60歳の男性。末梢動脈疾患。Fontaine分類Ⅱ度。連続歩行距離が低下しているが、歩行時以外の疼痛はなく、足部の変形は見られない。この患者の連続歩行能力改善に最も適切な理学療法はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
末梢動脈疾患(PAD)のFontaine分類Ⅱ度で間欠性跛行を呈する患者に対し、運動療法は治療の中心的役割を担います。特にトレッドミルを用いた歩行練習は、下肢の血行改善(側副血行路の発達)や運動耐容能の向上に有効であり、連続歩行距離の延長に最も効果的な理学療法の一つです。この患者は歩行時以外の疼痛や足部変形がないため、純粋に運動療法による跛行症状の改善が期待されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 寒冷療法は血管を収縮させる効果があるため、末梢動脈疾患患者、特に血流が低下している状態では、血行障害をさらに悪化させる可能性があります。正しくは:末梢動脈疾患では一般的に温熱療法や血行改善を目的とした運動療法が推奨されます。選びやすい理由:炎症や疼痛の緩和目的で一般的に用いられる治療法であるため、誤って選んでしまう可能性がある。混同注意:急性期の炎症や浮腫に対する治療法と混同しやすい。
- 2. 足底挿板は足部の変形や荷重時の痛みがある場合に有効ですが、この患者は足部の変形がなく、歩行時以外の痛みもないため、連続歩行距離の改善に直接寄与する可能性は低いです。正しくは:足底挿板は足部のアライメント不良や特定の部位への過剰な負荷を軽減するために用いられます。選びやすい理由:歩行能力の改善という点で、装具療法全般を漠然と連想する可能性がある。混同注意:整形外科的な足部疾患に対するアプローチと混同しやすい。
- 3. 正解。Fontaine分類Ⅱ度の末梢動脈疾患患者は、間欠性跛行が主な症状であり、運動療法、特にトレッドミルを用いた計画的な歩行練習は、側副血行路の発達を促し、症状の発現距離を延長させる効果があります。これは、連続歩行能力の改善に最も有効な手段の一つとされています。選びやすい理由:(正答なので特になし)混同注意:(正答なので特になし)
- 4. コンプレッションポンプは、主にリンパ浮腫や静脈還流障害、深部静脈血栓症の予防などに用いられます。末梢動脈疾患による間欠性跛行の改善に直接的な効果は期待できません。正しくは:コンプレッションポンプは、浮腫の軽減や静脈還流の促進が主な目的です。選びやすい理由:血流改善を目的とした機器であるため、末梢動脈疾患にも有効であると誤解する可能性がある。混同注意:静脈疾患に対する治療法と動脈疾患に対する治療法を混同しやすい。
- 5. 下肢他動的関節可動域運動は、関節拘縮の予防や改善に有効ですが、この患者さんの主な問題は連続歩行距離の低下(間欠性跛行)であり、関節可動域制限が問題と示唆されていません。血流改善や筋持久力の向上には直接つながりにくいため、最も適切な選択肢ではありません。正しくは:下肢他動的関節可動域運動は、臥床期間が長く関節可動域制限がある患者などに適用されます。選びやすい理由:関節可動域運動は基本的な理学療法であるため、漠然と選んでしまう可能性がある。混同注意:臥床による二次的障害の予防・改善と、原疾患による活動能力低下の改善を混同しやすい。
国試ポイント
末梢動脈疾患患者に対する理学療法の選択が適切に行えるか。Fontaine分類と間欠性跛行に対する運動療法の重要性を理解しているか。疾患病態に応じた治療法を区別できるか。
混同注意
血流改善効果がある治療法全般の中から、末梢動脈疾患の間欠性跛行に特化した効果的な治療法を選び出す能力が問われます。特に、静脈疾患やリンパ疾患に対する治療法(コンプレッションポンプ)や、一般的な整形外科的アプローチ(足底挿板、他動運動)と混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、疾患の病期(Fontaine分類)と主要な症状(間欠性跛行、安静時痛、潰瘍など)に基づいて、最も適切な介入法を選択できるかどうかが問われるでしょう。保存療法か外科的治療か、運動療法の具体的な内容、生活指導なども含めて判断する能力が必要です。
関連知識
Fontaine分類(I度:無症状、II度:間欠性跛行、IIa:200m以上歩行可能、IIb:200m未満歩行可能、III度:安静時痛、IV度:潰瘍・壊疽)。運動療法の原則(痛みが出現する直前まで歩行し、休息後再開するインターバルトレーニング)。