下肢の末梢神経伝導検査で複数の神経に運動神経伝導速度低下を認めた。最も考えられる疾患はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
Guillain-Barré症候群は、急性期に自己免疫性機序により末梢神経のミエリン鞘が障害されることで、運動神経伝導速度の著しい低下や伝導ブロックを来す疾患であり、下肢から上行性に麻痺が出現することが特徴です。複数の神経での伝導速度低下は脱髄性病変を示唆しており、この疾患に最も合致します。
選択肢ごとの解説
- 1. 多発性筋炎は筋肉自体に炎症が起きる自己免疫疾患であり、神経伝導速度は一般に正常です。筋電図検査で筋原性変化を認めます。正しくは:多発性筋炎では、運動神経伝導速度は通常正常であり、筋電図検査で筋原性変化を認めます。選びやすい理由:「多発性」という言葉から、複数の部位に病変がある疾患と誤解しやすいため。混同注意:多発性神経炎(神経が障害される疾患)
- 2. 視神経脊髄炎は中枢神経系の脱髄疾患であり、視神経や脊髄に病変が限定され、末梢神経伝導速度には影響しません。正しくは:視神経脊髄炎は中枢神経系の疾患であり、末梢神経伝導速度には影響しません。選びやすい理由:自己免疫性脱髄疾患という点でGuillain-Barré症候群と共通点があるため。混同注意:Guillain-Barré症候群(末梢神経系の脱髄疾患)
- 3. 閉塞性動脈硬化症は血管の疾患であり、神経自体の障害は直接引き起こしません。虚血による神経症状を呈する場合でも、運動神経伝導速度の低下は主要な所見ではありません。正しくは:閉塞性動脈硬化症は血管疾患であり、運動神経伝導速度の低下を直接引き起こす主要な疾患ではありません。選びやすい理由:下肢の症状を呈する疾患であり、末梢神経障害と混同されやすいため。混同注意:糖尿病性神経障害など、虚血を背景とする二次的な神経障害
- 4. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが選択的に変性する疾患です。末梢神経のうち運動神経軸索が障害されるため、運動神経伝導速度の低下よりも活動電位振幅の低下が主要な所見となります。脱髄性変化による著しい伝導速度低下は典型的ではありません。正しくは:筋萎縮性側索硬化症は運動ニューロン病であり、運動神経伝導速度の著しい低下よりも活動電位振幅の低下が主要な所見です。選びやすい理由:進行性の運動麻痺を来すため、神経疾患全般として選択されやすい。また、下位運動ニューロン障害による筋萎縮・筋力低下があるため。混同注意:末梢神経障害一般、特に軸索変性型の神経障害
- 5. 正解。Guillain-Barré症候群は、末梢神経のミエリン鞘が自己免疫性機序により障害される急性炎症性脱髄性多発神経炎です。ミエリン鞘の障害は神経伝導速度の著しい低下を特徴とするため、問題文の所見に最も合致します。選びやすい理由:最も適切な選択肢であるため。混同注意:慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
国試ポイント
Guillain-Barré症候群の病態生理(脱髄)と、それによって生じる神経伝導速度低下の所見を結びつけて理解すること。
混同注意
Guillain-Barré症候群は脱髄性の多発神経炎であり、軸索変性型の疾患(例: 筋萎縮性側索硬化症の一部)とは病態が異なります。脱髄では伝導速度低下が主所見となるのに対し、軸索変性では振幅の低下がより顕著になる傾向があります。
次に同じ論点が出たら
下肢の複数の神経における運動神経伝導速度の低下という所見があれば、まず末梢神経の脱髄性疾患を疑い、Guillain-Barré症候群を第一に鑑別します。
関連知識
Guillain-Barré症候群の診断基準、髄液所見(蛋白細胞解離)、治療(免疫グロブリン静注療法、血漿交換療法)についても合わせて覚えておく必要があります。急性炎症性脱髄性多発神経炎(AIDP)が最も一般的な病型です。