腹圧性尿失禁に対する筋力増強練習の対象で最も優先すべき筋群はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
腹圧性尿失禁は、腹圧が上昇した際に尿道の支持が低下したり、尿道括約筋の働きが不十分であったりすることで尿が漏れる状態を指します。骨盤底筋群は、尿道を締めたり(尿道括約作用)、尿道を支持したりする重要な役割を担っています。したがって、骨盤底筋群を強化することで、尿道の閉鎖圧を高め、腹圧上昇時の尿道の下降を防ぎ、尿失禁の症状を軽減または改善することができます。これが腹圧性尿失禁に対する筋力増強練習の最も優先すべき対象となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 腹筋群の強化は体幹の安定性や排便時に役立つことがありますが、腹圧性尿失禁の直接的な改善には繋がりません。むしろ、過度な腹圧上昇は尿失禁を悪化させる可能性もあります。正しくは:腹圧性尿失禁に対しては、腹筋群の過度な収縮を避けるような指導も重要です。選びやすい理由:「腹圧性」という言葉から、腹筋群が連想されやすいですが、腹圧性尿失禁の原因は尿道支持機能の低下であり、腹筋そのものの筋力不足ではありません。混同注意:体幹安定性や排便時の努力(腹圧上昇)との混同。
- 2. 殿筋群(大臀筋、中臀筋など)は股関節の伸展や外転に関与する筋肉であり、骨盤底筋群とは機能的に直接関連しません。したがって、腹圧性尿失禁の改善には直接寄与しません。正しくは:殿筋群の強化は歩行能力や姿勢の維持に重要ですが、尿失禁に対する主要な介入ではありません。選びやすい理由:骨盤周囲の筋肉であるため、関連があるように感じられるかもしれません。混同注意:骨盤周囲筋全体のリハビリテーションとの混同。
- 3. 正解。腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、運動などで腹圧が上昇した際に、尿道括約筋や尿道を支持する骨盤底筋群の機能不全によって尿が漏れる状態です。このため、骨盤底筋群を強化し、尿道閉鎖圧を高め、尿道への支持を向上させることが最も効果的な直接的介入となります。選びやすい理由:この選択肢が直接的かつ最も効果的な介入策であることを理解しているかどうかが問われています。混同注意:他の体幹筋群との役割の混同。
- 4. 脊柱起立筋群は脊柱の伸展や安定に関与し、姿勢保持に重要な役割を果たしますが、尿道閉鎖や尿道支持の直接的な機能はありません。腹圧性尿失禁の改善には直接的な効果は期待できません。正しくは:脊柱起立筋群は体幹の安定性を保つ上で重要ですが、腹圧性尿失禁治療の第一選択ではありません。選びやすい理由:体幹の深層筋であるため、骨盤底筋群と関連があるように誤解される可能性があります。混同注意:体幹深層筋全体の連携や姿勢保持の重要性との混同。
- 5. 股関節外旋筋群は股関節の運動に関与する筋肉であり、骨盤底筋群や尿道閉鎖機能とは直接的な関連がありません。腹圧性尿失禁の主要な改善目標ではありません。正しくは:股関節外旋筋群の強化は歩行やバランス能力に影響しますが、尿失禁の直接的な治療にはなりません。選びやすい理由:骨盤周囲の筋肉であるため、関連があるように感じられるかもしれませんが、機能は大きく異なります。混同注意:骨盤周囲の他の筋肉群との機能的な役割の混同。
国試ポイント
腹圧性尿失禁の病態生理と、それに対するリハビリテーション介入の最も基本的な原則を理解しているか問う問題です。特に、どの筋肉群が直接的な治療ターゲットとなるかを正確に把握しているかが重要です。直接的な原因と対策を結びつける能力が試されます。
混同注意
「腹圧性」という言葉から腹筋群を選んでしまう誤解や、骨盤周囲の他の筋肉(殿筋群、股関節外旋筋群)との機能的な混同。また、体幹の安定に関わる他の深層筋(脊柱起立筋など)との役割の区別が曖昧になることがあります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、腹圧性尿失禁だけでなく、切迫性尿失禁や溢流性尿失禁など他の尿失禁の病態と、それぞれのタイプに対するリハビリテーション(薬物療法や生活指導も含む)の適切な介入策について問われる可能性があります。また、骨盤底筋訓練の具体的な方法や効果についても深く問われるかもしれません。
関連知識
女性の腹圧性尿失禁の主な原因は、出産や加齢による骨盤底筋群の弱体化や、結合組織の脆弱化です。治療法としては、骨盤底筋訓練が第一選択となります。その他、生活習慣の指導(体重管理、便秘解消など)や薬物療法、手術療法があります。また、電気刺激療法やバイオフィードバック療法なども補助的に用いられます。