脳出血後の頭部CT(別冊No. 1)を別に示す。最も生じやすい症状はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
下に示すCT画像では、右側の基底核部に高吸収域(白く見える部分)が確認され、これは脳出血を示唆している。基底核出血が内包後脚に拡大している可能性が高い。内包後脚には、反対側の身体からの運動および感覚線維が密集して走行しているため、右内包後脚の損傷は左半身の運動麻痺や感覚障害を引き起こす。したがって、左手の感覚脱失(感覚障害)が最も起こりやすい症状である。
選択肢ごとの解説
- 1. これは観念失行や構成失行を示唆する症状であり、通常、頭頂葉や前頭葉の損傷と関連が深い。CT画像から推測される病変部位とは直接的な関連が低い。正しくは:この症状は、より広範囲な大脳皮質、特に優位半球の損傷で見られることが多い。選びやすい理由:脳損傷後の高次脳機能障害として一般的に知られているため、選択肢として魅力的かもしれない。混同注意:失行、運動失語、運動麻痺
- 2. これは逆行性健忘の症状であり、海馬や視床、前頭前野など記憶に関わる領域の障害で起こる。CT画像から病変が主に基底核から内包領域に存在すると判断される場合、直接的な関連は低い。正しくは:健忘は、脳出血による脳実質への直接的な損傷よりも、広範な脳虚血や特定の記憶回路の損傷で生じやすい。選びやすい理由:脳損傷後に記憶障害が起こることは一般的だが、その性質や部位との関連を正確に理解していないと選んでしまう可能性がある。混同注意:逆行性健忘、前向性健忘、記銘力障害
- 3. これは半側空間無視の症状であり、通常、右半球(特に頭頂葉下部)の損傷で左側の空間無視が生じる。CT画像で出血が右基底核領域にある場合、左半身の感覚・運動麻痺は生じるが、半側空間無視は直接的な症状ではない。正しくは:CT画像で示唆される右基底核出血であれば、左半身の感覚・運動麻痺が主症状となる。半側空間無視は主に皮質病変、特に右頭頂葉病変で顕著に現れる。選びやすい理由:右脳の損傷と左半身の症状が結びつきやすいため、一見正しいように思える。混同注意:半側空間無視、半盲、感覚鈍麻
- 4. 正解。CT画像で右基底核に出血が見られる場合、出血が内包後脚に及んでいる可能性が高い。内包後脚には、対側(左側)の体幹や四肢からの感覚情報が伝わる感覚路(脊髄視床路や内側毛帯路が視床を介して連絡する部位)が走行しているため、この部位の損傷は左半身の感覚脱失や感覚鈍麻を引き起こす。正しくは:出血により内包後脚の感覚線維が障害されることで、対側の感覚障害が生じる。選びやすい理由:選択肢の中で、画像所見(右基底核出血)から最も直接的かつ高頻度で生じる症状である。混同注意:感覚脱失、運動麻痺、失語症(感覚性失語)
- 5. これは相貌失認の症状であり、通常、両側または右側の後頭葉と側頭葉の境界領域(特に紡錘状回)の損傷で生じる。CT画像から推測される病変部位とは直接的な関連が低い。正しくは:相貌失認は、顔の認識に関わる特定の脳領域の損傷で起こる高次脳機能障害である。選びやすい理由:高次脳機能障害の一種であり、脳損傷後に起こりうると考えられがち。混同注意:相貌失認、物体失認、視覚失認
国試ポイント
脳出血のCT画像所見を読み解き、出血部位とそれによって生じる代表的な神経症状との関連を理解しているかが問われる。特に内包の機能解剖と、それに関連する運動・感覚麻痺の症状が重要となる。
混同注意
脳の損傷部位と症状の関連、特に皮質症状(失行、失認、失語など)と皮質下症状(感覚障害、運動麻痺など)の区別が混同しやすい。半側空間無視と半盲、感覚脱失と運動麻痺も混同しやすいポイント。
次に同じ論点が出たら
同様の画像問題では、まず出血部位(皮質、皮質下、脳幹、小脳など)を特定する。次に、その部位を走行・通過する神経線維や局在する神経核の機能を想起し、それによって最も障害されやすい機能(運動、感覚、意識、高次脳機能など)を判断する。特に運動麻痺や感覚障害の場合、支配側(同側・対側)も合わせて考える。
関連知識
基底核、内包の解剖学的知識、錐体路(運動路)、脊髄視床路・内側毛帯路(感覚路)の走行と機能。脳出血の好発部位とその症状。高次脳機能障害の分類とその責任病巣。