多発性硬化症のリハビリテーション治療で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・4番
解説
多発性硬化症のリハビリテーションでは、患者個々の症状と易疲労性を考慮した慎重なアプローチが求められます。運動失調に対しては、重錘の負荷が運動の安定化に寄与し、協調性改善に役立つことがあります。また、視野欠損などの感覚障害に対しては、安全な環境を確保し、残存機能を最大限に活用するための環境整備が重要なリハビリテーション介入となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 多発性硬化症でみられる痙縮に対して温熱療法は、症状を悪化させる危険性があります。MSでは体温の上昇が神経症状を悪化させるUhtoff現象が知られており、温熱は痙縮を増強させる可能性があります。正しくは:痙縮に対しては、冷罨法、ストレッチ、ROM運動、薬物療法などが考慮されます。選びやすい理由:一般的な筋の過緊張に対する温熱療法は効果的であることが多いため、誤って選択しやすいです。混同注意:脳血管疾患など、Uhtoff現象を伴わない疾患での痙縮に対する温熱療法と混同しやすいです。
- 2. 多発性硬化症患者では易疲労性(fatigue)が顕著であり、過度な運動負荷は疲労を増悪させ、症状を悪化させる可能性があります。1RMを用いた高強度トレーニングは、易疲労性の強いMS患者には不適切です。正しくは:低負荷・高回数、または短時間の運動を頻回に行うなど、疲労を考慮した漸進的な運動負荷設定が重要です。休息を挟みながら行うインターバルトレーニングも有効とされます。選びやすい理由:一般的な筋力低下に対するトレーニング方法として1RMは広く用いられるため、正答と判断しがちです。混同注意:健常者や他の疾患での筋力強化プログラムと混同しやすいです。
- 3. 正解。重錘を負荷することで、運動の慣性や固有受容感覚入力が増加し、運動の安定性が向上し、協調運動の改善に繋がることがあります。これにより、不随意運動や震えを軽減し、より制御された動きを促します。選びやすい理由:一見、負荷をかけることで失調が悪化するように感じるかもしれませんが、適切に用いれば安定化に役立ちます。
- 4. 正解。多発性硬化症では視神経炎による視野欠損が生じることがあり、安全確保や活動能力の維持のために環境調整が極めて重要です。適切な照明は残存視機能を最大限に活用し、転倒防止や日常生活動作の改善に役立ちます。選びやすい理由:視覚症状への直接的な治療ではないため、リハビリテーション治療と捉えにくいと感じるかもしれませんが、環境調整は重要なリハビリテーション介入です。
- 5. 多発性硬化症の歩行障害は、痙縮、筋力低下、運動失調、感覚障害、疲労など様々な要因が複合的に絡み合って生じます。下肢装具の適用は、個々の症状と病状の進行度を詳細に評価した上で慎重に検討されるべきです。発症早期に一律に作製することが適切とは限りません。装具が活動を制限したり、残存能力を低下させたりする可能性もあります。正しくは:歩行障害に対しては、症状に応じて歩行補助具の検討、装具の検討、バランス訓練、筋力訓練、痙縮コントロールなど、多角的なアプローチが必要です。装具は必要に応じて、その効果と患者の活動度を考慮して選択されます。選びやすい理由:歩行障害に対する装具の使用は一般的であり、早期介入が重要であるというイメージから、正答と判断しやすいです。混同注意:脳卒中など、特定の機能障害に対して早期からの装具介入が推奨される他の疾患の知識と混同しやすいです。
国試ポイント
多発性硬化症の症状特性(易疲労性、Uhtoff現象、多様な神経症状)を理解し、それに基づいたリハビリテーションの原則と個別具体的な介入方法を問う問題です。一般的なリハビリテーションの知識だけでなく、疾患特異的な注意点を正確に把握しているかが試されます。
混同注意
一般的な筋力低下や痙縮への介入方法と、多発性硬化症特有の易疲労性や体温感受性を考慮しない介入を混同しやすいため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、多発性硬化症の易疲労性、Uhtoff現象、感覚障害への環境調整の重要性、痙縮・失調に対する適切な介入(避けたい介入を含む)に着目して選択肢を評価する。
関連知識
多発性硬化症の病態生理、Uhtoff現象、易疲労性の管理、痙縮・運動失調・視覚障害に対する具体的な評価と介入方法、ADL指導、環境調整の重要性。