急性期脳血管障害に対して、積極的に離床を行ってもよいのはどの場合か。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
急性期脳血管障害の患者において、重度の運動麻痺があることは、廃用症候群の予防のためにむしろ早期離床の必要性が高いです。ただし、意識レベルが安定していること、神経症状の増悪がないこと、血圧が適切にコントロールされていること、重篤な全身性合併症がないことなど、全身状態の安定が前提となります。これらの条件を満たしていれば、運動麻痺の重症度は離床を妨げる因子ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. JCS 3桁は刺激しても覚醒しない状態であり、意識障害が重く、積極的な離床を進める状態ではありません。正しくは:JCSが1桁(I度、意識清明だが軽度の見当識障害など)であり、全身状態が安定している場合、離床を検討します。ただし、積極的な離床は通常、JCS 1桁で活気があり、自力で体を動かせるレベルの意識状態が望ましいとされます。
- 2. 正解。急性期脳血管障害患者において、重度の運動麻痺があっても、バイタルサインが安定しており、神経学的増悪がなく、意識レベルが良好であれば、早期からの離床は推奨されます。むしろ、重度麻痺の患者ほど廃用症候群(関節拘縮、筋力低下、誤嚥性肺炎など)のリスクが高まるため、理学療法士の介助のもと、積極的にベッド上からの離床(座位保持、車椅子への移乗など)を行うべきです。これは脳卒中治療ガイドラインでも推奨されています。選びやすい理由:「重度」という言葉から、まだ時期尚早で安静にすべきだと考えてしまうかもしれませんが、これは誤りです。運動麻痺の重症度自体は、適切な支援があれば離床を妨げる絶対的な理由にはなりません。混同注意:重度の運動麻痺と意識障害、あるいは循環動態の不安定さなどの全身状態の悪化を混同し、一律に離床が禁忌であると考えてしまうこと。
- 3. 神経症状の進行性の悪化は、病態が不安定であることを示しており、脳内の出血の拡大、梗塞巣の拡大、脳浮腫の増悪など、重篤な合併症が発生している可能性が高いです。このような状況では、安静を保ち、まずは原因の究明と治療が優先され、離床は原則として禁忌となります。正しくは:神経症状が安定している、または改善傾向にある状態であれば、離床を検討できます。選びやすい理由:回復期への移行を期待して、何らかの刺激や活動が症状改善に繋がるのではないかと考えてしまうかもしれませんが、急性期の病態悪化時は禁忌です。混同注意:急性期の病態悪化と、回復期における残存症状に対する積極的なリハビリテーション介入のタイミング。
- 4. 収縮期血圧220mmHgは極めて高血圧であり、特に脳出血や脳梗塞急性期においては、再出血や脳浮腫の悪化、新たな脳血管イベントのリスクを著しく高めます。このような高血圧は厳重な降圧治療が必要であり、離床は禁忌とされます。一般的に、積極的な離床は収縮期血圧が180mmHg以下(脳出血の場合はさらに低い場合が多い)で安定していることが条件となります。正しくは:収縮期血圧が安定した適切な範囲内(通常180mmHg以下、脳出血では140〜160mmHg程度)にコントロールされている状態。選びやすい理由:血圧が高い方が全身の血流が良好だと誤解し、軽度な離床なら問題ないと考えてしまうかもしれません。混同注意:軽度の高血圧と重度の高血圧の基準、および急性期脳血管障害における血圧管理の目標値。
- 5. 重篤な全身性合併症(例:心筋梗塞、不安定狭心症、重症不整脈、重症肺炎、敗血症、腎不全など)がある場合、まずはその合併症の治療と全身状態の安定が最優先されます。離床は心肺機能に負担をかける可能性があり、病態を悪化させるリスクが高いため、原則として禁忌となります。正しくは:重篤な全身性合併症がなく、全身状態が安定している状態。選びやすい理由:脳卒中リハビリテーションの重要性から、少しでも体を動かすことが回復に繋がると考えてしまうかもしれませんが、生命維持が最優先です。混同注意:脳血管障害以外の合併症の重症度を軽視し、脳卒中のリハビリテーションを優先すること。
国試ポイント
急性期脳血管障害における離床の適応と禁忌に関する知識が問われています。特に、「重度な運動麻痺」は一見すると離床をためらう要因に思えますが、実は適切な介助のもとで早期に介入すべき対象であるという点がポイントです。全身状態の不安定を示す選択肢(意識レベルの低下、神経症状の悪化、重度の高血圧、全身性合併症)は、離床の禁忌に該当します。
混同注意
脳血管障害の急性期における「早期リハビリテーション」と、病態が不安定な時期の「安静臥床」の線引きを混同しやすい。特に、運動麻痺の重症度が離床の可否を決定する絶対的な要因ではない、という点が誤解されやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、患者の「全身状態の安定性(意識レベル、バイタルサイン、神経症状の安定)」が離床の絶対的な条件であることをまず確認し、その上で「麻痺の程度」が離床の可否を直接左右するものではない(むしろ早期介入の必要性を示唆することもある)という点を判断の基準とする。
関連知識
脳卒中治療ガイドラインにおける超急性期・急性期のリハビリテーションに関する推奨事項。廃用症候群の予防の重要性。各バイタルサインや意識レベル、神経学的所見が示す臨床的意味。JCS(Japan Coma Scale)やGCS(Glasgow Coma Scale)の評価基準。