74歳の女性。起床時に突然回転性めまいを生じ受診したところ、良性発作性頭位めまい症と診断された。発症2日で、寝返り時や起き上がり時に一過性の回転性めまい症状はあるが、歩行安定性に問題はない。理学療法で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、内耳の半規管内に耳石が迷入することで発症するめまいです。診断が確定されれば、理学療法では耳石を半規管から卵形嚢に戻すための耳石置換法(Epley法、Semont法など)が最も効果的かつ優先される治療法となります。患者は発症2日で寝返りや起き上がり時に一過性のめまいがあるものの、歩行安定性に問題がないため、BPPVの主要な症状が確認され、エプリー法の適応となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、内耳の半規管内に迷入した耳石が原因で起こるめまいであり、エプリー法はこれらの耳石を半規管外の卵形嚢に戻すことを目的とした耳石置換法です。診断確定後、早期に実施することで高い改善効果が期待できます。
- 2. 患者さんは「歩行安定性に問題はない」と明記されており、杖歩行練習は現状の症状に対して不適切な介入です。正しくは:歩行不安定性がある場合に、バランス能力に応じて補助具の検討と歩行練習を行います。選びやすい理由:めまいがあるため、転倒リスクを考慮して補助具の使用を反射的に考えてしまう可能性があります。混同注意:重度のめまいや神経学的異常による歩行障害と混同してしまう可能性があります。
- 3. 良性発作性頭位めまい症の急性期において、まず行うべきは耳石置換法による原因除去です。閉眼でのバランス練習は、めまいによるバランス機能低下に対する前庭リハビリテーションの一つですが、原因を除去せずに実施すると、めまいを誘発し患者の苦痛を増大させる可能性があり、また根本的な治療にはなりません。正しくは:耳石置換法でめまいが落ち着いた後、残存するわずかな平衡機能低下に対して、視覚・体性感覚・前庭覚を統合したバランス訓練として段階的に導入を検討します。選びやすい理由:めまいはバランス機能と関連が深いため、一般的なめまいリハビリテーションの一環として選択肢に挙がりやすいです。混同注意:他の前庭機能障害(前庭神経炎後など)や、慢性的な平衡機能障害に対するリハビリと混同する可能性があります。
- 4. 良性発作性頭位めまい症は頭位変換でめまいが誘発されるため、一見症状を避けるための指導としては理にかなっているように見えますが、これは根本的な治療ではありません。むしろ、頭部の動きを制限することで、耳石が半規管から抜け出る機会が減り、症状が遷延する可能性や、身体活動の制限につながるデメリットがあります。根本的な治療である耳石置換法を優先すべきです。正しくは:耳石置換法でめまいが軽減・消失した後、患者が恐怖感を抱いている場合や、再発予防のため(特定の動作で耳石が動きやすい場合など)に、注意を促す程度の指導はあり得ますが、原則は頭部を動かすことを推奨します。選びやすい理由:めまいを誘発する動作を避けることで、患者の苦痛を一時的に軽減できるため、安全策として選びやすいです。混同注意:めまい恐怖症や、急性期における症状悪化の回避策として、長期的な治療戦略と混同する可能性があります。
- 5. 良性発作性頭位めまい症は内耳の耳石が原因であり、頸部の筋力低下とは直接的な関連がありません。頸部の筋力増強練習は、頸性めまいや頸部疾患の治療には有効ですが、BPPVに対しては不適切な介入です。正しくは:頸部疾患に伴う頸性めまいや、頸部痛・可動域制限がある場合に、適切な方法で頸部の筋力増強練習を検討します。選びやすい理由:頭位変換によってめまいが誘発されるため、首の動きが関連していると考え、頸部へのアプローチを検討してしまいやすいです。混同注意:頸性めまいと良性発作性頭位めまい症を混同する可能性があります。
国試ポイント
良性発作性頭位めまい症(BPPV)の診断とその病態生理を理解し、理学療法士として最も適切な初期介入(耳石置換法)を選択できるか、が問われています。他のめまい疾患との鑑別や、症状に応じたリハビリテーションの優先順位を判断する能力も重要です。
混同注意
頸性めまい、メニエール病、前庭神経炎、脳幹・小脳病変による中枢性めまいなど。BPPVは特定の頭位変換で誘発される一過性のめまいが特徴であり、聴力障害や神経症状を伴わないことで鑑別します。
次に同じ論点が出たら
この患者さんで次に評価すべきは、どの半規管に耳石が迷入しているか(診断の再確認)、および具体的なめまい誘発体位や眼振の方向、持続時間などでしょう。それらによって、エプリー法の具体的な手順(どちらの耳、どの半規管をターゲットにするか)を決定します。また、エプリー法後の症状変化や、患者のめまいに対する不安の有無も評価し、必要であれば継続的な指導や前庭リハビリテーションの導入を検討します。
関連知識
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、最も頻度の高い末梢性めまい疾患です。多くは後半規管に耳石が迷入しますが、外側半規管や上半規管に迷入することもあります。エプリー法は後半規管型のBPPVに特に有効とされていますが、外側半規管型にはLempert法(Barbecue roll maneuver)などが用いられます。めまい症状が軽減した後も、前庭リハビリテーションとして、めまい体操やバランス練習を段階的に行うことがあります。