8か月の男児。脳性麻痺による痙直型四肢麻痺。腹臥位で図のような姿勢を示す。影響しているのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
痙直型四肢麻痺の乳児が腹臥位で示す屈曲位の姿勢異常は、緊張性迷路反射(TLR)の残存・亢進によって引き起こされます。TLRは、腹臥位で全身の屈筋緊張を亢進させ、伸筋活動を抑制するため、頭部が持ち上がりにくく、体幹や四肢が屈曲した姿勢を呈します。これは、正常であれば生後6ヶ月頃には減弱・消失する原始反射ですが、脳性麻痺児では持続することがあります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。緊張性迷路反射(TLR)は、頭部の位置(特に前後屈)によって全身の筋緊張が変化する反射です。腹臥位では屈筋緊張が亢進し、頭部を後屈させると伸筋緊張が亢進します。設問の図のような腹臥位で屈曲位をとり、頭部が持ち上がりにくい姿勢は、TLRの異常亢進によって説明されます。選びやすい理由:原始反射の知識があれば、他の選択肢も思い浮かびますが、設問の腹臥位での全体的な屈曲姿勢に最も関連が深いのがTLRです。混同注意:非対称性緊張性頸反射(ATNR)や対称性緊張性頸反射(STNR)など、他の原始反射と混同する可能性があります。これらは頸部の回旋や屈伸によって特定の肢位の筋緊張が変化しますが、TLRは頭部全体の前後屈が関与します。
- 2. 屈筋逃避反射は、足底に刺激が加わるとその刺激された足の股関節・膝関節・足関節が屈曲し、刺激から逃れようとする反射です。これは防御的な反射であり、持続的な腹臥位での姿勢異常とは直接関連しません。正しくは:腹臥位での姿勢異常ではなく、急性的な侵害刺激に対する反応です。選びやすい理由:「屈筋」という言葉が含まれるため、腹臥位での屈曲位の姿勢と関連付けてしまうかもしれません。混同注意:足底からの刺激に対する反応であり、全身の姿勢を規定する反射ではありません。
- 3. 非対称性緊張性頸反射(ATNR)は、頭部を左右どちらかに回旋させると、顔面を向けた側の上下肢が伸展し、後頭部側の上下肢が屈曲する反射です。設問は頭部を回旋させている状況ではないため、この反射が直接的な原因とは考えにくいです。正しくは:この反射は頭部回旋によって誘発され、全身の屈曲姿勢には直接結びつきません。選びやすい理由:原始反射としてよく知られており、脳性麻痺と関連するため選択しやすいですが、具体的な姿勢と反射の様式が一致しません。混同注意:緊張性迷路反射や対称性緊張性頸反射(STNR)など、他の姿勢反射と混同しやすいです。ATNRは頭部回旋がキーです。
- 4. Moro反射は、急激な体位変換や頭部の落下などによって、腕を広げて抱きつくような動きをする反射です。これは恐怖や驚きに対する反応であり、持続的な腹臥位での姿勢異常とは直接関連しません。正しくは:特定の刺激に対する一過性の反応であり、持続的な筋緊張の異常亢進とは異なります。選びやすい理由:原始反射として非常に有名で、乳児期に観察されるため選びやすいですが、提示された姿勢とは合致しません。混同注意:スタートル反射など、驚愕反応と混同しやすいです。
- 5. Landau反射は、腹臥位で体幹を水平に持ち上げたときに、頭部と下肢が伸展する反射です。この反射は生後4~5か月から出現し、発達とともに消失する姿勢反応です。設問の図は、むしろ屈曲位を示しており、Landau反射の様式とは逆の姿勢です。正しくは:Landau反射は正常な姿勢反応であり、頭部と下肢の伸展を伴います。設問の図とは逆の姿勢を示します。選びやすい理由:腹臥位での姿勢に関わる反射なので選びやすいかもしれませんが、反射の具体的な様式を理解していれば誤りと分かります。混同注意:その他の姿勢反射や立ち直り反応と混同しやすいです。Landau反射は体幹伸展が特徴です。
国試ポイント
脳性麻痺児にみられる原始反射の異常亢進が、どのような姿勢や運動パターンとして現れるかを理解しているかどうかが問われます。特に、各原始反射の具体的な誘発方法と反応様式、そしてそれがどのような機能障害につながるかを把握していることが重要です。
混同注意
非対称性緊張性頸反射(ATNR)や対称性緊張性頸反射(STNR)など、他の原始反射との区別が曖昧だと誤答しやすいです。それぞれの反射が関与する身体部位と運動様式を明確に区別する必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出た場合は、特定の姿勢や運動パターンが提示された際に、それがどの原始反射の残存・亢進、あるいはどの姿勢反応の発達遅延に関連しているかを判断する問題が考えられます。また、その反射がどのような動作の獲得を阻害するかを問う発展的な問題も出題される可能性があります。
関連知識
脳性麻痺の分類(痙直型、アテトーゼ型など)、各型の特徴的な運動障害、原始反射の種類と正常な出現・消失時期、立ち直り反応、平衡反応、保護伸展反応などの姿勢反応。