下腿義足の静的アライメントにおいて、つま先の浮き上がりが観察され、膝折れを起こしそうな不安定感の訴えがあった。ソケットへの対応で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
下腿義足において、初期屈曲角度が大きすぎる(ソケットが前傾しすぎている)と、重心線が義足の膝継手より後方を通る傾向が強まり、膝関節を伸展させるモーメントが発生しやすくなります。これにより、膝が過度に伸展し「膝折れ」を起こすような不安定感が生じます。また、義足足部のつま先が浮き上がりやすくなります。初期屈曲角度を減少させる(ソケットを後傾させる、またはより垂直に近づける)ことで、重心線が膝継手より前方に移動し、膝を屈曲させるモーメントが発生しやすくなるため、膝折れの不安感が軽減され、足底全体が接地しやすくなります。
選択肢ごとの解説
- 1. ソケットを外側へ移動させても、つま先の浮き上がりや膝折れの不安定感の直接的な改善には繋がりません。むしろ、内外側への不安定性が増す可能性があります。正しくは:つま先の浮き上がりや膝折れの不安定感がある場合、ソケットの位置を前後方向や角度で調整することが一般的です。選びやすい理由:アライメント調整の選択肢として「移動」という言葉が一般的に使われるため、安易に選んでしまう可能性があります。混同注意:内外側アライメントの問題(例:内外側への動揺)と混同することがあります。
- 2. ソケットを後方へ移動させると、圧力中心がさらに後方へ移動し、膝折れの不安定感をむしろ助長する可能性があります。つま先の浮き上がりも改善されにくいです。正しくは:膝折れの不安定感を減らすには、ソケットを前方に移動させるか、初期屈曲角度を増やすなどの対応が考えられます。選びやすい理由:義足の安定化を漠然と目的として、ソケットを後方に引くことで重心を安定させようと考えるかもしれませんが、膝折れの問題には逆効果です。混同注意:股義足における膝の安定化に関するアライメント調整と混同することがあります。
- 3. ソケットを内側へ移動させても、つま先の浮き上がりや膝折れの不安定感の直接的な改善には繋がりません。むしろ、内外側への不安定性が増す可能性があります。正しくは:つま先の浮き上がりや膝折れの不安定感がある場合、ソケットの位置を前後方向や角度で調整することが一般的です。選びやすい理由:アライメント調整の選択肢として「移動」という言葉が一般的に使われるため、安易に選んでしまう可能性があります。混同注意:内外側アライメントの問題(例:内外側への動揺)と混同することがあります。
- 4. 正解。下腿義足において、ソケットの初期屈曲角度が過大であると、重心線が義足の膝継手より後方に位置しやすくなり、膝関節の伸展モーメントが増大し、膝折れを起こしやすい状態になります。また、義足足部がつま先立ちのような状態になりやすく、つま先の浮き上がりとして感じられることがあります。初期屈曲角度を減らす(ソケットをより垂直に近づける)ことで、重心線が義足の膝継手より前方に移動しやすくなり、膝関節の屈曲モーメントが増大し、膝折れのリスクが減少し、足底全体が接地しやすくなります。選びやすい理由:初期屈曲角度が大きすぎると膝が突っ張るイメージがあるため、減らすことで不安定になるのではないかと迷うかもしれませんが、下腿義足の膝折れでは逆の対応となります。混同注意:股義足や膝関節固定型義足の初期屈曲角度と混同することがあります。また、初期屈曲角度を「増やす」ことで膝折れが減るという誤った理解と混同することがあります。
- 5. 初期内転角度は、主に義足の支持基底面内での内外側への安定性や、断端の圧力分散に影響を与えます。つま先の浮き上がりや膝折れといった前後方向の不安定感とは直接的な関連性が低いです。正しくは:初期内転角度は、主に立脚中期での内外側への動揺や、断端の内側・外側への圧迫を調整するために用いられます。選びやすい理由:アライメント調整の選択肢として「角度調整」が一般的に使われるため、安易に選んでしまう可能性があります。混同注意:内外側アライメントの問題(例:トレンドレンバーグ徴候様の姿勢)と混同することがあります。
国試ポイント
義足の静的アライメントに関する基本的な知識、特に下腿義足における初期屈曲角度の役割と、それが膝関節の安定性や足部の接地状態に与える影響について問われています。具体的な症状(つま先の浮き上がり、膝折れ不安定感)から適切なアライメント調整を選択できるかがポイントです。
混同注意
下腿義足と股義足のアライメント調整の違い、特に膝折れ防止のための対応は混同しやすい点です。また、初期屈曲角度を「増やす」と「減らす」のどちらが適切な対応であるか、そのメカニズムを正確に理解していないと誤った選択をしてしまいます。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合は、まず義足の種類(下腿か股か)を確認し、次に不安定感や異常な接地状態が前後方向の問題か、内外側方向の問題かを特定します。そして、重心線と関節の関係をイメージし、適切なアライメント要素(角度か移動か)を選びます。
関連知識
義足のアライメントにおける初期屈曲角度、初期内転角度の意義。前後方向へのソケット移動、内外側へのソケット移動の目的。義足の重心線と膝関節の関係。下腿義足のソケット適合不良(例えば、底屈拘縮がある場合の対応)。