Daniels らの徒手筋力テストの結果を表に示す。表以外の筋に異常はみられない。関節可動域はすべて正常範囲である。通常速度で直線歩行したときに予想されるのはどれか。
| 筋 | 右 | 左 |
|---|---|---|
| 中殿筋 | 5 | 4 |
| ハムストリングス | 3 | 5 |
| 前脛骨筋 | 5 | 4 |
| 下腿三頭筋 | 2 | 4 |

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
右ハムストリングスの筋力低下(MMT3)により、右遊脚後期から立脚初期にかけて膝関節の屈曲が十分に保たれず、膝関節が過伸展する傾向がみられます。これは大腿四頭筋優位またはハムストリングス麻痺による反張膝歩行の一種であり、膝関節の安定性低下による代償運動です。
選択肢ごとの解説
- 1. 左の踵足歩行は、左の前脛骨筋の筋力低下(MMT4は軽度低下だが、MMT2-3レベルでより顕著)により足関節の背屈が困難になることで生じますが、表では左の前脛骨筋はMMT4であり、重度の踵足歩行を呈するほどではありません。また、下腿三頭筋の麻痺(尖足)の代償として踵足歩行が生じることもありますが、左下腿三頭筋はMMT4と比較的良好です。正しくは:左の前脛骨筋がMMT2以下であった場合に左の踵足歩行が予想されます。選びやすい理由:左前脛骨筋のMMTが4とやや低下しているため、足関節の異常を疑いやすいため。混同注意:前脛骨筋の筋力低下による下垂足と、下腿三頭筋の筋力低下による踵足。
- 2. 右の尖足歩行は、右前脛骨筋の筋力低下により足関節の背屈が困難になることで生じますが、表では右の前脛骨筋はMMT5であり、筋力低下はありません。右下腿三頭筋はMMT2と著しい筋力低下がありますが、これは尖足(足関節底屈位)ではなく、むしろ踵足(足関節背屈位)を呈しやすくなります。正しくは:右の前脛骨筋がMMT2以下であった場合に右の尖足歩行が予想されます。選びやすい理由:右下腿三頭筋の筋力低下(MMT2)が著しいため、足関節の異常を疑いやすいですが、底屈筋の低下は尖足ではなく踵足につながります。混同注意:前脛骨筋の麻痺による尖足歩行と、下腿三頭筋の麻痺による踵足歩行。
- 3. 左遊脚中期の分回しは、主に股関節屈筋群の筋力低下(特に腸腰筋)や、膝関節・足関節の動きの制限がある場合に、下肢全体を外転・外旋させて振り回すような歩行です。表からは左股関節屈筋群の筋力低下を示す所見はなく、左の中殿筋はMMT4と軽度低下ですが、これはTrendelenburg徴候につながりやすいです。関節可動域はすべて正常範囲であると記載されています。正しくは:左の股関節屈筋群の著しい筋力低下や、左膝関節の可動域制限があった場合に左遊脚中期の分回しが予想されます。選びやすい理由:左中殿筋がMMT4と低下しているため、何らかの異常歩行を疑いやすいですが、分回し歩行の主な原因とは異なります。混同注意:中殿筋の筋力低下によるTrendelenburg徴候と、股関節屈筋群や下肢全体の硬直・麻痺による分回し歩行。
- 4. 右のTrendelenburg徴候は、右の中殿筋の筋力低下により立脚期に骨盤が対側(左側)に傾くことで生じます。表では右の中殿筋はMMT5と正常筋力であり、右のTrendelenburg徴候は予想されません。左の中殿筋はMMT4と軽度低下があるため、左立脚期に右に骨盤が傾く、すなわち左のTrendelenburg徴候が生じる可能性があります。正しくは:左の中殿筋の筋力低下(MMT4)があるため、左のTrendelenburg徴候が予想されます。選びやすい理由:中殿筋の筋力低下が両側にあるため、Trendelenburg徴候を疑いやすいですが、左右を誤って選択してしまう可能性があります。混同注意:中殿筋の筋力低下によるTrendelenburg徴候における、患側と骨盤傾斜の方向の関係。
- 5. 正解。右ハムストリングスの筋力はMMT3と著しく低下しています。ハムストリングスは遊脚後期に膝関節の屈曲を制動し、また立脚初期の衝撃吸収にも関与します。この筋力低下により、遊脚後期から立脚初期にかけて膝関節の屈曲が十分に保てず、膝関節が過伸展する傾向(反張膝歩行)が起こりやすくなります。選びやすい理由:他の選択肢の誤りを見つけにくい場合、残った選択肢を選んでしまう可能性があります。しかし、右ハムストリングスMMT3は膝関節過伸展歩行の典型的な原因となるため、これを正確に理解していれば正答できます。混同注意:ハムストリングスの筋力低下による膝関節の安定性低下と、大腿四頭筋の麻痺や膝関節伸展拘縮による反張膝歩行との区別。
国試ポイント
徒手筋力テスト(MMT)の結果から、各筋の機能と歩行における役割を理解し、典型的な異常歩行を推測できるか。
混同注意
筋力低下の左右差と歩行の左右差。例えば、右の筋力低下が直接的に右の異常歩行に繋がる場合と、左の代償運動として右の異常歩行が生じる場合を混同しない。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まずMMTの数値が低い筋を特定し、その筋が歩行周期のどの相で、どのような役割を担っているかを思い出し、その機能不全によって生じる典型的な歩行異常を判断します。
関連知識
各筋のMMT評価基準、歩行周期における各関節の動きと主要筋の働き、主な異常歩行の原因と特徴。特に、ハムストリングスの機能不全が膝の安定性に与える影響。