肺拡散能に影響を与えるのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・3番
解説
肺拡散能に影響を与える主要な因子は、フィックの拡散の法則に基づいています。ガスの拡散速度は、拡散面積(肺胞表面積)に比例し、拡散距離に反比例します。また、肺胞毛細血管血量、ヘモグロビン濃度、ガス分圧較差、ガスの溶解度、分子量なども影響します。選択肢1のヘモグロビン量は酸素の運搬能力に直結し、拡散能の測定値に影響を与えるため、重要な因子です。選択肢3の肺胞表面積は、ガス交換が行われる場所そのものの広さであり、拡散能に直接的に大きく影響します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。肺拡散能は、肺胞から血液へのガス移動能力を示します。酸素は赤血球中のヘモグロビンと結合して運搬されるため、ヘモグロビン量が少ないと酸素運搬能力が低下し、見かけ上肺拡散能が低下していると判断されることがあります。特に、一酸化炭素拡散能(DLCO)の測定では、ヘモグロビン濃度による補正が一般的です。
- 2. 死腔換気量は、ガス交換が行われない気道や肺胞内の空気量を指し、換気効率に関わる指標です。肺胞でのガス交換そのものの能力である肺拡散能とは直接的な関連はありません。正しくは:肺拡散能には影響を与えません。換気の効率性に関わります。選びやすい理由:肺機能検査の項目の一つであるため、関連があるように感じられるかもしれません。呼吸全体の効率性に関わるため、間接的に影響すると誤解する可能性もあります。混同注意:肺活量や1回換気量などの他の換気量測定項目、あるいは換気血流比不均等などと混同しやすいです。
- 3. 正解。肺胞の表面積はガス交換が行われる面積を直接示すため、その面積が大きいほどガス拡散能は高まります。肺気腫などで肺胞壁が破壊されると表面積が減少し、肺拡散能が低下します。これはフィックの拡散の法則における重要な因子です。
- 4. 気道抵抗は、空気が気道を通過する際の抵抗の大きさを示し、主に換気機能(空気の出入り)に影響します。肺胞でのガス交換(拡散)能力とは直接関係がありません。正しくは:肺拡散能には影響を与えません。換気機能の一部です。選びやすい理由:呼吸器の機能全般に影響を与える因子であるため、拡散能にも関連があると錯覚しやすいかもしれません。混同注意:換気量や流速、あるいは動的肺機能の指標(FEV1.0など)と混同しやすいです。
- 5. 残気量は、最大呼出後も肺内に残る空気の量を指し、肺気量分画の一つです。肺の膨張状態や換気機能の一部を示しますが、肺胞でのガス交換能力(拡散能)そのものに直接的な影響を与える因子ではありません。正しくは:肺拡散能には影響を与えません。肺気量分画の一つです。選びやすい理由:肺気量が大きいと拡散能も大きいというような、誤った連想から関連づけてしまう可能性があります。混同注意:全肺気量や機能的残気量、あるいは肺コンプライアンスなどと混同しやすいです。
国試ポイント
肺のガス交換に関する生理学的知識、特にフィックの拡散の法則の理解が問われています。拡散能に直接影響する因子と、換気機能や肺気量分画に関わる因子を区別できるかがポイントです。各因子が呼吸生理のどの側面(換気、拡散、血流、制御など)に関わるかを正確に把握しておく必要があります。
混同注意
肺拡散能に影響を与える因子と、換気機能(気道抵抗、死腔換気量)、肺気量分画(残気量、肺活量など)、肺コンプライアンス、換気血流比不均等などを混同しやすいです。これらはすべて呼吸機能の一部ですが、それぞれ異なる側面を評価する指標です。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合は、肺拡散能に影響するその他の因子(例: 肺胞毛細血管血量、肺胞上皮・血管内皮の厚さ、ガスの溶解度、分子量、肺胞換気量、換気血流比不均等、体位、心拍出量、肺水腫など)について問われる可能性があります。また、これらの因子が疾患(例: 肺気腫、肺線維症、貧血、心不全など)によってどのように変化し、DLCOに影響するかを理解しておくことが重要です。
関連知識
フィックの拡散の法則: Vgas = A/T * D * (P1-P2) (Vgas: ガス拡散量、A: 表面積、T: 膜厚、D: 拡散係数、P1-P2: ガス分圧較差)。拡散係数Dはガスの溶解度と分子量で決まる。肺拡散能の測定方法: 一酸化炭素拡散能 (DLCO) 測定。DLCOに影響する因子: 肺胞表面積、肺胞毛細血管血量、膜厚、ヘモグロビン濃度、肺胞換気量、換気血流比など。主要な呼吸機能検査項目とその評価内容(肺気量分画、換気機能、ガス交換能、気道可逆性など)。