筋萎縮性側索硬化症で診断に最も有用な検査はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
ALSの診断は、上位・下位運動ニューロン障害の広がりと進行、および他の疾患の除外によって行われます。針筋電図検査は、臨床的に筋萎縮が認められない部位を含め、広範な下位運動ニューロン障害の客観的な証拠を捉えることができるため、El Escorial基準やAwaji基準といった診断基準においても極めて重要な検査です。線維性収縮電位や陽性鋭波、巨大電位、発火頻度の低下といった所見はALSに特徴的です。
選択肢ごとの解説
- 1. SPECTは脳血流や神経受容体機能を評価する画像診断法であり、ALSの直接的な診断には一般的に使用されません。ALSの診断では運動ニューロンの障害を直接示す所見が重要です。正しくは:ALSの診断における直接的な有用性は低い。脳血流や神経受容体の機能評価に用いられる。選びやすい理由:脳機能の評価に用いられるため、神経変性疾患の診断に役立つと漠然と考えてしまうかもしれない。混同注意:アルツハイマー病やレビー小体型認知症など、脳血流低下や神経機能異常が特徴的な疾患の診断補助に用いられる検査と混同する可能性。
- 2. 頭部CTは脳の形態的な変化、例えば脳出血、脳腫瘍、脳梗塞などを評価するのに適していますが、ALSでみられる運動ニューロンの変性といった微細な変化を捉えることは困難です。ALSの診断では主に運動ニューロンの機能的・電気生理学的評価が重要です。正しくは:ALSの診断における直接的な有用性は低い。他の神経疾患との鑑別には使われることがあるが、診断の決め手にはならない。選びやすい理由:脳の器質的な疾患を除外するために使われるため、神経疾患全般の診断に必要不可欠と誤解するかもしれない。混同注意:脳腫瘍や脳出血、水頭症など、構造的な異常が原因でALSに似た症状を呈する疾患の鑑別検査と混同する。
- 3. 正解。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位および下位運動ニューロンの変性が特徴的な疾患です。針筋電図検査は、筋線維の自発活動(線維性収縮電位、陽性鋭波など)や運動単位電位の変化を捉えることで、下位運動ニューロン障害の存在、広がり、進行状況を直接的に評価できます。特に、ALSの診断基準である「広範囲にわたる下位運動ニューロン障害」の客観的な証拠として極めて重要です。
- 4. 頸部超音波検査は主に頸部の血管(頸動脈など)、甲状腺、リンパ節などの形態や血流を評価するものであり、ALSで障害される運動ニューロンや筋の病態を直接診断する目的には使用されません。正しくは:ALSの診断における直接的な有用性はない。頸部の血管や甲状腺などの評価に用いられる。選びやすい理由:頸部には神経根や脊髄も走行しているため、頸部に関連する神経疾患の診断に役立つと勘違いするかもしれない。混同注意:頸椎症性脊髄症や頸椎椎間板ヘルニアなど、神経根や脊髄の圧迫による症状を伴う疾患の鑑別検査と混同する。
- 5. 体性感覚誘発電位(SEP)は、末梢神経から脊髄、脳幹、大脳皮質に至る体性感覚伝導路の機能を評価する検査です。ALSは主に運動ニューロンの障害が特徴であり、感覚系の機能は比較的保たれることが多いため、ALSの診断に最も有用な検査とは言えません。多発性硬化症や脊髄疾患などの感覚路障害を伴う疾患の評価には有用です。正しくは:ALSの診断における直接的な有用性は低い。感覚系の異常を評価するものであり、ALSの主要病態である運動ニューロン障害とは異なる。選びやすい理由:神経系の機能を評価する電気生理学的検査の一つであるため、ALSのような神経疾患全般の診断に役立つと誤解するかもしれない。混同注意:運動ニューロン障害を評価する運動誘発電位(MEP)や、他の神経疾患の診断に用いられる電気生理学的検査と混同する。
国試ポイント
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態生理、特に上位・下位運動ニューロン障害の概念を理解しているか、そしてその障害を客観的に評価する主要な検査方法を知っているかが問われています。診断基準において針筋電図が果たす役割の重要性を把握している必要があります。
混同注意
ALSの診断は、臨床症状と他の疾患の除外が重要であるため、画像検査や他の電気生理学的検査との鑑別、およびそれぞれの検査が評価する神経系の部位・機能の理解が問われる。特に、感覚系の異常を評価する検査(SEPなど)と運動系の異常を評価する検査(針筋電図、MEPなど)を混同しないことが重要。
次に同じ論点が出たら
次回出題された場合は、ALSの診断基準(El Escorial基準やAwaji基準)における各検査の位置づけや、上位・下位運動ニューロンのどちらの障害を評価する検査であるか、そしてその所見が何を意味するのかを問われる可能性があります。また、鑑別すべき疾患とその際に有用な検査についても確認しましょう。
関連知識
El Escorial診断基準、Awaji基準、上位運動ニューロン徴候(病的反射、痙縮)、下位運動ニューロン徴候(筋萎縮、線維束性収縮)、呼吸筋麻痺、球麻痺、認知機能障害(前頭側頭型認知症)。