自閉スペクトラム症〈自閉症スペクトラム障害〉を強く示唆する患者の発言はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準には、社会性・コミュニケーションの困難と、限定された反復的な行動、興味、活動パターンが含まれます。特に「変化への強い抵抗」や「融通の利かなさ」「同一性へのこだわり」はASDの重要な特性の一つです。この特性を持つ人は、予測不能な状況や急な予定変更に対して非常に強いストレスを感じ、適切な対応が難しく、感情的に混乱することがよくあります。選択肢4の発言は、このASDの核となる特性を直接的に示唆しています。
選択肢ごとの解説
- 1. この発言は、特定の状況に対する強い不安や恐怖を伴うパニック障害や広場恐怖症といった不安症の症状を示唆しています。自閉スペクトラム症の主要な診断基準とは異なります。正しくは:この症状は不安症の可能性が高いですが、自閉スペクトラム症に伴う感覚過敏や予測不能な状況への抵抗が間接的に不安を引き起こすこともあります。しかし、この発言自体は直接的に自閉スペクトラム症の核症状を示すものではありません。選びやすい理由:自閉スペクトラム症の患者さんも不安を抱えやすいですが、この発言は具体的な恐怖対象(発作)と行動制限(遠出できない)に焦点があり、典型的な不安症の表現です。混同注意:パニック障害、広場恐怖症などの不安症
- 2. この発言は、特定の考え(強迫観念)が頭から離れず、それを打ち消すための行動(強迫行為)を繰り返してしまう強迫性障害の典型的な症状です。自閉スペクトラム症の診断基準とは直接関連しません。正しくは:これは強迫性障害の症状であり、自閉スペクトラム症における限定的な興味や反復行動とは異なります。強迫性障害では不安を軽減するための儀式的な行動が見られます。選びやすい理由:自閉スペクトラム症の特性である「こだわり」や「反復行動」と一見似ていますが、強迫性障害の確認行為は、多くの場合、特定の不安を解消するためという目的が明確です。混同注意:強迫性障害、または自閉スペクトラム症のこだわり行動
- 3. この発言は、現実感が喪失する離人感・現実感喪失症(解離性障害の一部)の症状を示唆しています。自己や周囲が現実ではないように感じる体験であり、自閉スペクトラム症の主要な特性ではありません。正しくは:この症状は解離性障害の一種である離人感・現実感喪失症の典型的な表現です。自閉スペクトラム症とは異なる精神症状です。選びやすい理由:自閉スペクトラム症の人が独自の認知や感覚を持つことはありますが、現実感の喪失という直接的な表現は解離性障害に特有です。混同注意:離人感・現実感喪失症(解離性障害)
- 4. 正解。自閉スペクトラム症の重要な特性の一つに、「変化への抵抗」や「臨機応変な対応の困難さ」があります。予測できない事態や計画外の変更に対して、強いストレスや不安を感じ、感情の調整が難しくなる(パニック、癇癪など)ことは、自閉スペクトラム症の患者さんによく見られる反応です。この発言は、その特性を強く示唆しています。
- 5. この発言は、人前でのパフォーマンスや社交的な状況に対して強い不安や恐怖を感じる社交不安症(社交恐怖)の症状を示唆しています。自閉スペクトラム症の患者さんも社交的な困難を抱えることが多いですが、この発言は社交不安症の典型的な表現であり、自閉スペクトラム症に特有とまでは言えません。正しくは:これは社交不安症の症状であり、対人関係の困難を抱える自閉スペクトラム症の特性とは区別して考える必要があります。社交不安症では、他者からの評価への過剰な懸念が中心です。選びやすい理由:自閉スペクトラム症の核症状に対人関係の質的な困難が含まれるため、社交不安と混同しやすいですが、この発言は『緊張』や『苦手意識』に特化しており、社交不安症の診断基準に合致します。混同注意:社交不安症(社交恐怖)、または自閉スペクトラム症の対人関係の質的困難
国試ポイント
自閉スペクトラム症の主要な臨床的特徴(こだわり、変化への抵抗、反復行動、対人関係の質的困難など)と、他の精神疾患(不安症、強迫性障害、解離性障害、社交不安症など)の鑑別が適切にできるかを問う問題です。患者の発言から、どの疾患の可能性が最も高いかを判断する臨床的推論能力が試されます。
混同注意
自閉スペクトラム症のこだわりや反復行動は強迫性障害と、社交性の困難は社交不安症と混同されやすいですが、それぞれの疾患の診断基準における核となる症状を理解することが重要です。ASDのこだわりは、不安軽減を目的とするよりは、特定の活動や興味への没頭や同一性への欲求が強いことが多いです。社交不安症は他者からの評価への恐怖が中心ですが、ASDの対人関係の困難は、非言語的コミュニケーションの理解困難や社会的ルールの理解不足に起因することが多いです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、各選択肢が示す症状が「どの疾患の典型的な症状であるか」を正確に特定し、「自閉スペクトラム症の核となる特性(社会性の困難、限定された反復的な行動・興味・活動)を最も直接的に示しているのはどれか」という視点で判断します。特に、こだわりや反復行動、変化への抵抗といったASDに特徴的な発言を見極めることが重要です。
関連知識
自閉スペクトラム症の診断基準(DSM-5またはICD-11)、その他の精神疾患(不安症、強迫性障害、解離性障害、社交不安症)の主要症状と診断基準、それぞれの疾患における理学療法介入のポイント。特に、ASDの感覚特性や実行機能障害についても理解しておくことが望ましいです。