77歳の女性。自宅で転倒し救急車で搬入。右大腿骨頸部骨折に対し、人工骨頭置換術が施行された。術後の右股関節は背臥位で外旋位を呈していた。翌日に患者が右足の筋力低下を訴えたため、MMTを評価したところ右足関節背屈筋0であった。右足関節背屈筋力低下に対する物理療法で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
足関節背屈筋力がMMT 0の場合、患者は随意的な筋収縮を行うことが困難です。このような状況では、電気刺激療法(特に神経筋電気刺激:NMES)を用いて対象筋を直接収縮させることで、筋萎縮の予防、筋力の維持・増強、および神経再教育を促すことが最も適切な介入となります。他の選択肢は、筋力増強を直接の目的とする治療ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 温熱療法は、主に疼痛緩和、循環改善、軟部組織の伸張性向上を目的とするもので、筋力増強を直接の目的とする物理療法ではありません。MMT 0のような高度な筋力低下に対する直接的な回復効果は期待できません。正しくは:筋力増強を目的とする場合は、随意的な運動が困難な状態においては、神経筋賦活を促す電気刺激療法が適切です。選びやすい理由:術後の疼痛や血行改善には有用な場合もあるため、一般的な物理療法の一つとして選択肢として認識されやすいですが、筋力増強が目的の場合は不適切です。混同注意:疼痛管理や可動域改善を目的とした療法と、筋力回復を目的とした療法を混同しやすいです。
- 2. 赤外線療法は温熱療法の一種であり、体表の温熱効果を通じて疼痛緩和や血行促進を図りますが、筋力増強効果は期待できません。MMT 0の筋力回復には直接寄与しません。正しくは:筋力増強を直接の目的とする場合は、電気刺激療法などが適切です。選びやすい理由:温熱効果による血行改善やリラクゼーション効果があるため、術後のケアとして有用な場面もありますが、筋力回復が主目的の場合は適切な選択肢ではありません。混同注意:全身的な温熱効果やリラクゼーション効果と、特定の筋力増強効果を混同しやすいです。
- 3. 体外衝撃波療法は、主に慢性的な腱付着部炎(例:足底腱膜炎、上腕骨外側上顆炎など)、石灰化性腱板炎、骨折の癒合促進などに用いられます。筋力増強を直接の目的とする治療ではありません。正しくは:MMT 0の筋力低下に対しては、神経筋賦活を目的とした電気刺激療法が適切です。選びやすい理由:骨折の治療に関連するイメージがあるため、術後状態の患者に対して一見有効そうに見えるかもしれませんが、筋力低下への直接的な効果は薄いです。混同注意:骨関連疾患や慢性疼痛に対する治療と、神経筋賦活を目的とした治療を混同しやすいです。
- 4. 超音波療法は、組織の微細振動による温熱効果や非温熱効果(機械的効果)を利用し、疼痛緩和、組織修復促進、浮腫軽減などに用いられます。筋力増強を直接の目的とするものではありません。正しくは:筋力増強を目的とする場合は、電気刺激療法が適切です。選びやすい理由:軟部組織の治療や骨折の癒合促進に用いられることがあるため、術後状態の患者に対して有効そうに見えるかもしれません。混同注意:組織修復や疼痛管理、浮腫軽減と、神経筋賦活を混同しやすいです。
- 5. 正解。MMT 0の筋力低下は、随意的な筋収縮が困難または不可能な状態を指します。電気刺激療法(特に神経筋電気刺激:NMES)は、外部から電気刺激を与えることで直接筋を収縮させ、筋萎縮の予防、筋力維持・増強、神経再教育などを目的とします。随意的な運動が困難な場合の筋力回復には最も直接的かつ有効な物理療法です。
国試ポイント
MMT 0のような高度な筋力低下がある場合の、筋力増強を目的とした物理療法の選択が問われています。各物理療法の主な適応と効果を正確に理解しているかが重要です。特に神経麻痺や手術後の筋力低下に対する電気刺激療法の役割は国家試験で頻出です。
混同注意
温熱療法や超音波療法など、疼痛緩和や組織治癒を目的とする他の物理療法と混同しやすいです。筋力低下への直接的なアプローチか、間接的なアプローチかを見極める必要があります。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が出たら、「筋力低下の原因(神経性か筋原性か、中枢性か末梢性か)」や「筋力低下の程度(MMTグレード)」、「随意収縮の有無」を確認し、それに応じて「直接的な筋力増強を促す治療(例:電気刺激)」と「疼痛管理や循環改善などの補助的治療」を区別して選択できるかを問う問題が出る可能性があります。また、治療開始時期や禁忌事項も考慮する必要があるでしょう。
関連知識
MMT(徒手筋力検査)の評価基準と各グレードの意味、各種物理療法の適応・禁忌・主な効果(温熱、寒冷、電気、超音波、牽引など)、神経筋電気刺激(NMES)の原理と効果、人工骨頭置換術後のリハビリテーションプロトコル、腓骨神経麻痺など、足関節背屈筋力低下の原因となりうる病態。