64歳の男性。第6頸髄損傷(AIS A)の診断で回復期リハビリテーション病棟に入院して治療が行われている。リハビリテーション治療前の問診で頭痛の訴えがあり、顔面紅潮、発汗を認めた。血圧を測定したところ、220/100 mmHgであった。この状態で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
自律神経過反射(Autonomic Dysreflexia; AD)は、T6以上の脊髄損傷患者に特有の緊急病態です。高血圧(収縮期血圧200mmHg以上)、頭痛、顔面紅潮、発汗などが主な症状で、放置すると脳出血などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。最も一般的な誘因は膀胱の過伸展(カテーテル閉塞、膀胱充満)や便秘、褥瘡、骨折などです。したがって、まずは誘因を除去するために排尿・排便状況を確認することが最も重要かつ適切な初期対応となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 自律神経過反射では、高血圧に対する身体の反応として、迷走神経が刺激されるため、通常は徐脈が見られます。正しくは:徐脈を認める。選びやすい理由:一般的な高血圧の状況では頻脈が起こることもあるため、混同しやすいです。混同注意:自律神経過反射における高血圧と、一般的な生理的ストレス反応(頻脈)を混同しやすいです。
- 2. 自律神経過反射による高血圧の場合、脳圧を上昇させないよう、患者さんの頭部を挙上させ、体位を座位にするのが適切です。仰臥位は脳出血のリスクを高める可能性があります。正しくは:患者さんの体位を座位にする。選びやすい理由:安静臥位が一般的な血圧測定時の体位であるため、反射的に選んでしまう可能性があります。混同注意:緊急時の高血圧管理において、頭部挙上が基本であるという知識が抜けていると、臥位を選びやすいです。
- 3. 自律神経過反射は、脳卒中、心筋梗塞、腎不全などの重篤な合併症を引き起こす可能性があり、生命に関わる緊急事態です。放置すると非常に危険です。正しくは:重篤な合併症が発生する可能性がある。選びやすい理由:日常的な高血圧と異なり、一時的なものと過小評価してしまうことがあります。混同注意:自律神経過反射の危険性を十分に理解していない場合、緊急性を軽視してしまうことがあります。
- 4. 正解。自律神経過反射の最も一般的な誘因は、膀胱の過伸展(尿路カテーテルの閉塞や膀胱充満)や便秘です。これらを確認し、原因を取り除くことが最も迅速かつ適切な初期対応となります。
- 5. 自律神経過反射は、T6(胸髄第6レベル)以上の脊髄損傷患者に発生するとされています。これは、交感神経系の制御が損傷部位より下で失われ、上位の自律神経が過剰に反応するためです。腰髄損傷では、この条件を満たしません。正しくは:胸髄第6レベル以上の脊髄損傷患者に生じやすい。選びやすい理由:脊髄損傷患者全般に起こりうると誤解してしまうことがあります。混同注意:自律神経過反射の発生メカニズムと、損傷レベルとの関連性を理解していないと誤った判断をしがちです。
国試ポイント
自律神経過反射は脊髄損傷における重要な合併症であり、その症状、発生機序、適切な初期対応について頻繁に出題されます。特に、損傷レベル(T6以上)、誘因(膀胱、腸)、症状(高血圧、徐脈、顔面紅潮、発汗)、そして対応(座位、誘因除去)は必須知識です。
混同注意
ADの症状(高血圧だが徐脈)と、通常のショックやストレス反応による血圧・心拍変動。ADの発生レベルと、他の合併症の発生レベル。緊急時の対応手順(体位変換、誘因除去、薬物療法)との混同。
次に同じ論点が出たら
誘因除去後も血圧が下がらない場合、薬剤の使用を考慮します。患者の意識レベルや神経学的徴候の変化に注意し、脳出血などの合併症の兆候を見逃さないようにします。また、自律神経過反射のリスク因子を患者さんやご家族に教育し、予防策を指導することも重要です。
関連知識
脊髄損傷の解剖学的知識(損傷レベルと残存機能)、自律神経系の解剖と生理(交感神経・副交感神経の作用)、高血圧の緊急管理、カテーテル管理や排泄ケアの知識。