42歳の女性。3か月前に手足がしびれるようになり、1か月前から手足の脱力を自覚した。神経内科を受診し慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーと診断され、ステロイド療法が開始された。筋電図検査所見として正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)は、末梢神経のミエリン鞘が自己免疫により障害される脱髄性疾患です。ミエリン鞘は神経伝導速度を速める役割を担っているため、これが障害されると神経の電気信号が伝わる速度が著しく低下します。誘発筋電図検査では、この伝導速度の低下が特徴的な所見として確認されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。CIDPは末梢神経のミエリン鞘が障害される脱髄性疾患であり、ミエリンは神経の電気信号の伝導速度を速める役割を担っています。ミエリン鞘が障害されると、神経伝導速度が著しく低下するのが特徴的な所見です。
- 2. F波は運動神経の逆行性伝導によって生じる遅い波であり、末梢神経の近位部の伝導状態を反映します。CIDPのような脱髄性疾患では、近位部も障害されるため、F波の潜時はむしろ延長します。正しくは:誘発筋電図において、F波の潜時が延長する。選びやすい理由:F波は末梢神経の異常を早期に検出するのに役立つため、何らかの異常があることは想像できますが、潜時が短縮することはありません。混同注意:正常な神経伝導や、他のタイプの神経障害と混同しやすいかもしれません。
- 3. 低振幅・短持続の電位波形は、主に筋線維そのものに異常がある筋原性疾患(例:筋ジストロフィー)で観察される典型的な所見です。CIDPは神経原性疾患であり、この所見は一般的ではありません。正しくは:針筋電図検査で、多相性電位や高振幅・長持続電位、あるいは自発活動(線維性収縮電位、陽性鋭波)が出現することがある。特に軸索障害を伴う場合に高振幅・長持続電位が出現する。選びやすい理由:筋力低下があるため筋電図に異常があることは推測できますが、筋原性疾患の所見と混同する可能性があります。混同注意:筋原性疾患(低振幅・短持続)と神経原性疾患(高振幅・長持続、多相性)の針筋電図所見を混同しやすいです。
- 4. M波の振幅が漸減するwaning現象は、重症筋無力症などの神経筋接合部疾患で特徴的に見られる所見です。CIDPは末梢神経の脱髄性疾患であり、神経筋接合部の機能障害が主病態ではないため、通常は認められません。正しくは:神経筋接合部疾患(例:重症筋無力症)ではwaningを認めるが、CIDPでは通常認めない。選びやすい理由:筋力低下があるので、神経伝達の異常を疑うことはできますが、疾患特異性の高い所見です。混同注意:重症筋無力症などの神経筋接合部疾患の検査所見と混同しやすいです。
- 5. M波の振幅が漸増するwaxing現象は、ランバート・イートン症候群のような特定の神経筋接合部疾患(特に高頻度刺激で顕著)で特徴的に見られる所見です。これもCIDPの典型的な所見ではありません。正しくは:ランバート・イートン症候群のような特定の神経筋接合部疾患でwaxingを認めるが、CIDPでは通常認めない。選びやすい理由:waningと同様に、神経伝達異常の選択肢として並列されているため、混同しやすいです。混同注意:ランバート・イートン症候群や特定の神経筋接合部疾患の検査所見と混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)という代表的な脱髄性ニューロパチーにおける筋電図検査の典型的な所見を理解しているかを問うています。特に、脱髄性疾患と軸索変性性疾患、筋原性疾患、神経筋接合部疾患の筋電図所見の違いを明確に区別できることが重要です。伝導速度の低下は脱髄性疾患の最も重要な特徴です。
混同注意
脱髄性ニューロパチーの所見と、軸索変性性ニューロパチー、筋原性疾患、神経筋接合部疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群など)の筋電図所見を混同しやすいです。特に、F波の延長と短縮、針筋電図の低振幅・短持続電位と多相性電位・高振幅長持続電位、反復刺激試験でのwaningとwaxingは、それぞれの疾患群に特異的な所見であるため、しっかりと区別して覚える必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、CIDP以外の具体的な疾患(例:ギラン・バレー症候群、糖尿病性ニューロパチー、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、重症筋無力症など)を挙げ、それぞれの疾患における筋電図検査(誘発筋電図、針筋電図、反復刺激試験)の具体的な所見を正しく選択できるかどうかが問われる可能性が高いです。また、各検査所見が末梢神経のどの病態(脱髄、軸索変性、神経筋接合部障害、筋原性障害)を反映しているかを理解しているかを確認する問題も考えられます。
関連知識
・脱髄性ニューロパチーの筋電図所見:伝導速度低下、遠位潜時延長、F波潜時延長、伝導ブロック、時間的分散などが特徴的です。代表疾患はギラン・バレー症候群やCIDP。 ・軸索変性性ニューロパチーの筋電図所見:複合筋活動電位(CMAP)や感覚神経活動電位(SNAP)の振幅低下が主で、伝導速度は比較的保たれるか軽度低下にとどまります。針筋電図では神経原性変化(自発活動、高振幅・長持続・多相性電位)がみられます。 ・筋原性疾患の筋電図所見:針筋電図で低振幅・短持続・多相性電位、早期募集が特徴的です。 ・神経筋接合部疾患の筋電図所見:反復刺激試験でwaning(重症筋無力症)やwaxing(ランバート・イートン症候群)が特徴的に見られます。