80歳の男性。脳梗塞による右片麻痺。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅱ、下肢Ⅲ。下肢の随意運動は分離運動がわずかに認められる程度である。歩行はT字杖と短下肢装具を使用して自宅内移動が可能である。ADL指導で最も適切なのはどれか。
画像の選択肢を選ぶと答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
画像1は、麻痺側である右上下肢をベッドから降ろす際に、健側である左上肢で体幹を支え、麻痺側の足を手で誘導して安全に離床する動作を示しており、脳梗塞による右片麻痺患者のADL指導として最も適切です。この動作により、バランスを保ちながらベッドからの移動をスムーズに行うことができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。麻痺側である右上下肢をベッドから降ろす際、健側である左上肢で体幹を支え、麻痺側の足を手で誘導して安全に離床する動作が描かれており、脳梗塞による右片麻痺患者のADL指導として最も適切です。選びやすい理由:一見すると簡単な動作に見えるが、麻痺のある患者にとっては安全に行うための正しい手順が重要であり、その手順が示されているためです。混同注意:介助者がいる場合の介助方法と、患者自身が行うべき動作の区別。
- 2. 段を昇る際、T字杖を健側(左手)で持ち、健側下肢(左足)から段に上がることは適切ですが、この患者は下肢BrunnstromⅢでわずかに分離運動が認められる程度であり、上肢BrunnstromⅡでは支持力が不十分である可能性があり、特に手すりがない状況では不安定になるリスクがあります。片麻痺患者の段昇降では、健側から上がることが原則ですが、介助や手すりの使用を考慮すべき状況です。正しくは:この動作を行う場合は、手すりを使用するか、介助者の見守りまたは介助が必要となる可能性が高いです。また、杖の使用方法も考慮すべきです。選びやすい理由:段昇降の基本原則(健側から上がる)に合致しているように見えるためです。しかし、患者の状態によっては危険を伴います。混同注意:平地歩行と段昇降時の杖と下肢の出し方の違い、また麻痺の程度に応じた安全性の考慮。
- 3. 段を降りる際、T字杖を健側(左手)で持ち、麻痺側下肢(右足)から段を降りることは原則として正しいですが、この患者は80歳で、上肢BrunnstromⅡ、下肢BrunnstromⅢと運動機能が完全に回復しているわけではないため、転倒リスクが高く、この動作には十分な注意が必要です。特に、T字杖と短下肢装具を使用している状態での段差降下は慎重に行うべきです。正しくは:段を降りる際は、手すりを利用したり、介助者の見守りや介助のもとで、より安全な方法を選択するべきです。杖の支持をより強固にし、重心移動を慎重に行う必要があります。選びやすい理由:段降下の基本原則(杖と麻痺側から降りる)に合致しているように見えるためです。混同注意:段昇降と段降下での杖と下肢の出し方の違い、および患者の年齢や身体機能の低下による転倒リスクの考慮。
- 4. ズボンを履く際、画像では健側(左手)でズボンを持ち、麻痺側(右足)に履かせようとしていますが、体幹が不安定になりやすいため、座った姿勢で行うことは適切ですが、片手での操作のみでは困難を伴う可能性があり、より安全で効率的な方法としては、麻痺側下肢に先にズボンを通し、健側でズボンを引き上げていく方法が推奨されます。または、座位で安全に体幹を保持しつつ行うべきです。正しくは:ズボンを履く際は、健側でズボンを持ち、まず麻痺側下肢にズボンを通し、その後健側下肢を通し、座位で体幹を安定させた状態で引き上げるのが安全です。選びやすい理由:座位で衣服を着脱することは基本的なADL指導であり、麻痺側から行うという原則があるためです。混同注意:片麻痺患者の着替えの順序と、安定した姿勢の確保の重要性。
- 5. 浴槽に入る際、画像では浴槽の縁に座り、健側(左手)で手すりを持ち、麻痺側(右足)から浴槽に入ろうとしていますが、80歳という年齢と片麻痺という状況を考慮すると、浴槽をまたぐ動作は転倒リスクが高く、非常に危険です。特に上肢BrunnstromⅡでは浴槽縁での支持力が不十分である可能性があり、また短下肢装具を着用しての入浴動作は現実的ではありません。正しくは:浴槽をまたぐ動作は避けるべきであり、シャワーチェアの使用や、入浴用リフト、または介助者のサポートを検討すべきです。また、浴槽への出入りは健側から行うのが原則です。選びやすい理由:手すりを使用しているため、安全に配慮しているように見えるためです。混同注意:浴室での安全確保の重要性と、片麻痺患者にとっての浴槽をまたぐ動作の難易度とリスク。
国試ポイント
片麻痺患者のADL指導における基本的な動作手順と、健側・麻痺側の使い方を理解しているか。
混同注意
麻痺側を使用する際には、バランスを崩しやすいため、無理な体勢や不安定な動作は避けるべきです。特に、立ち上がりや移乗動作では健側での支持が重要になります。
次に同じ論点が出たら
同様の症例が出題された場合、片麻痺のタイプ(左右)と、その残存機能(Brunnstromステージなど)を確認し、健側をどのように活用するか、麻痺側をどのように誘導するかに注目して判断します。
関連知識
片麻痺患者の離床・移乗動作では、必ず健側を支持基盤として利用し、麻痺側は介助または自助具を用いて誘導することが基本となります。Brunnstromステージと残存機能に応じたADL指導が求められます。