75歳の男性。2型糖尿病でインスリン療法中。腎症、高血圧症および増殖前網膜症を合併しており、週3回血液透析と理学療法のため外来通院している。運動療法で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
75歳の2型糖尿病患者でインスリン療法中であることから、運動による低血糖のリスクが高いです。運動中に倦怠感は低血糖の一般的な症状であり、特に透析患者では倦怠感が頻発するため、症状を注意深く観察し、低血糖の可能性を考慮することが重要です。他の選択肢は、透析患者や糖尿病患者の運動療法における一般的な禁忌や誤った認識を示しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 血液透析日の運動は、患者さんの状態を慎重に評価し、適切な管理下であれば安全に実施可能です。むしろ、透析による疲労軽減やADL維持・向上に寄与するため、推奨される場合も多いです。透析中の臥床時間を利用して、ベッド上での軽い運動を行うこともあります。正しくは:透析実施日の運動は、個々の状態に合わせて適切に計画し、安全に行われるべきである。選びやすい理由:透析は身体への負担が大きい治療であるため、その日の運動は避けるべきだと一般的に考えてしまいがちです。混同注意:急性期の合併症や、透析中の血圧変動など不安定な状態での激しい運動とは混同しやすいです。
- 2. HbA1cは過去1〜2か月の平均的な血糖コントロール状態を示す指標であり、運動強度の直接的な決定要因ではありません。運動強度は、運動前の血糖値、心拍数、運動負荷試験の結果、自覚症状(RPE)などを総合的に評価して決定します。正しくは:運動強度は、運動前の血糖値や運動耐容能、心拍数などに基づいて決定する。選びやすい理由:HbA1cは糖尿病治療における重要な指標であるため、運動強度にも直接関連すると誤解しやすいです。混同注意:運動療法の適応判断や、長期的な効果判定にHbA1cが用いられることと、具体的な運動強度設定の指標であることとを混同しやすいです。
- 3. 血液透析を受けている患者さんでは、体液量管理が非常に重要です。過剰な水分摂取は心臓への負担増加や肺水腫のリスクを高めるため、口渇がある場合でも、無制限に飲水を促すことは適切ではありません。水分摂取は医師の指示に基づき厳しく管理される必要があります。正しくは:運動前の水分摂取は、透析患者さんの水分制限を考慮し、医師の指示に従って慎重に行う。選びやすい理由:一般的に運動前には脱水予防のために水分摂取が推奨されるため、正しい選択肢に見えてしまいます。混同注意:健康な人や、腎機能に問題のない糖尿病患者に対する運動指導と、透析患者に対する指導を混同しやすいです。
- 4. 正解。インスリン療法中の糖尿病患者が運動中に倦怠感を訴えることは、低血糖の一般的な症状の一つです。運動による糖消費の増加とインスリンの作用により、血糖値が急激に低下することがあり、その初期症状として倦怠感、発汗、動悸、空腹感などが現れることがあります。
- 5. 2型糖尿病における運動療法の主な目的は、インスリン抵抗性の改善、血糖値の安定化、心血管疾患リスクの低減、筋力・持久力の維持・向上などです。インスリン分泌能は膵臓のβ細胞の機能に依存しており、運動で劇的に改善させることは困難です。特にインスリン療法中の患者では、分泌能の改善よりもインスリンの利用効率の向上が重要となります。正しくは:運動療法の主な目標は、インスリン感受性の改善や血糖コントロールの安定化である。選びやすい理由:糖尿病治療においてインスリンが重要な役割を果たすため、運動によってインスリン関連の機能が改善されると漠然と考えてしまいがちです。混同注意:残存するインスリン分泌能の維持・温存と、インスリン分泌能力そのものの「改善・増強」を混同しやすいです。
国試ポイント
糖尿病、特にインスリン療法中かつ複数合併症(腎症、高血圧、網膜症、透析)を有する高齢患者に対する運動療法の安全管理と、一般的な糖尿病運動療法原則との違いを理解しているかが問われています。低血糖症状の理解、水分管理の知識、運動強度設定の妥当性、運動療法の目的の理解が鍵となります。
混同注意
糖尿病患者の倦怠感が、運動による疲労、透析による疲労、あるいは他の合併症(貧血など)によるものと、低血糖によるものとを判別することが難しい場合があります。特に透析患者は全身倦怠感を訴えることが多いため、低血糖の可能性を意識することが重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、患者の現在の血糖値、直前の食事内容、自律神経障害の有無(無自覚性低血糖のリスク)などに着目し、より具体的な状況判断を求められる可能性があります。
関連知識
低血糖の症状と対処法、糖尿病運動療法の禁忌と注意点、透析患者の運動療法ガイドライン、腎症・網膜症・高血圧合併時の運動療法制限、体液管理の原則。