関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準1995年)に従って左股関節屈曲を行ったところ、疼痛の訴えはないが図のような状態となったため測定を中断した。この状態の説明で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
設問の図で左股関節を屈曲させようとした際に、腰椎の過度な伸展(反り腰)が起こっていると読み取れます。これは、主に股関節屈筋群(特に腸腰筋)の短縮によって、股関節の完全な屈曲が制限される際に、代償的に骨盤を前傾させ、腰椎を伸展させる動きが生じるためです。この代償動作は、特に反対側の腸腰筋が短縮している場合に、体幹を安定させることができずに起こりやすくなります。したがって、腰椎伸展の代償が生じている状況から、右腸腰筋の短縮が疑われます。
選択肢ごとの解説
- 1. 股関節屈曲の測定時には、代償動作を防ぐため骨盤を固定し、後傾させないように測定するのが基本です。特に、図のように腰椎の過度な後弯(伸展)が示唆される状況では、骨盤後傾を許容すると見かけの股関節屈曲角度が増加してしまい、正確な評価ができません。正しくは:股関節屈曲測定時には、骨盤が後傾しないように固定し、代償動作を防ぎながら測定します。選びやすい理由:股関節をより深く屈曲させようとすると骨盤後傾が起こりやすいですが、これは代償動作であり、正しい測定法ではありません。混同注意:『骨盤が後傾する』ことと『骨盤を後傾させて測定する』ことの混同。測定では代償動作は避けるべきです。
- 2. 股関節屈曲の測定における基本軸は、体幹の外側中央線(または仙骨前面)であり、大転子を通る水平線ではありません。大転子を通るのは可動軸であり、移動軸が下肢の外側中央線です。正しくは:股関節屈曲の測定における基本軸は、体幹の外側中央線です。選びやすい理由:大転子は股関節のランドマークであり、可動軸として重要なため、基本軸と誤解しやすいです。混同注意:基本軸、移動軸、可動軸の定義や適用部位の混同。
- 3. 股関節屈曲の参考可動域は、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会基準(1995年)では125度とされています。150度は膝関節屈曲などの可動域と混同しやすいです。正しくは:股関節屈曲の参考可動域は125度です。選びやすい理由:膝関節の可動域など、他の関節の可動域と混同しやすいです。混同注意:他の関節の可動域や、他関節との複合運動時の見かけの可動域との混同。
- 4. 腸骨大腿靱帯は、股関節の伸展を制限する主要な靱帯です。股関節の屈曲制限には関与しません。屈曲制限因子としては、殿筋群などの軟部組織や骨頭と臼蓋のインピンジメントが考えられます。正しくは:腸骨大腿靱帯は股関節の伸展制限因子です。選びやすい理由:股関節周囲の重要な靱帯であるため、あらゆる運動の制限に関わると思われやすいです。混同注意:各靱帯が制限する運動方向の混同(例:伸展と屈曲)。
- 5. 正解。問題文の図で左股関節屈曲時に腰椎の過度な伸展(反り腰)が見られる場合、これは右側の腸腰筋が短縮している可能性を示唆します。体幹固定が不十分な状態で股関節を屈曲させると、短縮した腸腰筋が骨盤を前傾させ、腰椎を伸展させる代償動作が生じることがあります。この問題では、左股関節の屈曲を測定している際に右側の腸腰筋の短縮が示唆されている点がポイントです。通常、屈曲する側の腸腰筋が短縮している場合も制限因子となりえますが、この図の状態(非測定側の腰椎伸展代償)から読み取れるのは対側の短縮です。ただし、問題文には「図のような状態」と抽象的にあるため、図から読み取れる「腰椎過伸展の代償」が起こっている状況として解釈する必要があります。もし、左股関節屈曲時に左腸腰筋が短縮していれば屈曲そのものが制限されますが、この状況は腰椎の過剰な伸展を伴う代償動作なので、非測定側(右)の腸腰筋の短縮により体幹が固定できず、腰椎が伸展していると考えるのが妥当です。しかし、厳密には「左股関節屈曲」で「右腸腰筋短縮」が直接的な関係ではないため、最も適切な解釈は「測定を中断した」理由として、腰椎の過剰な伸展代償が起きていることを読み解く必要があります。腰椎が伸展位で固定されることによって股関節屈曲がさらに制限されるケースも考えられます。混同注意:測定している側の腸腰筋短縮と、代償動作として非測定側の腸腰筋短縮が関与する状況の混同。
国試ポイント
関節可動域測定時の正しい肢位と代償動作の理解、およびその原因となる筋肉の知識が問われています。特に、測定肢位のイラストから代償動作を正確に読み取り、その原因を特定する能力が重要です。基本軸・移動軸・可動域の数値などの基礎知識も必須です。
混同注意
関節可動域の参考値、基本軸・移動軸、そして各靱帯や筋肉がどの運動を制限するかといった基礎知識は混同しやすいです。また、代償動作が起こっている原因を特定する際には、測定している側の筋肉だけでなく、対側の筋肉や関連する関節の動きにも注意を払う必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず図から示されている関節の動きと代償動作を正確に把握する。次に、その代償動作が起こる原因となる筋・靱帯の機能解剖学的な知識を適用し、選択肢を吟味する。各関節の参考可動域、基本軸・移動軸の定義も確認する。
関連知識
股関節の可動域測定法(肢位、軸、基準値)。股関節周囲の主要な靱帯(腸骨大腿靱帯、恥骨大腿靱帯、坐骨大腿靱帯)とその機能。股関節の主要な屈筋群(腸腰筋、大腿直筋など)とその機能。腰椎骨盤リズムと股関節運動の関係。