82歳の女性。転倒して右股関節痛を訴えた。エックス線写真(別冊No. 2)を別に示す。疑うべき疾患はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下図のX線写真では、右大腿骨の転子部(近位部)に明らかな骨折線が認められる。82歳の女性という年齢と、転倒による股関節痛の訴えは、典型的な大腿骨近位部骨折の臨床像である。高齢者の転倒では骨粗鬆症を背景に大腿骨近位部骨折の発生頻度が高い。他の選択肢の疾患は、X線写真の所見と臨床症状から否定される。
選択肢ごとの解説
- 1. 股関節脱臼の場合、大腿骨頭が臼蓋から完全に逸脱している所見が見られますが、下図のX線写真ではそのような明確な逸脱は確認できません。正しくは:大腿骨頭が臼蓋の外にある場合。選びやすい理由:転倒による股関節痛で、骨折と並んで脱臼も外傷性の疾患として考えられやすいため。混同注意:骨折と脱臼のX線所見の違い。
- 2. 坐骨骨折であれば、X線写真で坐骨(骨盤の下後方部分)に骨折線が確認できるはずですが、下図では坐骨に明らかな異常所見はありません。正しくは:坐骨に骨折線が認められる場合。選びやすい理由:骨盤周囲の骨折として坐骨骨折も頻度が高いため。混同注意:恥骨骨折との鑑別。
- 3. 正解。下図のX線写真では、右大腿骨の転子部付近に骨折線が明確に確認できます。高齢者の転倒による股関節痛の訴えは、大腿骨近位部骨折を強く示唆する典型的な所見です。
- 4. 恥骨結合離開は、左右の恥骨が連結している部分が離れてしまう状態を指し、X線写真では恥骨結合の幅が異常に開大している所見が見られますが、下図ではそのような変化は認められません。正しくは:恥骨結合の離開や開大が認められる場合。選びやすい理由:骨盤骨折の一種であり、転倒で起こりうるため。混同注意:恥骨骨折との鑑別。
- 5. 恥骨骨折であれば、X線写真で恥骨(骨盤の前方部分)に骨折線が確認できるはずですが、下図では恥骨に明らかな骨折線は見られません。特に、本症例では右大腿骨近位部に明確な骨折が認められます。正しくは:恥骨に骨折線が認められる場合。選びやすい理由:高齢者の転倒による骨盤周囲の骨折としてよく見られるため。混同注意:坐骨骨折との鑑別。
国試ポイント
高齢者の転倒による股関節痛の訴えと、それに対応するX線写真の読影能力が問われている。特に、大腿骨近位部骨折の典型的な画像所見を正確に識別できるかがポイントとなる。臨床症状と画像所見を結びつけて疾患を特定する能力が求められる。
混同注意
股関節脱臼と大腿骨近位部骨折のX線所見の鑑別。また、骨盤周囲の様々な骨折(坐骨骨折、恥骨骨折、恥骨結合離開など)と大腿骨近位部骨折の鑑別。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例問題が出題された場合、患者の年齢、受傷機転(転倒など)、自覚症状(痛みのある部位)、そして最も重要なX線写真の所見(骨折線の有無、部位、種類)を総合的に判断すること。特に高齢者の転倒では大腿骨近位部骨折を第一に疑い、X線写真を注意深く確認する。
関連知識
大腿骨近位部骨折の種類(大腿骨頸部骨折、転子部骨折、転子下骨折)、治療法(人工骨頭置換術、骨接合術)、術後合併症、理学療法介入のポイント。高齢者の骨粗鬆症と転倒予防の重要性。骨折部位によるX線所見の特徴。