58歳の男性。歩行時のふらつきを訴えて受診した。歩隔はやや広いが左右方向は安定しており、前後方向への振り子様の歩容がみられる。検査結果を表に示す。協調運動改善のための理学療法として適切なのはどれか。
| 注視方向性眼振 | あり |
| 構音障害 | あり |
| 鼻指鼻試験 | 測定異常あり |
| 関節位置覚障害 | なし |
| Romberg徴候 | なし |

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
58歳の男性は、注視方向性眼振、構音障害、鼻指鼻試験測定異常があり、関節位置覚障害およびRomberg徴候は陰性であることから、深部感覚は保たれており、小脳性運動失調と判断されます。Rhythmic stabilizationは、固有受容性神経筋促通法(PNF)の一種で、拮抗筋の同時収縮を促し、関節の安定性と運動制御能力を改善するため、小脳失調による体幹・四肢の不安定性に対する協調運動改善に有効です。
選択肢ごとの解説
- 1. 自転車エルゴメーターは有酸素運動や下肢筋力強化に用いられますが、協調運動の特異的な改善には直接的ではありません。症例の歩行時の前後方向への振り子様の歩容や鼻指鼻試験の異常から示唆される小脳性の協調運動障害に対しては、より精緻な運動制御を促す訓練が必要です。正しくは:自転車エルゴメーターも全身持久力向上には有効ですが、協調運動改善には、より運動パターンを制御するような訓練を組み合わせることが望ましいです。選びやすい理由:一般的な運動療法として想起されやすいですが、小脳失調に特化した運動療法ではないため誤りです。混同注意:全身持久力トレーニングと協調運動トレーニングの目的の混同。
- 2. 正解。本症例は、注視方向性眼振、構音障害、鼻指鼻試験測定異常、歩行時の前後方向への振り子様の歩容から小脳性運動失調と判断されます。Rhythmic stabilizationは、静的・動的な安定性向上を目的に、主動筋と拮抗筋に交互抵抗を加えることで、協調性、バランス、姿勢制御を促すPNF手技であり、小脳性運動失調に対する協調運動改善に有効です。選びやすい理由:適切な選択肢であるため、選択されやすいです。混同注意:PNFの他の手技。
- 3. 下肢筋群の持続的伸張は、主に筋の柔軟性向上や関節可動域の改善を目的とします。本症例の主訴は歩行時のふらつきと協調運動障害であり、筋の短縮や関節拘縮が主たる問題ではないため、協調運動改善に直接的ではありません。正しくは:筋の柔軟性や関節可動域の制限がある場合に適用されますが、協調運動改善には、運動制御を促すような訓練が必要です。選びやすい理由:一般的なリハビリテーションのアプローチとして知られていますが、症例の病態に特化した介入ではありません。混同注意:柔軟性向上と協調運動改善の目的の混同。
- 4. Frenkel体操は、深部感覚障害による脊髄性運動失調に対して、視覚代償を利用して協調運動を改善する体操です。本症例は関節位置覚障害がなく、Romberg徴候も陰性であることから深部感覚は保たれており、小脳性運動失調であるため、Frenkel体操は適切ではありません。正しくは:深部感覚障害による脊髄性運動失調に適用されます。選びやすい理由:Frenkel体操も協調運動障害に対する有名な訓練法ですが、小脳性失調ではなく感覚性失調に適用されるため、鑑別ができていないと選びやすいです。混同注意:小脳性運動失調と脊髄性(感覚性)運動失調の鑑別、およびそれぞれの治療法の適応。
- 5. Epley法は、良性発作性頭位めまい症(BPPV)の治療法であり、半規管内の耳石を元の位置に戻すことを目的とします。本症例の症状は小脳性運動失調によるものであり、めまいが主症状ではないため、Epley法は適切ではありません。正しくは:良性発作性頭位めまい症(BPPV)に適用されます。選びやすい理由:めまいとふらつきは関連して想起されやすい症状ですが、BPPVによるめまいと小脳失調によるふらつきは原因が異なるため、混同しやすいです。混同注意:めまいとふらつきの原因疾患の鑑別、およびそれぞれの治療法の適応。
国試ポイント
小脳性運動失調の症状と、それに対する理学療法介入(PNFなど)の適合性を理解しているか。
混同注意
小脳性失調と脊髄性失調(感覚性失調)の鑑別、およびそれぞれのリハビリテーションの違い。
次に同じ論点が出たら
同様の症例が出題された場合、まず眼振、構音障害、鼻指鼻試験などの小脳症状の有無を確認し、関節位置覚障害やRomberg徴候の有無から感覚性失調を除外して、小脳性失調と判断する。
関連知識
PNFの各手技(リズミックスタビリゼーション、ホールドリラックス、コントラクトリラックスなど)とその適用疾患。