6歳の女児。公園で転倒し、骨折の診断で同日緊急手術を受けた。術後のエックス線写真(別冊No. 4)を別に示す。術後の患側上肢の理学療法で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
小児の上肢骨折、特に肘関節周囲の骨折では、骨癒合の過程を妨げないことが最優先されます。仮骨形成が確認され、骨折部位の安定性が高まってから、痛みのない範囲で徐々に肘関節の可動域訓練を開始することが、合併症のリスクを低減し、良好な機能回復につながります。早期の無理な可動域訓練は、異所性骨化や癒合不全のリスクを高めます。
選択肢ごとの解説
- 1. 小児の骨折術後早期に筋力増強運動を行うと、骨折部位に過度な負荷がかかり、癒合不全や再骨折のリスクが高まります。特に成長期の骨はデリケートです。正しくは:筋力増強運動は、骨癒合が十分に進行し、医師の許可が得られてから段階的に開始するべきです。まずは自動介助運動や、軽負荷での等尺性運動から検討します。選びやすい理由:早期からのリハビリテーションは重要であるという認識から、積極的に運動を開始しようと考えるかもしれません。混同注意:安静期間と活動期への移行、特に小児の骨折治癒過程における運動負荷の段階付けについて混同しやすいです。
- 2. 小児の骨折、特に上腕骨顆上骨折など肘関節周囲の骨折では、他動運動、特に過度な強制他動運動は異所性骨化や関節拘縮を誘発するリスクが高いです。まず自動運動から開始し、関節周囲の組織の保護を優先します。正しくは:他動運動は注意深く行う必要があり、基本的に自動運動を優先し、痛みのない範囲で関節可動域を拡大していくのが原則です。選びやすい理由:関節可動域の早期回復を目指すという一般的な考え方から、より広い可動域を得やすい他動運動を優先したくなるかもしれません。混同注意:他動運動が有効なケース(例:意識障害のある患者)と、禁忌または慎重に行うべきケース(例:骨折術後、異所性骨化のリスクがある場合)を混同しやすいです。
- 3. 本症例は肘関節周囲の骨折であり、肩関節自体には直接的な損傷はありません。そのため、肩関節の可動域訓練は骨折部位の安静に配慮しつつ、術後早期から痛みのない範囲で開始することが可能です。術後2週間を待つ必要はありません。正しくは:肩関節の運動は、骨折部位への影響がない範囲で、術後早期(例えば術後翌日など)から開始し、廃用防止に努めるべきです。選びやすい理由:患肢全体を安静にするという漠然とした認識から、近位関節である肩関節の運動も一定期間待つべきだと考えてしまうかもしれません。混同注意:患部以外の関節(遠位・近位)の早期運動の重要性と、患部の絶対安静期間を混同しやすいです。
- 4. 正解。小児の骨折、特に肘関節周囲の骨折においては、骨折部の安定性が確保されてから(仮骨形成が確認され、骨癒合がある程度進んでから)関節運動を開始することが重要です。早期に無理な関節運動を行うと、骨折部へのストレスが増大し、癒合遅延、再骨折、異所性骨化などの合併症を引き起こすリスクがあります。正しくは:この選択肢は正しい記述です。
- 5. 術後翌日に急激な痛みが生じた場合、コンパートメント症候群などの重篤な合併症の兆候である可能性があります。手指の運動は重要ですが、急激な痛みがある場合は直ちに運動を中止し、医師に報告して原因を評価する必要があります。痛みを無視して運動を継続するのは危険です。正しくは:急激な痛みがある場合は、運動を中止し、速やかに医師に報告して評価を仰ぐべきです。特に上肢の骨折術後では、コンパートメント症候群の発症に注意が必要です。選びやすい理由:手指の廃用防止のために早期からの運動が重要であるという認識から、痛みに耐えてでも運動を継続すべきだと考えてしまうかもしれません。混同注意:早期からの運動の重要性と、合併症の兆候を見逃さないための観察、そして医療チームとの連携の重要性を混同しやすいです。
国試ポイント
小児の骨折、特に上肢骨折の術後管理における理学療法の原則、骨癒合の段階と運動療法の開始時期、および合併症のリスク管理に関する知識が問われています。特に肘関節周囲の骨折では、過度な他動運動や早期の負荷は異所性骨化のリスクを高めるため注意が必要です。また、患肢の近位・遠位関節の早期運動の重要性や、コンパートメント症候群などの合併症の兆候への対応も問われます。
混同注意
早期リハビリテーションの重要性と、骨癒合プロセスを尊重した段階的なアプローチ、特に小児の骨折における注意点(異所性骨化、再骨折リスク)を混同しやすいです。また、痛みがある場合の対応についても、単なる不快感と重篤な兆候との区別が曖昧になりがちです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、骨折部位や年齢に応じた骨癒合期間の目安、そしてそれに合わせた運動療法の開始時期と種類(自動運動優先、負荷の段階付け)を判断できるか。特に小児の骨折に特有の合併症(異所性骨化など)に配慮した選択肢を選べるかどうかが重要になります。
関連知識
小児の骨折の特徴(リモデリング能力が高い、骨端線損傷)、上腕骨顆上骨折の合併症(フォルクマン拘縮、内反肘、異所性骨化)、骨折治癒過程(炎症期、修復期、リモデリング期)、ギプス固定中の廃用症候群予防、コンパートメント症候群の初期症状と対応。