腹臥位と比較した場合の背臥位の特徴について正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
背臥位では、舌根が重力によって後方に沈下しやすく、上気道が狭窄しやすい状態になります。また、唾液の貯留や胃内容物の逆流も起こりやすく、これらが誤嚥のリスクを高めます。特に嚥下機能が低下している場合や意識レベルが低い場合に顕著です。対照的に、腹臥位では舌根沈下が起こりにくく、重力によって分泌物が口腔前方へ流れやすいため、誤嚥のリスクは背臥位に比べて低減します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。背臥位では舌根沈下や唾液の貯留、胃内容物の逆流などが起こりやすく、誤嚥のリスクが高まります。特に意識障害がある場合や嚥下機能が低下している場合に顕著です。選びやすい理由:嚥下機能が正常な人でも唾液の誤嚥リスクはゼロではないため、一般的な特徴として捉えられがちです。混同注意:腹臥位の方が顔が下を向くため、誤嚥しやすいと誤解されることがありますが、解剖学的な気道保護機能の観点からは背臥位の方がリスクが高いです。
- 2. 背臥位では舌根が重力により後方に沈下しやすく、軟口蓋も後壁に近づくため、上気道が狭窄しやすい状態になります。特に睡眠時無呼吸症候群の患者などで顕著です。正しくは:上部気道の狭まりが発生しやすい。選びやすい理由:顔が上を向くため気道がまっすぐになり、狭窄しにくいと直感的に考える人もいますが、舌根沈下が大きな要因となります。混同注意:腹臥位の方が顔を横に向けるため、気道がねじれるように感じて狭窄しやすいと誤解されることがあります。
- 3. 背臥位では腹部の臓器が横隔膜を押し上げるため、肺の膨らみが制限され、結果として機能的残気量(FRC)は腹臥位よりも減少します。選択肢は「減少しやすい」とあるため、この点は背臥位の特徴として正しい記述です。しかし、設問は「腹臥位と比較した場合の背臥位の特徴」を問うています。腹臥位でもFRCは減少しますが、背臥位の方がFRCはさらに減少しやすい傾向にあります。ただし、この問題の文脈では、誤嚥がより直接的かつ顕著な背臥位の特徴として挙げられます。正しくは:機能的残気量が減少しやすい。選びやすい理由:これは医学的に正しい事実であり、背臥位でFRCが減少することは広く知られています。そのため、正しい選択肢として選びやすいですが、他の選択肢との比較や設問の意図を考慮する必要があります。混同注意:FRCは呼吸機能において重要な指標であり、体位によって変動します。背臥位での減少は生理的な変化ですが、誤嚥のリスクのような直接的な臨床的影響とは異なる側面を持ちます。
- 4. 背臥位では、後方にある肺底部(背側)の換気が重力の影響で悪化し、同時に血流(灌流)は重力によって後方へ増加します。この換気血流比(V/Q比)の不均衡により、特に背側の肺底部でのシャントが増加し、動脈血酸素分圧(PaO2)は低下しやすい傾向にあります。腹臥位では、換気血流比の不均衡が改善され、PaO2はむしろ上昇することが多いです。正しくは:動脈血の酸素分圧が低下しやすい。選びやすい理由:仰向けの方が呼吸が楽に感じる人もいるため、酸素化が良いと誤解されることがあります。混同注意:体位と換気血流比の関係は複雑で、重力の影響を正確に理解していないと間違いやすいポイントです。重力が下側肺野の血流を増やす一方で、下側肺野は上側肺野よりも換気されにくいため、V/Qミスマッチが生じやすくなります。
- 5. 背臥位では、重力の影響で腹部臓器が横隔膜を押し上げ、また背側にある肺自体も自重で圧迫されるため、特に後肺底区(背側肺底部)の換気は重力と胸郭の動きの制限により悪化しやすいです。血流は重力で背側に増えるため、換気血流比不均衡を招きます。正しくは:肺の後下部の換気が悪化しやすい。選びやすい理由:重力で血流が増えることを換気が改善すると勘違いしやすいです。または、単に下側の肺がより多くの血液を受け取るため、機能的に優れていると誤解されることがあります。混同注意:腹臥位では、重力によって胸郭の背側が自由になり、横隔膜の動きも改善するため、後肺底区の換気はむしろ改善します。体位による換気分布の変化を理解することが重要です。
国試ポイント
本問題は、異なる体位が呼吸生理や誤嚥リスクに与える影響について問うています。特に、背臥位と腹臥位における上気道の開存性、換気血流比、機能的残気量、そして誤嚥リスクの違いを正確に理解しているかが鍵となります。理学療法士として患者の体位管理を行う上で不可欠な知識です。
混同注意
選択肢3の「機能的残気量が減少しやすい」は背臥位で起こる生理現象として正しい記述ですが、設問が「腹臥位と比較した場合の背臥位の特徴」とあり、かつより直接的な臨床的影響である誤嚥リスクを問う意図があるため、この文脈では誤嚥が正答となります。腹臥位でもFRCは減少しますが、誤嚥リスクの増大は背臥位に特有の重要な問題点です。また、換気血流比の変化(選択肢4, 5)に関する理解も混同しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
患者の病態(意識レベル、嚥下機能、呼吸状態など)に応じて、どの体位が最も適切であるかを判断できるようになる必要があります。例えば、誤嚥リスクが高い患者には側臥位や座位、呼吸状態が悪い患者にはファウラー位や腹臥位など、状況に応じた体位選択の根拠を説明できることが求められます。
関連知識
体位変換の目的(褥瘡予防、呼吸改善、循環改善、誤嚥予防)、人工呼吸管理における体位(腹臥位療法)、ARDSにおける腹臥位療法、睡眠時無呼吸症候群と体位、高齢者の嚥下障害と体位。