ある薬物を投与する前後の運動開始前・中・後の血圧の変化を示す。この薬物の作用はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
提示されたグラフは、運動負荷によって血圧が上昇する状況において、薬物投与後にその血圧上昇がより顕著になっていることを示唆しています。交感神経β受容体、特に心臓に多く存在するβ1受容体を刺激すると、心拍数と心筋収縮力が増加し、結果として心拍出量が増大して血圧が上昇します。運動時には生理的に交感神経活動が亢進し、心拍数・心収縮力が増加しますが、この薬物はその効果をさらに増強していると考えられます。したがって、この薬物の作用は交感神経β受容体刺激であると判断できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 副交感神経刺激薬は、心拍数や血圧を低下させる作用があります。グラフの血圧変化は、運動中の血圧上昇が薬物投与後により顕著であるため、副交感神経刺激作用とは異なります。正しくは:運動中の血圧上昇を抑制し、むしろ低下させる。選びやすい理由:自律神経系の作用であるため、選択肢として考慮しやすいかもしれませんが、具体的な血圧変化のパターンとは一致しません。混同注意:交感神経刺激作用と逆の効果であり、血圧低下や徐脈などを引き起こします。
- 2. 交感神経α受容体刺激薬は、主に血管収縮作用により末梢血管抵抗を増加させ、血圧を上昇させます。しかし、このグラフは運動中の心拍出量増加による血圧上昇効果が示唆されており、α受容体刺激によるものとは異なる可能性があります。正しくは:α受容体刺激は主に血管収縮を介して血圧を上昇させますが、運動中の血圧上昇に対する主要な作用機序としてはβ受容体刺激の方が直接的です。選びやすい理由:血圧上昇作用があるため、グラフの結果と部分的に一致するように見えますが、運動時の心臓への直接作用ではないため、最も適切な選択肢ではありません。混同注意:α受容体とβ受容体の作用の違い。α受容体は血管収縮、β受容体は心拍数・心収縮力増加(β1)や血管拡張・気管支拡張(β2)など。
- 3. 交感神経α受容体抑制薬(α遮断薬)は、血管を拡張させ、血圧を低下させる作用があります。グラフは運動中の血圧が薬物投与後に上昇しているため、この作用とは矛盾します。正しくは:血圧を低下させる。選びやすい理由:自律神経系の作用であるため、選択肢として考慮しやすいかもしれませんが、血圧の動きとは逆の作用です。混同注意:α受容体刺激作用と逆の効果です。
- 4. 正解。交感神経β受容体刺激薬は、心臓のβ1受容体を刺激することで心拍数や心収縮力を増加させ、心拍出量を増大させるため、血圧を上昇させます。運動時には交感神経活動が亢進し、同様の反応が起こりますが、この薬物によりその作用が増強されている可能性が高いです。特に運動中の血圧上昇が薬物投与後に顕著であることから、心臓への直接的な作用を介するβ受容体刺激が最も妥当な説明となります。正しくは:正答。
- 5. 交感神経β受容体抑制薬(β遮断薬)は、心拍数や心収縮力を低下させ、血圧を下げる作用があります。グラフでは薬物投与後に運動中の血圧上昇がより顕著になっているため、この作用とは矛盾します。正しくは:心拍数や血圧を低下させる。選びやすい理由:心臓に作用する薬物であるため、この選択肢も関連性が高く見えますが、血圧の動きとは逆の作用です。混同注意:β受容体刺激作用と逆の効果です。高血圧治療薬としても使用されます。
国試ポイント
自律神経系の生理作用と薬物の効果を結びつける能力が問われています。特に、運動中の循環応答と、それを調節する交感神経系の受容体(α, β)の役割を理解しているかどうかが重要です。血圧変化のグラフから、どの受容体の刺激・抑制がその変化を引き起こすのかを正確に判断する力が求められます。
混同注意
交感神経のα受容体刺激(血管収縮による血圧上昇)とβ受容体刺激(心機能亢進による血圧上昇)の区別、およびそれぞれの抑制作用との混同。運動時の血圧上昇は主に心拍出量増加(β1刺激)に起因することが多いため、α刺激とは区別が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の問題が出た場合、血圧以外の指標(心拍数、末梢血管抵抗など)や、他の自律神経系薬物の効果を示すグラフが提示される可能性があります。グラフから読み取れる複数の指標を統合して判断する能力が問われるでしょう。また、特定の病態(例:心不全、高血圧)における薬物治療とその作用機序についても理解しておく必要があります。
関連知識
交感神経系の受容体(α1, α2, β1, β2)の分布と主な作用。運動時の循環動態の変化(心拍数、心拍出量、血圧、末梢血管抵抗)。β遮断薬(β-blocker)の治療効果(高血圧、狭心症など)。