53歳の女性。脳出血による右片麻痺で、発症後6週経過。Brunnstrom法ステージは上肢、手指、下肢ともにⅣ。両足をそろえた位置から理学療法士を両上肢で押しながら図のように左足を一歩前に出す運動を行っている。この目的として誤っているのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
この運動は、主に麻痺のない左足の振り出しと、麻痺側である右足での支持性向上、そして体幹の安定性向上を目的としています。歩隔(左右の足の間隔)を広げることは、この特定の運動の直接的な目的ではありません。歩隔を広げるための訓練としては、一般的に側方へのステップ練習などが挙げられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 麻痺側でない左足を前に出すことで、結果的に歩幅を広げる訓練に繋がります。歩行練習の一環として、一歩を大きく出すことを促す効果が期待できます。正しくは:これは適切な目的の一つです。選びやすい理由:一見すると直接的な歩行練習に見えるため、正解と誤認しやすいかもしれません。しかし、本運動は歩行時の下肢の振り出しを模しており、歩幅拡大に寄与します。混同注意:歩隔拡大と混同しやすいですが、歩幅は歩行時の足の前後方向の距離を指します。
- 2. 正解。この運動は、両足を揃えた状態から片足を前へ振り出すものであり、歩隔(足と足の左右の距離)を直接的に広げる効果はありません。むしろ安定性を保ちながら重心移動を促すことが主な目的です。選びやすい理由:バランス訓練と捉え、歩隔も関係すると思いがちですが、この具体的な運動では歩隔の拡大は直接的な目的ではありません。混同注意:歩幅(歩行時の前後の距離)と歩隔(左右の距離)を混同すると、誤った選択をしてしまいます。
- 3. 左足を前に振り出す際、麻痺側の右脚で体を支える必要があります。この時、右側の殿筋群(特に中殿筋)が重心の支持と安定化のために働き、結果的に強化に繋がります。正しくは:これは適切な目的の一つです。選びやすい理由:麻痺側の殿筋強化が目的であることは明らかですが、誤答に惑わされないように注意が必要です。混同注意:殿筋の役割(股関節の安定化、骨盤の安定化)を理解していないと判断が難しくなります。
- 4. 左足を前に出す際、支持脚となる麻痺側の右足で体重を支え、バランスを保つ必要があります。このとき、右の下腿三頭筋は足関節の底屈筋として身体を安定させる役割を果たし、遠心性・求心性収縮による強化が期待できます。正しくは:これは適切な目的の一つです。選びやすい理由:下腿三頭筋が歩行における推進力や安定性に重要であることを知っていれば、この選択肢が正しいと判断しやすいです。混同注意:足関節の背屈筋と底屈筋の役割を混同すると、正しく判断できません。
- 5. 理学療法士を両手で押しながら運動を行っているため、この動作によって麻痺側の右上肢と肩甲帯にも適切な負荷がかかり、安定化が図られます。特にBrunnstromステージⅣであるため、連合反応ではなく、随意的なコントロール下での安定性向上が期待できます。正しくは:これは適切な目的の一つです。選びやすい理由:下肢の運動がメインに見えるため、上肢の関与を見落とす可能性があります。しかし、両手でセラピストを押しているという状況設定がヒントです。混同注意:上肢の機能と下肢の機能がそれぞれ独立していると考えがちですが、実際には協調して働くことを理解する必要があります。
国試ポイント
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法において、提示された運動がどのような身体機能の改善に寄与するのか、その目的を正しく理解しているかが問われています。特に、歩幅と歩隔の違い、そして各筋群の役割を正確に把握している必要があります。
混同注意
歩幅と歩隔の意味を混同しやすい点が重要です。また、一見すると下肢の運動に見えるため、上肢の目的を見落とす可能性もあります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題では、提示される運動の種類(例:側方ステップ、踵上げ、片足立ちなど)と、それに伴う筋活動の変化や、具体的な歩行要素(例:立脚期、遊脚期)への影響を正確に判断できるかが問われるでしょう。また、麻痺の程度や発症からの期間に応じた訓練目標の適切性も考慮する必要があるかもしれません。
関連知識
Brunnstrom法ステージⅣの特性(共同運動からの部分的分離)、脳卒中片麻痺における歩行障害のメカニズム、支持脚としての役割、バランス訓練の種類、重心移動の重要性。