手根管症候群の典型的な所見として正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
手根管症候群は、手関節にある手根管内で正中神経が圧迫されることで生じる絞扼性神経障害です。正中神経は母指、示指、中指、および環指の橈側半分(掌側)の感覚を支配し、母指球筋群(短母指外転筋、母指対立筋、短母指屈筋の一部)の運動を支配しています。したがって、正中神経麻痺の進行により、母指球筋の萎縮が起こり、母指を他の指から離す(外転)動きや、母指と小指を向かい合わせる(対立)動きが制限されます。この母指球筋の萎縮によって、手が平坦になり、親指の付け根が痩せた状態が「猿手」と呼ばれ、手根管症候群の典型的な所見の一つとされています。選択肢2、4、5は尺骨神経麻痺の所見であり、選択肢3は手根管症候群に特異的な症状ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。手根管症候群では正中神経が圧迫されるため、その支配領域である母指球筋(短母指外転筋、母指対立筋、短母指屈筋の一部)の萎縮が起こり、「猿手」と呼ばれる形態を呈することがあります。これは手根管症候群の進行した典型的な所見です。
- 2. 手の骨間筋は主に尺骨神経に支配されています。手根管症候群は正中神経の障害であるため、骨間筋の萎縮は典型的な所見ではありません。正しくは:母指球筋の萎縮選びやすい理由:手の筋肉が萎縮するという点で、一般的な神経障害と関連付けやすいが、どの神経支配かを考慮していないと誤りやすい。混同注意:正中神経と尺骨神経の支配領域、特に手の内在筋の支配を混同しやすい。
- 3. 前腕回内時の疼痛は、手根管症候群の主要な症状ではありません。手根管症候群では、正中神経の圧迫による母指から環指橈側にかけてのしびれや痛み、母指球筋の筋力低下が主な症状です。回内時の痛みは、他の上肢の疾患(例: 肘関節や前腕の筋肉・腱の問題)で起こりえます。正しくは:母指から環指橈側のしびれや夜間痛選びやすい理由:上肢の疼痛という点では共通するが、特定の動作での疼痛は他の部位の障害を示唆することが多く、手根管症候群の直接的な症状ではないことを判断する必要がある。混同注意:上肢全体の神経・運動器疾患による疼痛と混同しやすい。手根管症候群は圧迫部位が特定されており、それに対応した症状が出ることの理解が重要。
- 4. Froment徴候は、尺骨神経麻痺を評価するためのテストです。母指の内転動作において、母指内転筋の筋力低下を代償するために母指IP関節が過屈曲する現象を指します。手根管症候群は正中神経の障害であるため、この徴候は陽性にはなりません。正しくは:Tinel(ティネル)徴候やPhalen(ファーレン)徴候が陽性選びやすい理由:神経障害の特定の徴候であるため、他の神経障害と関連付けやすいが、どの神経の障害を評価する徴候であるかを正確に覚えていないと誤る。混同注意:各種神経麻痺で陽性となる検査法(Tinel、Phalen、Froment、Wartenbergなど)とその対象神経を混同しやすい。
- 5. 環指の尺側半分と小指は主に尺骨神経の支配領域です。手根管症候群は正中神経の圧迫による障害であり、感覚障害は母指、示指、中指、および環指の橈側半分に生じます。正しくは:母指から環指橈側半分の感覚障害選びやすい理由:手の感覚障害という点で関連付けやすいが、神経支配領域を正確に理解していないと誤る。混同注意:正中神経と尺骨神経の感覚支配領域を混同しやすい。
国試ポイント
手根管症候群の病態を理解し、その典型的な症状や身体所見が正中神経の支配領域と一致するかどうかを問う問題です。特に、正中神経麻痺と尺骨神経麻痺の鑑別、およびそれぞれの神経支配領域や特徴的な徴候を正確に覚えているかが問われます。
混同注意
正中神経麻痺と尺骨神経麻痺の症状、支配領域、陽性となる検査(Froment徴候は尺骨神経麻痺、Tinel・Phalen徴候は手根管症候群/正中神経麻痺)。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出た場合、まず「どの神経の障害か」を特定し、その神経の「感覚支配領域」「運動支配筋」「特徴的な神経徴候」の3点に注目して選択肢を検討しましょう。
関連知識
手根管症候群の他の典型的な症状には、夜間や明け方に増強する手指のしびれや痛み(特に母指〜環指橈側)、物の把持困難、タッピングテスト(Tinel徴候)やPhalenテストの陽性などがあります。鑑別疾患としては、頚椎症性神経根症、胸郭出口症候群、末梢神経炎などが挙げられます。