83歳の女性。転倒して右股関節痛を訴えた。エックス線写真(別冊No. 2)を別に示す。疑うべき疾患はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
提示されたX線写真では、右の恥骨下枝に明瞭な骨折線が認められる。高齢者の転倒による股関節痛は、大腿骨近位部骨折が最も多いが、骨盤骨折(特に恥骨・坐骨)も鑑別診断として重要である。画像所見から恥骨骨折が最も適切である。
選択肢ごとの解説
- 1. 画像所見では関節の適合性は保たれており、股関節脱臼の兆候は見られません。正しくは:股関節脱臼の場合、大腿骨頭が寛骨臼から逸脱している画像所見が見られます。選びやすい理由:転倒による股関節痛は股関節脱臼でも起こるため、選択肢として考慮されやすいです。混同注意:股関節脱臼と骨折の鑑別ができていない可能性があります。
- 2. 画像では大腿骨近位部(大腿骨頭、頚部、転子部)に明らかな骨折線や変形は認められません。恥骨部に骨折線が確認できます。正しくは:大腿骨近位部骨折の場合、大腿骨の頭部、頸部、または転子部に骨折線が見られます。選びやすい理由:高齢者の転倒による股関節痛で最も頻繁に発生する疾患の一つであるため、第一選択肢として考えやすいです。混同注意:大腿骨近位部骨折と骨盤骨折の鑑別ができていない可能性があります。
- 3. 画像所見では恥骨結合部が大きく開いているような離開の兆候は見られません。恥骨に骨折線が確認できます。正しくは:恥骨結合離開の場合、恥骨結合の関節面が離解している様子が画像で確認されます。選びやすい理由:骨盤部に力が加わる転倒で起こりうる損傷であり、選択肢として考慮されるかもしれません。混同注意:恥骨結合離開と恥骨骨折の鑑別ができていない可能性があります。
- 4. 正解。X線写真では、恥骨下枝に明らかな骨折線が確認できます。高齢者の転倒による股関節痛は、大腿骨近位部骨折だけでなく、骨盤輪の骨折、特に恥骨や坐骨の骨折でも生じることが多いです。本症例では恥骨の骨折が明瞭です。
- 5. 画像では腸骨に明らかな骨折線や変形は確認できません。恥骨部に骨折線が確認できます。正しくは:腸骨骨折の場合、腸骨翼や腸骨稜などに骨折線が見られます。選びやすい理由:骨盤を構成する骨の一つであり、転倒による骨折として可能性はゼロではないため、誤って選ぶ可能性があります。混同注意:腸骨骨折と他の骨盤骨折の鑑別ができていない可能性があります。
国試ポイント
高齢者の転倒による股関節痛や下肢痛を訴える症例において、大腿骨近位部骨折だけでなく、骨盤骨折(恥骨・坐骨骨折など)も鑑別診断として念頭に置き、X線画像を正確に読影できるかが問われている。特に画像内の骨折部位を特定する能力が重要。
混同注意
高齢者の転倒による股関節痛=大腿骨近位部骨折という短絡的な思考に陥りやすい。骨盤骨折、特に恥骨骨折も頻度が高く、鑑別が必要。また、脱臼との鑑別も重要。
次に同じ論点が出たら
同様の症例が出題された場合、まずX線写真で骨折線の有無と部位を詳細に確認する。大腿骨近位部、骨盤(腸骨、恥骨、坐骨)、股関節の適合性に着目し、選択肢と照合して最も適切な疾患を特定する。
関連知識
高齢者の転倒による股関節部痛の鑑別診断には、大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折、大腿骨顆上骨折、骨盤輪骨折(腸骨、恥骨、坐骨)、股関節脱臼、軟部組織損傷などが含まれる。X線読影では、特に骨折線の有無と部位、関節の適合性を注意深く確認する。