70歳の男性。脳梗塞による左片麻痺。Brunnstrom法ステージは下肢Ⅲ。関節可動域制限はない。ダブルクレンザック足継手付き両側金属支柱型短下肢装具を用いて歩行練習を実施している。足継手を背屈0~20度で可動するように設定すると左立脚中期に膝折れが出現した。装具の調整で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
立脚中期に膝折れが出現するのは、下腿が前方へ過剰に傾斜し、膝関節が屈曲位となることが原因と考えられます。これは足関節の背屈可動域が広すぎる場合に起こりやすい現象です。足継手の背屈可動範囲を0度から5度のように狭く設定することで、下腿の過剰な前方傾斜が抑制され、膝関節の安定性が向上し、膝折れの発生を防止できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。立脚中期に膝折れが生じるのは、足関節背屈可動域が広すぎて、下腿が前方へ過剰に傾斜し、結果として膝関節が屈曲しやすくなるためと考えられます。足継手の背屈可動域を制限することで、下腿の過剰な前方傾斜が抑制され、膝関節の安定性が向上し、膝折れの発生を防ぐことが期待できます。正しくは:足継手の背屈可動域を狭めることで、下腿の過剰な前方傾斜を抑制し、膝関節の伸展モーメントを促し、膝折れを防ぎます。選びやすい理由:膝折れは膝関節の問題であるため、膝装具の併用などを考えるかもしれませんが、このケースでは装具の足継手の調整で対応可能です。混同注意:足関節背屈可動域の制限が不足しているために下腿が過剰に前傾し、膝折れを引き起こすというメカニズムを理解していないと、正しい選択肢を選べない可能性があります。
- 2. スウェーデン式膝装具は膝関節の過伸展(反張膝)を抑制する目的で使用されることが多く、今回の膝折れ(膝屈曲位)とは症状が異なります。また、足関節装具の設定変更で対応可能な問題に、別の装具を追加することは通常行われません。正しくは:膝折れの原因が短下肢装具の足継手設定にあるため、まずは既存装具の調整で対応を検討します。スウェーデン式膝装具は膝の過伸展に対応するものです。選びやすい理由:膝折れという症状に対して、膝装具という選択肢に目が行きやすいです。混同注意:膝折れと膝の過伸展を混同したり、足関節と膝関節の連動性を理解していなかったりする場合に選ぶ可能性があります。
- 3. Tストラップは、足部の内反や外反を矯正するために使用されます。今回の症状は膝折れであり、足部の内反・外反とは直接的な関連が薄く、膝折れの改善には寄与しません。正しくは:Tストラップは足部の内反・外反に対する補助具であり、膝折れの原因である足関節背屈による下腿の過剰な前傾とは関係ありません。選びやすい理由:装具の付属品を追加するという点で、調整の一環と誤解する可能性があります。混同注意:Tストラップの機能と、今回の膝折れの病態生理を結びつけられない場合に選ぶ可能性があります。
- 4. 外側ウェッジは、足部の内反や回外を矯正したり、足底の外側荷重を促したりするために用いられます。膝折れは足部の内反・外反とは直接的な関連が薄く、外側ウェッジの追加は膝折れの改善にはつながりません。正しくは:外側ウェッジは足部の内外反やアライメント調整に用いられ、膝折れを直接改善するものではありません。選びやすい理由:足底板の一部と関連付けて、足部からのアプローチとして考えてしまう可能性があります。混同注意:ウェッジの機能と膝折れのメカニズムを混同する場合に選ぶ可能性があります。
- 5. 装具の踵を高くすると、足関節が底屈位になりやすくなります。これにより、下腿の前方傾斜が抑制され、一見膝折れが改善する可能性もありますが、これは足底全体で地面を捉えられなくなり、歩行の安定性を損なう可能性があります。また、背屈制限を調整することで同様の効果が得られるため、まず適切な足継手設定を検討します。正しくは:踵を高くすることは足関節の底屈を強める効果がありますが、今回は足関節背屈の可動範囲が問題であるため、足継手の調整がより適切です。また、踵を高くしすぎると歩行の安定性が損なわれるリスクがあります。選びやすい理由:踵を高くすることで、下腿の前傾が抑制され、膝折れが改善するのではないかと考える人もいるかもしれません。しかし、これは一時的な対処であり、根本的な解決にはなりません。混同注意:足関節背屈制限と踵の高さ調整の機能的な違いを理解していない場合に選ぶ可能性があります。
国試ポイント
短下肢装具の足継手設定と、それによる歩行への影響を理解しているか、特に膝折れのメカニズムと装具調整の関係性が問われています。足関節の背屈制限が膝関節の安定性にどのように寄与するかを把握することが重要です。
混同注意
膝折れという症状から、膝関節そのものにアプローチする選択肢(スウェーデン式膝装具)を選びそうになりますが、短下肢装具の足継手設定によるメカニズムを理解していれば、足関節の調整が最適解であることがわかります。
次に同じ論点が出たら
今後、この装具調整で膝折れが改善しなかった場合、次にどのようなアプローチを検討すべきか(例:膝継手付き装具の検討、PTによる歩行指導の強化など)。
関連知識
短下肢装具(AFO)の種類と機能、足継手の設定(可動式、固定式、フリーなど)が歩行に与える影響、特に立脚相における下腿の動きと膝関節の安定性との関係。Brunnstromステージと麻痺の程度についても関連知識として押さえておく必要があります。