈性不整脈の一種であり、動悸や胸部不快感の原因となり得るため、症状から想起される可能性はあります。混同注意:その他の頻脈性不整脈
- 4. 心室性期外収縮(PVC)は、QRS波が先行するP波なしに早期に出現し、幅広い異常なQRS波形を示します。提示された心電図では、QRS波形は比較的細く、すべての心拍が不規則ながらも同様の形をしており、PVCの特徴的な波形とは異なります。心房細動における不規則なQRS波は心室性期外収縮とは異なる機序です。正しくは:P波を伴わない幅広いQRS波が早期に出現し、その後に代償性休止期を伴うこと。選びやすい理由:RR間隔の不規則性から不整脈を疑い、異常なQRS波と誤認する可能性があります。しかし、QRS幅は比較的正常で、すべてのQRSが不規則ながらも同じような形をしている点が異なります。混同注意:心室頻拍、心房性期外収縮の心室内変行伝導
- 5. Ⅱ度房室ブロックはP波とQRS波の関連に異常があり、一部のP波がQRS波に伝導されない状態です。Wenckebach型ではPR間隔が徐々に延長してP波が脱落し、MobitzⅡ型ではPR間隔は一定で突然P波が脱落します。提示された心電図ではP波が確認できず、房室ブロックの診断に必要なP波とQRS波の関連を評価できません。正しくは:P波が正常に存在し、一部のP波の後にQRS波が脱落するか、PR間隔が徐々に延長後にQRS波が脱落すること。選びやすい理由:不整脈の一種であり、心臓の電気伝導系の問題であるため、症状から想起される可能性はありますが、心電図所見が合致しません。混同注意:Ⅲ度房室ブロック
国試ポイント
モニター心電図から代表的な不整脈(心房細動、心室性期外収縮、洞性徐脈など)を正確に識別できること。特にP波の有無、QRS幅、RR間隔の規則性が重要です。
混同注意
心房細動と心房粗動や多源性心房頻拍はP波がはっきりしない点で似ていますが、心房細動では基線が不規則なf波となるのに対し、心房粗動では規則的なF波(のこぎり波)が見られます。多源性心房頻拍では異なるP波形が3種類以上認められます。
次に同じ論点が出たら
心電図判読において、まずRR間隔の規則性、P波の有無と形、QRS波の幅、PQ間隔、QT間隔を順に確認し、正常洞調律からの逸脱を見つけることで診断を進めます。
関連知識
心房細動は高齢者に多く、虚血性心疾患の既往がある患者に合併しやすい不整脈です。合併症として脳塞栓症のリスクが高まるため、抗凝固療法が重要となります。運動時の胸部不快感は狭心症の症状でもありますが、不整脈による心拍出量の変化でも生じます。