長期間の有酸素運動の効果として正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・4番
解説
長期間の有酸素運動は、心肺機能の向上に大きく寄与します。具体的には、心臓の1回拍出量および最大心拍出量が増加し、より効率的に全身へ血液と酸素を供給できるようになります。また、骨格筋では酸素の利用効率を高めるために毛細血管網が発達し、ミトコンドリアの数や酵素活性も向上します。これらは、運動能力の向上だけでなく、生活習慣病の予防・改善にも繋がる重要な適応です。選択肢1, 2, 5はいずれも、長期間の有酸素運動の適応とは逆の効果を述べています。
選択肢ごとの解説
- 1. 長期間の有酸素運動は、血管の柔軟性を高め、末梢血管抵抗を減少させることで、安静時血圧を低下させる効果があります。これは高血圧の予防や改善に有効です。正しくは:静止時の血圧が低下する。選びやすい理由:運動中は一時的に血圧が上昇するため、その印象から「上昇」を選んでしまう可能性があります。混同注意:運動中の血圧応答と、トレーニングによる安静時の血圧適応を混同しやすいです。
- 2. 適切な有酸素運動を続けることで、心臓のポンプ機能が効率的になり、1回に送り出す血液量(1回拍出量)が増加します。結果として、より少ない拍動で全身に十分な血液を送れるようになるため、安静時心拍数は低下します。正しくは:静止時の心拍数が低下する。選びやすい理由:運動中は心拍数が増加するため、運動効果として心拍数「増加」を連想しやすいですが、これは運動中の即時的な反応であり、長期的な安静時の適応とは異なります。混同注意:運動時の心拍数増加と、トレーニングによる安静時の心拍数適応(心臓効率の向上)を混同しやすいです。
- 3. 正解。長期間の有酸素運動により、心臓の収縮力が向上し、心臓が1回で送り出す血液量(1回拍出量)が増加します。また、心臓の容量も増えるため、運動中に心臓が全身に送り出せる血液の総量(心拍出量)が最大で増加します。これにより、より多くの酸素を筋肉に供給できるようになります。
- 4. 正解。有酸素運動を継続すると、活動する骨格筋への酸素供給能力と、老廃物の除去能力を高めるために、筋肉内の毛細血管の数が増え、密度が高まります。これにより、血液と筋肉組織間の物質交換がより効率的に行われるようになります。
- 5. 継続的な有酸素運動は、心臓の効率を高めるとともに、自律神経系に影響を与え、安静時には副交感神経活動が優位になる傾向があります。これにより、リラックス効果が高まり、交感神経の過度な緊張は抑制されます。正しくは:静止時の副交感神経活動が高まる、または静止時の交感神経活動が低下する。選びやすい理由:運動そのものが交感神経を活性化させるため、その効果が持続すると誤解しやすいですが、これは運動中の急性的な反応であり、長期的な安静時の適応とは異なります。混同注意:運動時の生理的応答(交感神経優位)と、トレーニングによる安静時の自律神経系の適応(副交感神経優位化)を混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、長期間にわたる有酸素運動が身体の循環器系や筋組織にどのような生理学的適応をもたらすかを正確に理解しているかを問うものです。特に、運動中の急性的な変化と、トレーニングによる安静時や最大運動時の長期的な適応を区別できるかがポイントとなります。心拍数、血圧、心拍出量、血管網の発達といった主要な生理指標の動態が問われています。
混同注意
運動中の生体反応(例:心拍数や血圧の上昇、交感神経の活性化)と、長期的なトレーニングによって生じる安静時や最大運動時の身体的適応(例:安静時心拍数や血圧の低下、最大心拍出量の増加、副交感神経優位化)を混同しやすいです。また、レジスタンス運動(筋力トレーニング)の効果と有酸素運動の効果を混同することもあります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、まず「問題が問うているのは急性的な変化か、それとも長期的な適応か」を明確に判断します。次に、各選択肢が「安静時」と「運動時」のどちらの変化を述べているかに注意し、有酸素運動による心血管系、呼吸器系、筋代謝系の具体的な適応と結びつけて考えます。
関連知識
心拍数予備能、最大酸素摂取量(VO2max)の増加、換気閾値の上昇、筋線維タイプの変化(タイプIIaの割合増加)、ミトコンドリアの数と大きさの増加、酸化酵素活性の向上、脂質代謝の促進、糖代謝の改善、インスリン感受性の向上。