理学療法士が下肢を固定し、体幹の前屈を行わせた状態を図1に示す。次に図2のように固定位置を変更して体幹前屈を行わせたところ、体幹前傾角度に違いがみられた。この違いが生じた原因として、最も筋力低下が疑われる筋はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
膝関節を伸展位で固定した体幹前屈(股関節屈曲)において、体幹前傾角度が制限される原因として、ハムストリングスの伸張性低下がよく挙げられます。しかし、この問題は『筋力低下が疑われる筋』を尋ねており、固定位置の変更(膝伸展位と屈曲位)による体幹前傾角度の『違い』に注目しています。膝伸展位での体幹前屈時に、大腿四頭筋、特に大腿直筋が股関節屈筋としての役割も持つことを考慮すると、その筋力低下が体幹前傾角度に影響を及ぼす可能性があります。また、膝伸展位での体幹前屈では、骨盤の安定性が重要であり、大腿四頭筋が膝関節を安定させながら、体幹前傾運動を補助する役割も担います。大腿四頭筋の筋力低下がある場合、この安定性が損なわれ、体幹前傾角度に違いが生じる原因となり得ます。ハムストリングスは伸張性の問題が主であり、筋力低下ではないため、この文脈では大腿四頭筋が最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 腹直筋は体幹を屈曲させる主働筋であり、その筋力低下は体幹の前屈角度を減少させる可能性はありますが、下肢の固定位置の変化による体幹前傾角度の違い、特に股関節と膝関節の相対的な動きの変化を説明するには不適切です。この問題で問われているのは、下肢固定位置の違い(特に膝関節の伸展位と屈曲位)が体幹前屈に与える影響です。正しくは:腹直筋の筋力低下は、体幹前屈そのものの可動域減少に関与しますが、股関節と膝関節の連動性によって生じる体幹前傾角度の変化とは直接結びつきにくいです。選びやすい理由:体幹の屈曲に関わる筋肉であるため、一見関係があるように思えるかもしれませんが、膝関節の固定位置と直接的な関連は薄いです。混同注意:体幹の屈曲運動と混同しやすいですが、この問題は「下肢の固定位置変更による体幹前傾角度の変化」というより特定の状況を問うています。
- 2. 腸腰筋は股関節の屈曲に深く関与する筋肉ですが、体幹の前屈運動において、下肢固定位置(特に膝関節の伸展/屈曲)の違いが体幹前傾角度に与える影響の主要な原因ではありません。この問題は、膝関節の伸展位と屈曲位での体幹前屈角度の違いに着目しており、その違いを説明するには、膝関節の動きに直接関わる筋肉が適切です。正しくは:腸腰筋は股関節屈曲に重要ですが、膝関節の固定位置が体幹前傾角度に与える影響を直接説明する筋肉ではありません。選びやすい理由:股関節周辺の主要な筋肉であるため、選択肢として考慮されやすいですが、膝関節の固定位置の条件がポイントです。混同注意:股関節屈曲筋群と混同しやすいですが、膝関節の動きとの関連を重視する必要があります。
- 3. 正解。下肢固定(特に膝関節の伸展位と屈曲位)の状態での体幹前屈運動において、膝関節を伸展させる大腿四頭筋の機能が重要になります。膝が伸展位で固定されている場合、ハムストリングスの伸張性が制限要因となり、体幹前屈に影響を与えますが、体幹前傾角度の違いを生じさせる主要因ではありません。一方、膝関節が伸展位から屈曲位に変わることで、大腿四頭筋(特に大腿直筋)の緊張が変化し、それが骨盤の安定性や体幹前傾角度に影響を与える可能性があります。特に、膝伸展位での体幹前屈時に体幹前傾角度が制限されるのは、ハムストリングスの伸張性低下が原因となることが多いですが、この問題は「固定位置変更による違い」に注目しており、膝関節伸展位での体幹前傾(股関節屈曲)を妨げる筋として、大腿四頭筋の筋力低下が疑われると考えることができます。具体的には、股関節屈曲に伴う骨盤後傾を制御するために、大腿四頭筋の遠心性収縮が重要な役割を果たす場合があります。また、膝関節を伸展位に保ちながら体幹前屈を行う場合、ハムストリングスと大腿四頭筋の協調的な働きが求められます。膝伸展位での体幹前屈では、ハムストリングスの伸張性が体幹前傾角度の制限因子となることが多いですが、この設問の意図としては、下肢の固定位置変更(膝関節伸展/屈曲)が体幹前傾角度に与える影響を問うていると解釈できます。膝伸展位での体幹前屈が困難になるのは、ハムストリングスの柔軟性不足が主ですが、それを克服しようとすることで大腿四頭筋に過剰な負荷がかかる、あるいは膝伸展位の保持能力が低下していると考えることもできます。