80歳の男性。胸部CT(別冊No. 2)を別に示す。この患者で低下が予想されるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
胸部CT画像に肺気腫性変化が認められる場合、閉塞性換気障害の可能性が高いです。閉塞性換気障害では、気道が狭窄し、特に呼気時の空気の排出が妨げられるため、1秒量(FEV1)が減少し、その結果として全肺活量に対する1秒量の割合である1秒率(FEV1/FVC)が低下します。残気量、気道抵抗、全肺気量、肺コンプライアンスは、肺気腫では一般的に増加する傾向にあります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。提供されたCT画像(別冊No. 2)に気腫性変化が認められる場合、これは慢性閉塞性肺疾患(COPD)を示唆します。COPDでは気道が狭窄し、呼気時の空気の排出が困難になるため、1秒率(FEV1/FVC)が低下します。正しくは:この患者は慢性閉塞性肺疾患を示唆する所見があるため、1秒率が低下します。選びやすい理由:他の選択肢も肺機能に関連するため迷うかもしれませんが、気腫性変化と直接関連するのは1秒率の低下です。混同注意:全肺気量や肺コンプライアンスの解釈と混同しやすいですが、閉塞性障害の指標として最も適切です。
- 2. 肺気腫の患者では、気道の閉塞と肺胞壁の破壊により、空気が肺内に閉じ込められやすくなります(air trapping)。この結果、呼出しきれない空気の量である残気量は増加することが一般的です。正しくは:気腫性変化のある患者では、残気量は増加すると予想されます。選びやすい理由:肺機能の変化全体を考えると、低下する項目もあるため、残気量も低下するのかと誤解する可能性があります。混同注意:閉塞性肺疾患では肺活量は低下しますが、残気量は増加するという点が混同されやすいです。
- 3. 肺気腫では、細気管支の虚脱や粘液栓、炎症などにより気道が狭窄するため、気道抵抗は増加することが一般的です。気道抵抗の増加が、呼気流速低下の主要な原因の一つとなります。正しくは:気腫性変化のある患者では、気道抵抗は増加すると予想されます。選びやすい理由:空気の通りが悪くなることから、抵抗が低下すると逆の解釈をしてしまう可能性があります。混同注意:肺コンプライアンスとの関連で混乱する可能性もありますが、気道抵抗は空気の流れにくさを表します。
- 4. 肺気腫では、肺組織の破壊と過膨張により、肺全体の容積が増加します。そのため、全肺気量は増加することが一般的です。これは、肺に閉じ込められる空気の量が増えることと関連しています。正しくは:気腫性変化のある患者では、全肺気量は増加すると予想されます。選びやすい理由:肺活量が低下するため、全肺気量も低下すると誤解する可能性がありますが、残気量の増加により全肺気量は維持または増加します。混同注意:肺活量や努力肺活量といった他の肺気量分画と混同しやすいです。
- 5. 肺気腫では、肺胞壁が破壊され弾性収縮力が低下するため、肺はより伸びやすく(弾力性が低下)なります。これは、肺コンプライアンスが増加することを意味します。つまり、肺がより少ない圧力でより大きく膨らむ状態です。正しくは:気腫性変化のある患者では、肺コンプライアンスは増加すると予想されます。選びやすい理由:肺機能が低下していることから、コンプライアンスも低下すると考えてしまう可能性があります。しかし、肺の弾性に関する指標です。混同注意:肺の「硬さ」と「伸びやすさ」の概念を混同すると、コンプライアンスの低下と誤解しやすいです。
国試ポイント
肺気腫(COPD)患者のCT画像所見と、それに対応する肺機能検査結果の関係性を理解しているかが問われています。特に、閉塞性換気障害と拘束性換気障害の肺機能検査所見の違いを明確に把握しておくことが重要です。
混同注意
各肺機能検査項目が、閉塞性換気障害(肺気腫)と拘束性換気障害(肺線維症など)のどちらでどのように変化するかを混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
この患者に対して、理学療法士としてどのような運動処方や呼吸訓練を行うべきか、さらに禁煙指導や栄養指導の必要性など、具体的な介入計画を立案できるか。
関連知識
肺気腫の病態生理、CT画像における肺気腫の典型的な所見(低吸収域、ブラ、肺血管の減少など)、スパイロメトリーによる換気機能評価(FEV1, FVC, FEV1/FVC, PEF)、プレチスモグラフィーによる肺気量分画測定(TLC, RV, FRC)、肺コンプライアンスと抵抗の概念。