46歳の女性。BMIは29.0である。両側の変形性股関節症で、股関節周囲の筋力低下と荷重時の股関節痛がある。理学療法で適切でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
変形性股関節症患者で荷重時痛がある場合、階段昇降のような股関節に強い衝撃と荷重ストレスがかかる運動は、疼痛の増悪や関節軟骨へのさらなる負担を招くため避けるべきです。特にこの患者はBMI 29.0と肥満傾向にあり、股関節への負担は健常者よりもさらに大きくなります。筋力増強が必要な場合でも、水中運動や自転車エルゴメーター、椅子からの立ち上がり練習など、股関節への負担が少ない方法を選択するのが原則です。
選択肢ごとの解説
- 1. 杖を使用することで股関節への荷重を軽減し、疼痛を管理しながら歩行能力を維持・改善することは、変形性股関節症患者にとって適切な介入です。正しくは:これは適切な介入である。選びやすい理由:補助具の使用に抵抗がある患者もいるため、不適切と誤解する可能性がある。混同注意:補助具の使用を『積極的な運動』ではないと捉えてしまう。
- 2. 水中では浮力により関節への負担が軽減されるため、股関節痛がある患者でも安全に有酸素運動を行うことができ、全身持久力の向上に繋がります。肥満傾向の患者にも特に有効です。正しくは:これは適切な介入である。選びやすい理由:水中の運動を『特別な方法』と捉え、一般的に適切でないと考える可能性がある。混同注意:水中運動が関節に与える影響を理解していないと、普通の運動と同じだと考えてしまう。
- 3. 変形性股関節症では股関節周囲筋の短縮が見られることが多く、柔軟性を改善するためのストレッチは痛みの軽減や可動域の維持・拡大に効果的です。特に背臥位は安定しており、股関節への負担が少ない体位です。正しくは:これは適切な介入である。選びやすい理由:ストレッチが痛みを誘発する可能性を懸念し、不適切と考えるかもしれない。混同注意:ストレッチの目的(柔軟性改善)と、急性期の痛みを混同してしまう。
- 4. 正解。階段昇降は股関節に大きな荷重と衝撃を与える運動であり、変形性股関節症で荷重時痛を抱える患者、特にBMIが高い(肥満傾向)患者には股関節への負担が大きすぎ、疼痛の増悪や関節変性の進行を招くリスクが高いため、不適切です。正しくは:股関節への負担が少ない閉鎖性運動(例:スクワットを深さを制限して行う、レッグプレス)や、等尺性運動、または椅子からの立ち上がり練習など、他の筋力増強法を検討すべきです。選びやすい理由:筋力低下があるため、筋力トレーニング自体は必要だと考え、具体的な運動方法の適切性を深く検討しない可能性がある。混同注意:筋力増強の必要性と、その具体的な運動方法の適切性を混同してしまう。全ての筋力トレーニングが『良い』と誤解する。
- 5. 自転車エルゴメーターは、股関節への衝撃が少なく、座位で行えるため荷重負担をかけずに下肢の筋持久力や有酸素能力を向上させることができます。変形性股関節症患者にとって安全で効果的な運動方法の一つです。正しくは:これは適切な介入である。選びやすい理由:自転車運動が膝関節に負担をかけるイメージがあり、股関節にも同様の懸念を持つかもしれない。混同注意:自転車運動が膝関節に与える影響と、股関節に与える影響を混同しやすい。特に高負荷や高い回転数でなければ、股関節への負担は少ない。
国試ポイント
変形性股関節症患者に対する運動療法において、荷重関節への負担を考慮した運動選択の適切性が問われます。特に、疼痛や関節変性のリスクがある状況での『禁忌』に近い運動を見極める知識が必要です。BMIの高さも重要な判断材料となります。
混同注意
筋力低下があるため、筋力トレーニング自体は必要という認識から、どんな筋力トレーニングでも良いと誤解しやすい点。股関節への負担が少ない運動(水中運動、自転車エルゴメーター)と、負担が大きい運動(階段昇降、ジャンプなど)の区別が曖昧だと誤答しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の論点が出題された場合、患者の病態(特に疼痛部位と程度、関節の変性度合い、BMI)、運動の目的(筋力増強、有酸素運動、柔軟性改善)、および各運動が関節に与える荷重・衝撃ストレスを総合的に評価し、最も安全かつ効果的な介入を選択できるかを確認します。
関連知識
変形性関節症の病態生理、保存療法の原則(疼痛管理、筋力維持・増強、可動域確保、体重管理)、各運動様式が関節に与える影響(開鎖性運動・閉鎖性運動、水中運動の浮力効果、自転車運動の非荷重性など)。