75歳の男性。一人暮らし。歩行時のふらつきを主訴に来院した。以前から食事が不規則で、5日前から食事を摂らなくなった。上肢に明らかな異常はないが、下肢筋力はMMT 4レベルで、下肢遠位優位のしびれ感がある。膝蓋腱反射は亢進しているが、アキレス腱反射は低下し、Babinski反射は陽性だった。眼振は認めない。血清ビタミンB₁₂の低下を認めた。重心動揺検査結果(別冊No. 3)を別に示す。 この患者の左右へのバランス障害に対する踵の補正で適切なのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
外側フレアヒールは、靴の踵部の接地底面を外側方向に広げることで、支持基底面を拡大し、特に立脚相における左右方向の安定性を向上させる効果があります。これにより、左右への動揺や内反傾向の足部を安定させるのに適しています。
選択肢ごとの解説
- 1. SACHヒールは、立脚期における足関節の底屈動作を模倣し、歩行時の衝撃吸収や推進力補助を目的としています。左右方向の安定性向上には直接的な寄与はありません。正しくは:主に歩行時の足関節の動きを補助し、衝撃を緩和する目的で用いられます。選びやすい理由:ヒールの一種であり、他のヒールと混同しやすいですが、機能が大きく異なります。混同注意:ロッカーボトムシューズや他の歩行補助目的の装具と機能を混同しやすいです。
- 2. トーマスヒールは、靴の内側後方を長く厚くすることで、足の内側縦アーチを支持し、過度な回内を防ぐことが主な目的です。左右方向の全体的な安定性向上とは目的が異なります。正しくは:主に扁平足や回内足のアーチサポート強化に用いられます。選びやすい理由:足部のアライメント修正に関わるため、バランス改善と関連付けて考えてしまう可能性があります。混同注意:逆トーマスヒールやウェッジヒールなど、アーチサポートやアライメント修正目的の他の装具と混同しやすいです。
- 3. 正解。外側フレアヒールは、靴の踵部の底面を外側に向けて広げることで接地面を拡大し、特に立脚期における左右方向(内外側方向)の安定性を高めます。これにより、内反傾向や左右へのふらつきを抑制する効果が期待できます。
- 4. 逆トーマスヒールは、靴の外側後方を長く厚くすることで、内反足の支持を強化し、過度な回外を防ぐことを目的とします。これも足部の回内・回外方向のアライメント調整が主目的であり、左右方向の全体的な安定性向上とは異なります。正しくは:主に内反足の足部アライメント修正に用いられます。選びやすい理由:トーマスヒールと同様に足部のアライメント修正に用いられるため、バランス改善と関連付けて考えてしまう可能性があります。混同注意:トーマスヒールやウェッジヒールなど、アーチサポートやアライメント修正目的の他の装具と混同しやすいです。
- 5. 内側ウェッジヒールは、踵部の内側を高くすることで、内反足の矯正や足部を外反方向へ誘導することを目的としています。これは足関節の回内・回外方向のアライメント調整であり、左右方向の広範な安定性向上を直接目的とするものではありません。正しくは:主に内反足の矯正や足部の外反誘導に用いられます。選びやすい理由:ウェッジ自体が安定性に関わるような印象を与えることがありますが、特定の方向へのアライメント調整が主目的です。混同注意:外側ウェッジヒールや、他のアライメント修正用のウェッジと混同しやすいです。
国試ポイント
靴の踵部修正の種類と、それぞれの機能・適応を正確に理解しているかを問う問題です。特に、足部のアライメント修正と安定性向上という二つの目的を区別して把握しているかが重要になります。
混同注意
様々なヒール修正(SACH、トーマス、逆トーマス、ウェッジ、フレアなど)の名称と、それぞれの具体的な機能(衝撃吸収、アーチサポート、アライメント調整、安定性向上など)が混同されやすいです。特に「左右への安定性」と「特定の方向へのアライメント調整」の違いがポイントとなります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、患者の「バランス障害の方向性」(前後方向か、左右方向か)、「足部のアライメント異常の種類」(扁平足、回内足、内反足など)、「装具の目的」(衝撃吸収、推進力補助、アライメント修正、安定性向上など)を明確に区別し、それぞれの装具がどの目的・どの部位に作用するかを整理することが重要です。
関連知識
靴型装具の各部品(インソール、アウトソール、アッパー、カウンターなど)の名称と機能。足部のアライメント異常(扁平足、回内足、内反足など)とそれに対する装具療法の原則。歩行周期における足部の機能と、各相で求められる安定性や可動性。