術後廃用症候群と予防の組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
術後の廃用症候群の一つである起立性低血圧は、長時間の臥床により自律神経系の調節機能が低下することで起こります。ギャッチアップによるヘッドアップ座位は、段階的に頭部を挙上することで、重力に対する循環動態の適応を促し、起立性低血圧の発症を効果的に予防します。
選択肢ごとの解説
- 1. ベッド上での体位保持だけでは、筋萎縮の予防には不十分です。筋萎縮を防ぐには、早期からの能動的な運動や、負荷をかけた運動が必要です。正しくは:筋力低下(筋萎縮) — 早期の離床と運動療法選びやすい理由:患者を楽な体位に保つことが廃用症候群全般の予防につながると思われがちですが、筋萎縮には特化した運動が必要です。混同注意:安楽なポジショニングと、筋力維持のための運動を混同するかもしれません。安楽なポジショニングは褥瘡予防などには有効ですが、筋萎縮には直接的ではありません。
- 2. 弾性ストッキングは、主に下肢の深部静脈血栓症や浮腫の予防に用いられます。骨萎縮の予防には、体重負荷を伴う運動や、起立・歩行などによる骨への物理的刺激が不可欠です。正しくは:骨量減少(骨萎縮) — 早期の荷重訓練や立位・歩行訓練選びやすい理由:ストッキングが血流改善に役立つため、間接的に全身状態に良いと誤解する可能性があります。混同注意:深部静脈血栓症の予防策と混同しやすいです。
- 3. 下肢外転枕は、特定の関節(股関節など)の過度な内転や内旋を防ぐ目的で使用されますが、関節拘縮全般の予防策としては不十分です。拘縮を予防するには、定期的な関節可動域訓練(ROM訓練)が必須です。また、長時間同一体位を強いられること自体が拘縮のリスクになりえます。正しくは:関節の動きの制限(関節拘縮) — 定期的な関節可動域訓練(ROM訓練)選びやすい理由:枕によって関節の変形が防げるというイメージから、拘縮予防に有効だと誤解しやすいです。混同注意:特定の手術後(例:股関節全置換術後)の肢位保持と、一般的な関節拘縮予防を混同する可能性があります。
- 4. ティルトテーブルでの立位訓練は、下肢の血流改善や筋ポンプ作用の促進に寄与し、深部静脈血栓症の予防に有効な側面はありますが、この選択肢は「正しい組み合わせ」として他の選択肢と比較した場合、最も適切とは言えません。深部静脈血栓症の予防には、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置、早期離床、足関節自動運動などがより一般的で直接的な対策として挙げられます。傾斜台立位は、起立性低血圧の予防や荷重刺激による骨萎縮予防にも効果があるため、複合的な目的で用いられることが多いです。正しくは:深部静脈血栓症 — 弾性ストッキングの装着、足関節の自動運動、早期離床選びやすい理由:ティルトテーブルが全身の循環を改善することは事実であり、深部静脈血栓症の予防に役立つと考えるのは自然です。しかし、より直接的・一般的な予防法が他にあるため、相対的に最も正しいとは言えません。混同注意:起立性低血圧や骨萎縮の予防効果と混同しやすいです。また、循環促進効果が直接的な血栓予防と同義であると誤解する可能性があります。
- 5. 正解。ギャッチアップによるヘッドアップ座位は、臥床期間が長かった患者さんに対して、急激な体位変化による起立性低血圧を防ぐために、段階的に頭部を挙上し、心血管系を重力に適応させる非常に有効な方法です。
国試ポイント
廃用症候群の種類と、それぞれに対する適切な予防・介入策の組み合わせを問う問題です。各廃用症候群(筋萎縮、骨萎縮、関節拘縮、静脈血栓症、起立性低血圧など)の病態生理と、それに対応するリハビリテーション介入の目的・方法を正確に理解しているかが試されます。特に、各介入が「何のため」に行われるのかを明確に区別できる必要があります。
混同注意
各廃用症候群の予防策がそれぞれ異なるため、どの対策がどの症状に有効なのかが混同しやすいです。例えば、弾性ストッキングは深部静脈血栓症予防であり、骨萎縮予防ではありません。また、ティルトテーブルは複数の廃用症候群(起立性低血圧、骨萎縮、静脈血栓症など)の予防に複合的に寄与するため、その主要な目的や効果を正確に理解していないと選択肢の判断を誤る可能性があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、まず廃用症候群の具体的な病態(例:筋萎縮なら筋タンパク質の分解と合成のバランス崩壊)と、それに対するリハビリテーション介入の直接的な目的(例:筋萎縮なら筋活動の維持・促進)を結びつけられるかを確認します。特に、複数の症状に効果がある介入(例:早期離床)の場合、その介入がどの症状に最も直接的に作用するのか、または主な目的は何なのかを判断できるように、それぞれの効果を整理しておくことが重要です。
関連知識
筋萎縮: 早期離床、等尺性運動、漸増抵抗運動。骨萎縮: 早期荷重、立位訓練、歩行訓練。関節拘縮: 早期から全可動域での関節可動域訓練(ROM-Ex)、ポジショニング。深部静脈血栓症: 弾性ストッキング、間欠的空気圧迫装置、足関節の自動運動、早期離床。起立性低血圧: 段階的なギャッチアップ、ティルトテーブル、弾性腹帯。褥瘡: 体位変換、ポジショニング、栄養管理。