頸髄損傷の呼吸障害で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
頸髄損傷では、損傷部位により異なりますが、横隔膜(C3-C5支配)および肋間筋・腹筋(胸髄・腰髄支配)といった主要な呼吸筋が麻痺するため、吸気・呼気能力が著しく低下します。これにより、肺が十分に膨らまず、また十分に空気を吐き出せないため、肺活量は顕著に減少します。これは典型的な拘束性換気障害の病態です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。頸髄損傷では、特にC5以上の損傷で横隔膜機能が部分的に障害され、肋間筋や腹筋が麻痺するため、吸気量および呼気量の両方が低下し、結果として肺活量は著しく低下します。これは、呼吸筋の麻痺により、十分な換気が行えなくなるためです。
- 2. 頸髄損傷、特に高位損傷では、腹筋や肋間筋の麻痺により、強く息を吐き出す力が低下するため、咳の力も著しく弱まります。これにより、痰の喀出能力が低下し、肺炎などのリスクが高まります。正しくは:咳の力は弱まります。選びやすい理由:麻痺が起こるのは主に四肢であり、咳は反射的なものと誤解する可能性があるため。混同注意:反射性の咳と随意性の咳のメカニズム、および呼吸補助筋の役割と混同しやすい。
- 3. 頸髄損傷では、横隔膜や肋間筋などの吸気補助筋の麻痺により、最大限に息を吸い込める量が減少するため、予備吸気量は低下します。正しくは:予備吸気量は減少します。選びやすい理由:残気量が相対的に増えることから、他の区画が増加すると誤解する可能性。混同注意:呼吸量の各区分(予備吸気量、予備呼気量、一回換気量など)の定義と、それらが呼吸筋麻痺によりどのように影響を受けるかの理解が不十分な場合。
- 4. 頸髄損傷では、腹筋や内肋間筋といった呼気筋の麻痺により、通常の呼気の後にさらに吐き出せる空気の量が減少するため、予備呼気量も低下します。正しくは:予備呼気量は減少します。選びやすい理由:通常の呼吸(一回換気量)と、努力呼吸(予備呼気量)の違いを混同し、一回換気量の一部が維持されれば予備呼気量も維持されると考える可能性。混同注意:呼吸筋麻痺が吸気だけでなく呼気にも影響を与えることの認識不足。特に高位損傷で腹筋麻痺があると、強制呼気が困難になることを理解していない場合。
- 5. 頸髄損傷による呼吸障害は、主に呼吸筋の麻痺によって換気能力が低下する拘束性換気障害の形態をとります。気道の狭窄による閉塞性換気障害は直接的には生じにくいです。ただし、痰の喀出能力低下による気道閉塞が二次的に起こる可能性はあります。正しくは:拘束性換気障害が発生しやすいです。選びやすい理由:痰の喀出困難が気道閉塞につながると連想し、閉塞性と誤解する可能性。混同注意:拘束性換気障害(肺の拡張障害)と閉塞性換気障害(気道の狭窄による空気の流れの障害)の定義と違い。
国試ポイント
頸髄損傷における呼吸機能障害は、その病態(拘束性換気障害)とそれに伴う呼吸量の変化(肺活量、予備吸気量、予備呼気量の低下)、および合併症(咳力低下、喀痰困難、無気肺、肺炎)について問われることが多いです。各呼吸量指標の定義と、呼吸筋の支配神経を関連付けて理解しているかが重要です。
混同注意
拘束性換気障害と閉塞性換気障害の違い、およびそれぞれの検査所見。また、各呼吸量区分(一回換気量、予備吸気量、予備呼気量、残気量、肺活量、全肺気量)の具体的な意味と、呼吸筋麻痺がそれらにどう影響するか。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合は、頸髄損傷のレベル別に、どの呼吸筋が麻痺し、それがどの呼吸機能指標(例:一回換気量、残気量など)に最も影響を与えるかを問う問題が出る可能性があります。また、呼吸補助装置(人工呼吸器、カフアシストなど)の適応についても関連付けて問われるかもしれません。
関連知識
横隔神経(C3-C5)、肋間神経(T1-T11)、腹筋群の神経支配。肺気量分画の概念。拘束性換気障害と閉塞性換気障害の判別法(FEV1.0/FVC%など)。頸髄損傷レベルと呼吸機能障害の重症度の関連性。