頸髄損傷者の起き上がり動作を図に示す。Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類における最も上位の機能残存レベルはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Zancolliの分類において、C6BⅡは手関節の背屈が可能であり、さらに残存する筋群の協調により、部分的なピンチや把持(鉤指握りなど)が可能となります。この機能により、手で支持面を安定させ、上肢のプッシュアップを利用した起き上がり動作が可能になります。図に示す動作は、まさに手関節の固定と部分的把持を用いた起き上がり動作であり、C6BⅡレベルで実現可能な『最も上位』の機能と判断されます。
選択肢ごとの解説
- 1. C5Aレベルでは、肘関節の屈曲は可能ですが、手関節の伸展ができないため、図のような安定した支持を用いた起き上がり動作は困難です。正しくは:この動作に必要な手関節の伸展機能を含まないため、不適切です。選びやすい理由:C5レベルでも肘の屈曲筋力があれば部分的な体幹挙上は可能に思えるかもしれませんが、図の動作は手関節の固定を前提としています。混同注意:各Zancolli分類のレベルでどの筋群が機能するかを正確に把握していないと、誤って選択しがちです。
- 2. C5Bレベルでは、手関節の伸展がわずかに可能となる場合もありますが、実用的な起き上がり動作に十分な手関節の固定力や安定性には欠けることが多いです。正しくは:図の動作には不十分な手関節の伸展機能であり、不適切です。選びやすい理由:C5BはC5Aより機能が高いため、少しでも手関節機能があれば可能と錯覚する可能性があります。混同注意:C5BとC6Aの境界線における手関節伸展の機能レベルを曖昧に理解していると、誤って選択することがあります。
- 3. C6Aレベルでは、手関節の伸展は可能ですが、実用的な起き上がり動作に必要な手関節の十分な固定力や安定性を伴う筋力、あるいは手の把持機能が不十分であるため、図のような安定した支持形成は困難です。正しくは:手関節の伸展は可能ですが、この動作に必要な手の機能(例:把持力)が不足しています。選びやすい理由:C6レベルで手関節伸展が可能になるため、このレベルで多くの応用動作ができると考えるかもしれませんが、把持機能の有無が重要です。混同注意:C6AとC6BⅡの差異、特に手の機能(把持、ピンチなど)の違いを理解していないと誤ります。
- 4. 正解。C6BⅡレベルでは、手関節の伸展(背屈)が可能で、かつ残存する指伸筋や長母指外転筋、短母指伸筋の協調作用により、機能的なピンチ動作や把持動作の一部(例:鉤指握り)が可能になります。これにより、図に示されるようなベッド上での安定した支持を形成し、起き上がり動作を行うことが可能となります。
- 5. C7Aレベルでは、C6BⅡよりもさらに多くの筋群(例:上腕三頭筋、指伸筋の一部、指屈筋の一部など)が機能するため、起き上がり動作はより容易に行えるでしょうが、問題は『最も上位の機能残存レベル』を問うています。C6BⅡでこの動作が可能なため、C7Aは『最も上位』ではありません。正しくは:C6BⅡレベルでこの動作が可能なため、『最も上位』の選択肢として不適切です。選びやすい理由:機能が高い方が間違いなく動作できるため、安全策としてより高いレベルを選んでしまうかもしれません。混同注意:『最も上位』という問題文の条件を見落とすと、より機能の高い選択肢を選んでしまいがちです。
国試ポイント
頸髄損傷の機能分類(Zancolli分類、国際標準分類など)と、それに対応する具体的な動作能力の結びつきを問う問題です。特に、手関節機能(伸展の有無、把持能力の有無)が、日常生活動作(ADL)に与える影響を理解しているかが重要となります。図示された動作を分析し、それに必要な筋力や関節可動域がどの分類レベルで得られるかを判断する能力が求められます。
混同注意
各Zancolli分類の細かい違い、特にC5とC6、C6AとC6BⅡの間の手関節・手の機能の違いが混同されやすいです。C6Aは手関節伸展が可能ですが、実用的な把持力はまだ不十分であるのに対し、C6BⅡは部分的な把持が可能となり、これがADL能力に大きく影響します。
次に同じ論点が出たら
今後、Zancolli分類や他の機能分類について問われる際は、単にレベル名を問うだけでなく、そのレベルで可能となる具体的なADL動作、あるいは特定の装具(例:C5レベルでの把持装具)の適応についても判断させる問題が出題される可能性があります。また、画像問題として特定の動作を示し、どのレベルで可能か、あるいはどのレベルの損傷かを選ばせる形式は頻出です。国際標準分類との比較問題にも注意が必要です。
関連知識
国際標準頸髄損傷神経学的分類(ISNCSCI)における神経学的レベルと、Zancolli分類の関連性。各レベルでどのキーマッスルが機能するか、およびそれにより可能となる主要なADL。特に、テノデーシスアクション(腱固定作用)の概念と、頸髄損傷患者の機能訓練におけるその応用。