78歳の女性。布団を持ち上げようとした際、背部から腹部への強い帯状痛を生じ、寝返りも困難となったため入院となった。入院時のエックス線写真(別冊No. 3A)とMRI(別冊No. 3B)とを別に示す。この患者の病態はどれか。2つ選べ。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・5番
解説
78歳の女性が軽微な外力で背部から腹部に強い帯状痛を訴え、寝返りも困難という急性期の症状と、提示されたX線写真およびMRI画像所見から、脊椎椎体圧迫骨折が最も強く疑われます。X線写真では椎体高の減少が認められ、MRIのT2強調画像(またはSTIR画像)で椎体内の高信号域が確認できることから、新鮮な圧迫骨折と診断できます。高齢女性の圧迫骨折は、骨粗鬆症が背景にあることがほとんどであるため、骨粗鬆症も病態として適切です。したがって、1と5が正答となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。高齢の女性であり、布団を持ち上げるという比較的軽微な動作で脊椎椎体圧迫骨折を起こした状況は、骨密度が低下している骨粗鬆症が基盤にある可能性が非常に高いです。圧迫骨折の画像所見も骨粗鬆症の合併を強く示唆します。
- 2. 脊椎分離症は、主に若年者に見られ、椎弓が分離する病態です。画像所見(下図A, B)からは椎弓の分離は確認できず、症状も高齢者の急な背部痛・圧迫骨折を示唆しており、分離症の特徴とは異なります。正しくは:若年者の腰痛やスポーツ活動に伴う脊椎ストレス骨折。選びやすい理由:脊椎の構造に関する疾患であるため、関連疾患として想起されるかもしれません。混同注意:脊椎すべり症や椎間関節症。
- 3. 脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなり神経が圧迫されることで、間欠性跛行や下肢のしびれ・痛みを主な症状とします。本症例は急な帯状痛と寝返り困難が主訴であり、画像所見も脊柱管狭窄症の典型的なものではありません。下肢症状の記載もありません。正しくは:間欠性跛行や下肢のしびれ、安静時より歩行時の症状悪化。選びやすい理由:高齢者の脊椎疾患として一般的なため、選択肢として選びやすいかもしれません。混同注意:椎間板ヘルニアや脊椎変性疾患一般。
- 4. 椎間板ヘルニアは、椎間板が突出して神経を圧迫し、坐骨神経痛のような下肢症状を伴うことが多いです。本症例の症状は背部から腹部の帯状痛で、下肢症状の記載がなく、画像所見(下図A, B)も椎間板ヘルニアの突出を明確に示していません。正しくは:特定の神経根症状(デルマトーム、ミオトームに一致した痛みやしびれ)。選びやすい理由:脊椎に生じる急性期の痛みとして、ヘルニアを想起する可能性があります。混同注意:脊柱管狭窄症や梨状筋症候群。
- 5. 正解。「布団を持ち上げようとした際、背部から腹部への強い帯状痛」という急性の症状は、脊椎椎体圧迫骨折に典型的なものです。下図AのX線写真では椎体の高さが減少していること、下図BのMRI画像では椎体内の骨髄に高信号域(浮腫や出血を示唆)が確認できることから、新規の圧迫骨折であると判断できます。
国試ポイント
高齢者の脊椎疾患における代表的な急性期病態(脊椎椎体圧迫骨折)とその基礎疾患(骨粗鬆症)を結びつけ、X線写真とMRIの基本的な所見から鑑別できるかどうかが問われています。特に、圧迫骨折の画像診断におけるX線とMRIの役割を理解しているかが重要です。
混同注意
高齢者の脊椎疾患は多岐にわたるため、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなど、慢性的な症状を呈する疾患と急性期の圧迫骨折を混同しやすいです。また、骨粗鬆症と圧迫骨折の因果関係を正しく認識していないと、片方しか選べない可能性があります。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の問題が出た場合、まず急性期の症状と慢性期の症状を区別し、提示された画像(特にMRIのT2/STIR画像での椎体内の変化)から新鮮骨折の有無を判断する。また、高齢者の骨折であれば骨粗鬆症の合併を常に考慮する視点が求められる。
関連知識
脊椎椎体圧迫骨折の診断基準、画像所見(X線、MRI T1/T2強調像、STIR)、骨粗鬆症の診断基準(DXA法など)、治療法(保存療法、バルーン椎体形成術など)、予防法。急性期疼痛の評価と管理。