車椅子乗車中に体幹を右に傾けたまま寝てしまい、アームレストに右上腕外側を長時間圧迫していた。目が覚めると、図のように右手の斜線部分に感覚鈍麻を認めた。絞扼性損傷を受けた神経はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
問題文の状況は、車椅子のアームレストによる上腕外側への長時間圧迫です。この部位で最も損傷を受けやすいのは橈骨神経です。また、図示された手の甲の親指から中指にかけての感覚鈍麻の領域は、橈骨神経浅枝の支配領域と完全に一致します。したがって、絞扼性損傷を受けた神経は橈骨神経であると判断できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 腋窩神経は肩関節の挙上や外転、三角筋・小円筋の支配に関与します。損傷した場合、肩関節の機能障害や肩上部の感覚障害が主になります。正しくは:この症状は、手の甲の親指から中指にかけての感覚鈍麻とは直接関連しません。選びやすい理由:上肢の神経なので、なんとなく選んでしまう可能性がある。混同注意:他の腕神経叢の神経と混同することがある。
- 2. 筋皮神経は上腕二頭筋、上腕筋、烏口腕筋を支配し、前腕外側の感覚に関わります。手の甲の感覚鈍麻とは症状が異なります。正しくは:手の甲の親指から中指にかけての感覚鈍麻とは直接関連しません。選びやすい理由:上肢の神経であるため、関連があるように思えるかもしれない。混同注意:前腕外側の感覚と混同しやすい。
- 3. 尺骨神経は手の小指側(第4指の尺側半分と第5指全体)の感覚と、多くの手内筋を支配します。問題文の症状とは感覚領域が異なります。正しくは:尺骨神経の損傷では、手の小指側の感覚障害や鷲手変形などが特徴的です。選びやすい理由:手部の感覚障害であるため、選択肢として考慮されやすい。混同注意:正中神経や橈骨神経と支配領域が混同されやすい。
- 4. 正中神経は主に手のひら側(母指から環指橈側半分)の感覚と、母指球筋、前腕屈筋群を支配します。問題文の症状は手の甲の感覚鈍麻であるため、異なります。正しくは:正中神経の損傷では、手のひら側の感覚障害や猿手変形などが特徴的です。選びやすい理由:手部の感覚障害であるため、選択肢として考慮されやすい。混同注意:尺骨神経や橈骨神経と支配領域が混同されやすい。特に母指に関わるため、橈骨神経と混同しやすい。
- 5. 正解。橈骨神経は上腕骨骨幹部や肘関節周囲で絞扼されやすく、特に上腕外側への長時間圧迫により損傷することがあります。この神経は、前腕伸筋群と手関節・手指伸筋群を支配し、手の甲の親指から中指にかけて(特に第1指から第3指の基節骨より遠位、および手背全体)の感覚を支配します。問題文の図示された感覚鈍麻の領域は、橈骨神経の支配領域と一致します。
国試ポイント
この問題は、上肢の主要な末梢神経の走行、支配筋、および支配感覚領域に関する基本的な知識を問うものです。特に、橈骨神経が上腕外側からの圧迫に弱く、その損傷によって特徴的な手背の感覚障害と下垂手(wrist drop)を呈することを理解しているかが重要です。
混同注意
上肢の各神経(正中神経、尺骨神経、橈骨神経)の感覚支配領域は非常に紛らわしく、混同しやすいポイントです。特に、手掌側と手背側の感覚支配の違い、および各指における支配神経の境界線を正確に覚える必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が問われた場合、以下の点を確認します。 1. 圧迫部位:どの神経がその部位で損傷を受けやすいか。 2. 症状:運動麻痺(どの筋肉が動かせないか)と感覚障害(どの領域の感覚がないか)を正確に把握し、その組み合わせがどの神経の損傷に合致するか。 3. 図示された感覚領域:与えられた図と各神経の支配領域を正確に照合できるか。
関連知識
橈骨神経麻痺の原因としては、ハネムーン麻痺(honeymoon palsy)やサタデーナイト麻痺(Saturday night palsy)など、上腕外側への圧迫によるものが代表的です。症状としては、下垂手(手関節と手指の伸展不能)と、手背の親指から中指にかけての感覚障害が挙げられます。また、絞扼性神経障害としては、手根管症候群(正中神経)、肘部管症候群(尺骨神経)など、他の部位における神経絞扼の病態も関連知識として重要です。