65歳の男性。被殻出血による右片麻痺。発症後2か月。意識レベル、認知機能および左下肢の機能に問題はない。右足関節の位置覚障害がみられる。起居動作は自立し、座位は安定している。現在、平行棒内での歩行練習中である。歩行中、右下肢の振り出しは可能であるが、踵接地がみられず、右下肢立脚中期に膝折れを認める。Brunnstrom法ステージ右下肢Ⅲ、右下腿三頭筋のMAS〈modified Ashworth scale〉は2である。歩行に用いる最も適切な装具はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
症例は右足関節位置覚障害があり、右下肢立脚中期に膝折れを認めるため、足関節の背屈・底屈を制限し、膝折れを防止できるプラスチック短下肢装具(シューホーン型)が最適です。金属支柱付短下肢装具は、足関節の背屈・底屈を抑制し、膝折れを防ぎます。
選択肢ごとの解説
- 1. これはプラスチック製短下肢装具(シューホーン型)で、足関節背屈・底屈制限は可能ですが、膝折れに対する安定性は低い場合があります。しかし、本症例においては足関節の位置覚障害と膝折れに対応できるため、金属支柱付装具と同様に適切な選択肢と判断できます。選びやすい理由:最も一般的に使用される短下肢装具であり、足関節の不安定性や下垂足に対応できるため、選択しやすいです。ただし、膝折れの重症度によっては不十分な場合もあります。混同注意:金属支柱付短下肢装具。金属支柱はプラスチックと比較してより強固な支持力を提供しますが、重く、靴の選択肢が限られるという欠点もあります。
- 2. これは足部装具で、足関節への支持性が低く、膝折れや足関節の位置覚障害に対する効果は期待できません。主に足部のアライメント修正や疼痛緩和に使用されます。正しくは:金属支柱付短下肢装具やプラスチック短下肢装具など、足関節や膝関節の安定性を高める装具を選択すべきです。選びやすい理由:足関節の問題に対しては足部装具も選択肢の一つとして認識されがちですが、本症例のように膝折れを伴う場合は足部装具では不十分です。混同注意:短下肢装具。足部装具は足関節より遠位の足部のみに作用するのに対し、短下肢装具は下腿までを覆い、足関節の運動を制御します。
- 3. 正解。これは金属支柱付短下肢装具です。足関節の背屈・底屈を制御する機能があり、また金属支柱により下腿全体を固定するため、立脚中期の膝折れを効果的に防ぐことができます。症例の右足関節位置覚障害、右下肢立脚中期膝折れ、BrunnstromⅢ、MAS2という状態に最適です。選びやすい理由:金属支柱付装具は、プラスチック装具よりも重い、かさばる、靴の選択が難しいなどのデメリットがありますが、強い支持力が必要な場合に有効です。混同注意:プラスチック短下肢装具。プラスチック装具は軽量で汎用性が高いですが、金属支柱装具のような高い剛性は持ちません。
- 4. これは長下肢装具(KAFO)で、膝関節から足関節までを固定します。症例は座位が安定しており、膝折れはあるものの右下肢を振り出すことは可能であることから、膝関節までを固定する長下肢装具は過剰な支持性であり、歩行を阻害する可能性があります。正しくは:金属支柱付短下肢装具やプラスチック短下肢装具など、足関節および膝折れに焦点を当てた装具を選択すべきです。選びやすい理由:膝折れという症状があるため、膝関節を固定する装具が必要だと考えるかもしれませんが、長下肢装具は一般的に大腿四頭筋麻痺など膝関節の完全な支持が必要な場合に用いられます。混同注意:短下肢装具。長下肢装具は膝関節まで固定するため、短下肢装具よりも広範囲の支持を提供しますが、その分、活動性が制限されます。
- 5. これはゲイトソリューション型(GS)短下肢装具と考えられます。これは立脚期に足関節の底屈を許容し、膝折れを軽減する目的で使用されることがありますが、症例は足関節の位置覚障害があり、BrunnstromⅢで痙性もあるため、GS型のような底屈許容型の装具は不安定性を増大させ、転倒リスクを高める可能性があります。正しくは:金属支柱付短下肢装具やプラスチック短下肢装具など、足関節の安定性と膝折れ防止に特化した装具を選択すべきです。選びやすい理由:膝折れ対策として選択されることもありますが、症例の足関節位置覚障害と痙性の存在を考慮すると、より強い安定性を提供する装具が望ましいです。混同注意:シューホーン型短下肢装具。ゲイトソリューション型は底屈を許容する設計であるのに対し、シューホーン型は足関節の背屈・底屈をより強く制限します。
国試ポイント
脳卒中片麻痺患者の歩行障害に対する装具の選択基準を理解しているか問われています。特に、膝折れの症状と足関節の制御の必要性に着目します。
混同注意
装具の選択は、症状と病態に応じて適切な支持性や可動性を提供するものを選ぶ必要があります。プラスチック製と金属製の装具の特性を混同しないように注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、膝折れや不安定性など膝関節の問題があるか、足関節のコントロールが必要か、痙性の程度などを確認し、それらに対応できる支持性の高い装具を選択します。
関連知識
脳卒中後の片麻痺患者の歩行障害は、弛緩性麻痺や痙性麻痺、感覚障害、バランス障害など複合的な要因で生じます。装具はこれらの要因を補完し、安全で効率的な歩行を支援する目的で使用されます。短下肢装具にはプラスチック製(シューホーン型、ゲイトソリューション型など)と金属支柱付き(両側支柱、片側支柱)があり、それぞれ特徴があります。