Danielsらの徒手筋力テストで股関節外転の段階3の測定をする際、図のような代償がみられた。代償動作を生じさせている筋はどれか。2つ選べ。

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出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・3番
解説
Danielsらの徒手筋力テストで股関節外転の段階3を測定する際、代償動作として骨盤の前傾や体幹の側屈などが生じることがある。これは股関節外転筋の筋力不足を補うために、股関節屈筋群が代償的に働くことによって引き起こされる。大腰筋と腸骨筋は共に強力な股関節屈筋(腸腰筋)であり、これらの筋が過剰に活動することで、見かけ上の股関節外転運動や、骨盤の不適切な動きが生じる。したがって、下図のような代償動作が見られた場合、その原因として大腰筋と腸骨筋の関与が考えられる。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。股関節外転の段階3では、患者は側臥位で股関節外転位を保持する。下図のような代償動作が示された場合、骨盤の前傾や体幹の側屈が見られることが多く、これは股関節屈筋群の活動によって生じることがある。大腰筋は股関節の強力な屈筋であり、外転筋群の弱さを補おうとして代償的に働く可能性がある。選びやすい理由:直接的な外転筋ではないが、代償動作として股関節屈筋の関与は重要。混同注意:他の股関節屈筋との区別がつきにくい場合がある。
- 2. 中間広筋は大腿四頭筋の一部であり、膝関節の伸展に作用する。股関節の運動、特に外転動作やその代償には直接関与しない。正しくは:中間広筋は膝関節伸展筋であり、股関節外転の代償とは無関係である。選びやすい理由:大腿部の筋肉だが、股関節の機能とは異なる。混同注意:大腿部の他の筋肉と混同する可能性。
- 3. 正解。腸骨筋もまた股関節の主要な屈筋であり、大腰筋とともに腸腰筋を構成する。股関節外転の筋力テストにおいて外転筋が弱い場合、腸骨筋が代償的に股関節を屈曲させたり、骨盤を前傾させたりすることで、見かけ上の外転運動を補おうとすることがある。この代償動作は、股関節外転の純粋な動きではなく、複合的な動きとして現れる。選びやすい理由:大腰筋と同様に、股関節屈筋としての役割を理解しているか問われる。混同注意:大腰筋と同時に働くため、どちらか一方しか選ばないミスがあるかもしれない。
- 4. 半腱様筋はハムストリングスの一部であり、股関節の伸展と膝関節の屈曲・内旋に作用する。股関節の外転やその代償動作には直接関与しない。正しくは:半腱様筋は股関節伸展筋・膝関節屈曲筋であり、股関節外転の代償とは異なる。選びやすい理由:股関節に関わる筋肉ではあるが、作用が異なる。混同注意:ハムストリングス全体の機能と、個々の筋の機能が混同される可能性。
- 5. 半膜様筋もハムストリングスの一部であり、股関節の伸展と膝関節の屈曲・内旋に作用する。半腱様筋と同様に、股関節の外転やその代償動作には直接関与しない。正しくは:半膜様筋は股関節伸展筋・膝関節屈曲筋であり、股関節外転の代償とは異なる。選びやすい理由:股関節に関わる筋肉ではあるが、作用が異なる。混同注意:ハムストリングス全体の機能と、個々の筋の機能が混同される可能性。
国試ポイント
徒手筋力テスト(MMT)における各関節・各筋の作用と、それに伴う代表的な代償動作の理解が問われる。特に、評価対象となる主動作筋が弱い場合に、どの筋が代償的に働くかを正確に把握することが重要である。また、股関節の機能解剖学、特に股関節屈筋群の作用と、それが運動パターンに与える影響についての知識が必要とされる。
混同注意
股関節の様々な筋肉の作用を混同しやすい。特に、大腿部の筋肉群(大腿四頭筋、ハムストリングス、股関節内外転筋群、股関節屈筋群など)それぞれの主作用と補助作用、そして代償動作に関わる筋の役割を明確に区別する必要がある。例えば、大腿筋膜張筋も股関節外転と屈曲に作用するため、代償として働く可能性を考える余地はあるが、本問の選択肢には含まれていない。選択肢の中から最も妥当な2つを選ぶことが求められる。
次に同じ論点が出たら
同様の問題では、他の関節の徒手筋力テストと、それに伴う代償動作を問われる可能性がある。例えば、肩関節や膝関節のMMTにおける代償筋や、特定の神経麻痺による筋力低下とそれに続く代償運動などが考えられる。また、代償動作を防ぐための検査者の固定方法に関する問題も出題される可能性がある。
関連知識
股関節の主要な筋群とその作用: ・股関節屈筋群:腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)、大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋。 ・股関節伸展筋群:大臀筋、ハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)。 ・股関節外転筋群:中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋。 ・股関節内転筋群:長内転筋、短内転筋、大内転筋、薄筋、恥骨筋。 徒手筋力テストにおける代償動作は、主動作筋の弱さだけでなく、協調性の問題や固定の不十分さによっても生じ得る。そのため、検査者は被験者の姿勢や他の関節の動きを注意深く観察する必要がある。