特に、膝伸展位での体幹前屈時に大腿四頭筋の筋力低下があると、膝関節が固定されていても骨盤の安定性が損なわれ、体幹前傾角度に影響を及ぼす可能性があります。膝関節が伸展位で固定されている場合、股関節の屈曲運動(体幹前傾)をスムーズに行うためには、ハムストリングスの柔軟性だけでなく、大腿四頭筋が膝関節伸展位を安定させながら体幹を前傾させる役割も間接的に果たします。もし大腿四頭筋の筋力低下がある場合、膝関節伸展位での体幹前屈時に、膝関節を安定させることが難しくなり、その結果として体幹前傾角度が制限される可能性があります。また、特に大腿直筋は股関節屈筋でもあり、膝伸展位で股関節屈曲(体幹前傾)を行う際に、股関節をまたぐ二関節筋としてその機能が影響を及ぼす可能性があります。正しくは:大腿四頭筋は膝関節を伸展させ、股関節を屈曲させる(大腿直筋)。膝関節伸展位での体幹前屈時、ハムストリングスの伸張性が体幹前傾角度の制限因子となることが多いが、同時に大腿四頭筋が膝関節を安定させ、骨盤の安定性に関与し、体幹前傾運動を補助する役割も果たす。筋力低下があると、その安定性が損なわれ、体幹前傾角度に影響を及ぼす。選びやすい理由:ハムストリングスの問題と混同しやすいが、この問題は「下肢の固定位置変更による体幹前傾角度の違い」を問い、特に膝伸展位での体幹前傾に影響を与える可能性のある筋として考慮される。混同注意:ハムストリングスによる伸張性制限と混同しやすい。この問題は、単純な可動域制限ではなく、固定位置変更による「違い」に着目しているため、膝関節伸展位での安定性や補助的な役割を担う大腿四頭筋の機能低下を疑うのが適切。
- 4. ハムストリングスの筋力低下ではなく、その『伸張性の低下』が膝関節伸展位での体幹前屈角度(股関節屈曲角度)を制限する主要因です。しかし、この問題は「筋力低下が疑われる筋」を尋ねており、固定位置の変更(膝関節伸展位から屈曲位へ)によって体幹前傾角度に違いが生じた場合、ハムストリングスの伸張性が主な原因であれば、それは「筋力低下」として直接表現されるものではありません。筋力低下が体幹前傾角度に影響を与えるというより、伸張性不足が可動域を制限します。正しくは:ハムストリングスの筋力低下は膝関節屈曲や股関節伸展に影響しますが、体幹前屈時における体幹前傾角度の違いは、主にハムストリングスの伸張性(柔軟性)の不足によって生じます。選びやすい理由:膝関節伸展位での体幹前屈制限の最も一般的な原因であるため、すぐに選んでしまいがちですが、問われているのは「筋力低下」であり、「伸張性不足」ではありません。混同注意:ハムストリングスの『筋力低下』と『伸張性低下』を混同しやすい。体幹前屈の制限は主に後者の問題です。
- 5. 前脛骨筋は足関節の背屈に関与する筋肉であり、体幹の前屈運動における下肢の固定位置(膝関節伸展位と屈曲位)の変化による体幹前傾角度の違いには直接的に関与しません。この筋肉の筋力低下が、体幹前傾角度に有意な違いをもたらすとは考えにくいです。正しくは:前脛骨筋の筋力低下は足関節の背屈に影響しますが、体幹前屈時の体幹前傾角度には直接的な影響は少ないです。選びやすい理由:下肢の筋肉であるため、選択肢として検討されるかもしれませんが、体幹前屈運動や膝関節の固定位置との関連性が非常に薄いです。混同注意:足関節の運動に関わる筋肉であり、体幹や股関節、膝関節の連動性とは直接結びつきにくいです。
国試ポイント
下肢固定下での体幹前屈運動における、各筋肉の機能解剖学的な役割と、膝関節の固定位置が体幹前傾角度に与える影響を理解しているか。特に『筋力低下』という言葉と『伸張性低下』の違いを明確に区別できているかが問われる。
混同注意
ハムストリングスの筋力低下と伸張性低下。膝関節伸展位での体幹前屈制限の一般的な原因がハムストリングスの伸張性低下であるため、誤って選択しやすい。しかし、設問は『筋力低下』を問うている。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず『問われているのが筋力低下か、伸張性低下か』を明確に区別すること。次に『下肢の固定位置(特に膝関節の伸展・屈曲)の変更』が、どの筋肉の機能に最も影響を及ぼすかを、二関節筋の特性を含めて考えること。
関連知識
体幹-骨盤-股関節複合体の運動連鎖、二関節筋の機能(大腿直筋、ハムストリングス)、閉鎖運動連鎖と開放運動連鎖における筋活動の違い。特に、スクワットなどの下肢固定下での運動では、大腿四頭筋とハムストリングスの協調性が重要となる。