鉄棒に肩関節屈曲90°、肘関節屈曲90°の肢位で懸垂している状態からゆっくりと体を下降させているとき、遠心性収縮をする筋はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
懸垂状態からゆっくりと体を下降させる動作は、懸垂(プルアップ)の求心性収縮期とは逆の、重力に抗しながら体をコントロールして下ろす遠心性収縮期にあたります。この動作では、肩関節は伸展および内転、肘関節は伸展していきます。広背筋は肩関節の強力な伸展筋および内転筋であるため、この下降フェーズでこれらの運動を重力に抗してコントロールするために遠心性収縮を行います。
選択肢ごとの解説
- 1. 棘上筋は主に肩関節の外転の開始に関与し、腱板筋群の一部として肩関節の安定化に貢献しますが、体をゆっくりと下降させるような全体的な運動において主導的に遠心性収縮を行う筋肉ではありません。正しくは:懸垂動作の下降フェーズにおいては、肩関節の伸展と内転を制御する筋が遠心性収縮を行います。選びやすい理由:肩関節の安定性に関わるため、何らかの役割を果たすと考えるかもしれませんが、この動作の主たる遠心性収縮筋ではありません。混同注意:広範囲の運動における主動筋の役割と、安定化筋の役割とを混同する可能性があります。
- 2. 正解。広背筋は肩関節の強力な伸展筋および内転筋です。懸垂動作で体を持ち上げる(求心性収縮)際に中心的な役割を果たしますが、ゆっくりと体を下降させる際には、重力に逆らいながら肩関節の伸展・内転運動を制御するために遠心性収縮を行います。
- 3. 烏口腕筋は肩関節の屈曲と内転を補助する筋肉です。体を下降させる際に肩関節が伸展するのを制御するためには遠心性収縮を行うことになりますが、広背筋と比較するとその寄与ははるかに小さいです。正しくは:この動作の主要な遠心性収縮筋としては広背筋がより適切です。選びやすい理由:肩関節の内転に関与するため、部分的には遠心性収縮を行うと考えるかもしれませんが、主たる選択肢ではありません。混同注意:主要な内転・伸展筋(広背筋など)と、補助的な役割を持つ筋の機能とを混同しやすいです。
- 4. 三角筋前部は肩関節の屈曲を主に行う筋肉です。体を下降させる動作では、肩関節は90度屈曲位から伸展方向へ動くため、三角筋前部は伸展を制御するために遠心性収縮を行うことになりますが、広背筋のような強力な主動筋ではありません。正しくは:この動作の主要な遠心性収縮筋としては広背筋がより適切です。選びやすい理由:肩関節が屈曲位から伸展していく過程で、その運動を制御すると考えるかもしれませんが、主たる選択肢ではありません。混同注意:懸垂動作の全体像における各筋肉の主導的な役割の理解が不十分な場合、屈筋群も候補に入れてしまう可能性があります。
- 5. 大胸筋鎖骨部は肩関節の屈曲、内転、内旋に作用します。体を下降させる動作において、肩関節の伸展と外転(相対的に)を制御するために遠心性収縮を行いますが、広背筋ほど主要な筋肉ではありません。正しくは:この動作の主要な遠心性収縮筋としては広背筋がより適切です。選びやすい理由:肩関節の内転に関与するため、部分的には遠心性収縮を行うと考えるかもしれませんが、広背筋がより強力な主動筋です。混同注意:広背筋と大胸筋の共同作用があるため、どちらがより中心的な役割を担うかの区別がつきにくい場合があります。
国試ポイント
筋の作用と収縮様式(求心性、遠心性、等尺性)を具体的な運動場面と結びつけて理解しているかが問われています。特に、重力の影響下での運動における遠心性収縮の役割を正確に把握している必要があります。
混同注意
求心性収縮と遠心性収縮の区別、あるいは特定の動作における主動筋と拮抗筋の役割を混同しやすいです。特に、運動の開始方向(下降)と筋肉の一般的な作用(広背筋は体を引っ張り上げるイメージ)が逆であるため、注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず「どのような運動が起こっているか(関節運動の方向)」と「重力に対してどのような働きをするか(加速 vs 減速)」を分析し、それに合わせて「どの筋が」「どの収縮様式で」働いているかを判断する。特に「ゆっくりと下降」という記述は遠心性収縮のヒントになります。
関連知識
肩関節の主要な筋とその作用(屈曲、伸展、内転、外転、内外旋)。肘関節の主要な筋とその作用(屈曲、伸展)。筋収縮の3様式(求心性、遠心性、等尺性)の定義と具体的な運動例。重力と筋活動の関係。