42歳の男性。スキーの滑走中に転倒し、腕神経叢の図に示す部位を損傷した。前腕外側(橈側)と手の掌側の母指から環指に感覚鈍麻がある。筋力低下をきたす筋はどれか。2つ選べ。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・5番
解説
この問題では、損傷部位を示す図と、前腕外側橈側、手の掌側の母指から環指にかけての感覚鈍麻という情報が与えられています。前腕外側橈側の感覚鈍麻は筋皮神経(外側前腕皮神経)の支配領域であり、手の掌側の母指から環指の感覚鈍麻は正中神経の支配領域です。これらの神経は腕神経叢の外側神経束から主に派生するため、損傷部位が外側神経束、または外側神経束が関与する部分であると推測されます。1. 円回内筋は正中神経支配であり、5. 上腕二頭筋は筋皮神経支配であるため、どちらも筋力低下をきたす可能性があります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。円回内筋は正中神経に支配されており、腕神経叢の図に示す損傷部位(外側神経束、内側神経束の一部、またはそれらが合流した正中神経の根元)によって影響を受け、筋力低下をきたす可能性があります。選びやすい理由:上肢の重要な回内筋であり、正中神経麻痺で影響を受けるため。混同注意:尺骨神経支配の筋や橈骨神経支配の筋と混同しやすいですが、感覚障害の範囲から正中神経の損傷が示唆されます。
- 2. 三角筋は腋窩神経に支配されており、今回の腕神経叢損傷の感覚障害範囲(前腕外側橈側と手掌の母指から環指)とは関連性が低いです。腋窩神経の障害は、主に肩の運動機能と肩部の感覚に影響します。正しくは:三角筋は肩関節の外転や屈曲、伸展に関与しますが、この感覚障害パターンとは直接結びつきません。選びやすい理由:肩関節周辺の大きな筋肉であるため、漠然と上肢の神経損傷で影響を受けると誤解されやすいです。混同注意:他の肩関節周囲の神経支配筋(例:棘上筋、棘下筋など)と混同したり、腕神経叢全体の広範な損傷と誤解したりすることがあります。
- 3. 小指外転筋は尺骨神経に支配されており、感覚鈍麻の範囲が『手の掌側の母指から環指』とあることから、主に正中神経領域の障害が示唆されます。小指外転筋の筋力低下は、通常、尺骨神経の損傷でみられます。正しくは:小指外転筋は尺骨神経の最終枝によって支配されます。もし感覚鈍麻が小指側だった場合は選択肢として適切になります。選びやすい理由:手の筋肉であるため、手の感覚鈍麻と結びつけやすいですが、支配神経が異なります。混同注意:正中神経支配の母指球筋群と、尺骨神経支配の小指球筋群を混同しやすいです。
- 4. 上腕三頭筋は橈骨神経に支配されており、今回の感覚障害の範囲(前腕外側橈側と手掌の母指から環指)とは異なります。橈骨神経の損傷は、通常、前腕の伸筋群や手の背側の感覚に影響します。正しくは:上腕三頭筋は肘関節の伸展を担います。橈骨神経麻痺で影響が出ます。選びやすい理由:上肢の主要な筋肉であるため、広範囲な神経損傷で影響を受けると考える可能性があります。混同注意:正中神経支配の上腕二頭筋など、他の上腕の筋群と混同しやすいです。
- 5. 正解。上腕二頭筋は筋皮神経に支配されており、筋皮神経は腕神経叢の外側神経束から分岐します。下図の損傷部位が外側神経束を含んでいる場合、上腕二頭筋の筋力低下をきたす可能性があります。また、前腕外側橈側の感覚鈍麻も筋皮神経の分枝である外側前腕皮神経の領域であり、これと一致します。選びやすい理由:上腕の主要な屈筋であり、この領域の損傷であれば筋力低下が起こりうるため。混同注意:上腕三頭筋(橈骨神経支配)や、別の神経が支配する上腕の筋肉と混同しやすいですが、感覚障害のパターンが重要なヒントです。
国試ポイント
腕神経叢の解剖学的知識と、各神経の支配筋、支配感覚領域を結びつける能力が問われます。特に、感覚障害の部位から損傷神経を特定し、その神経が支配する筋肉を選ぶパターンが頻出です。画像から損傷部位を読み取る力も重要です。
混同注意
各神経(筋皮神経、腋窩神経、橈骨神経、正中神経、尺骨神経)の支配筋と感覚領域を混同しやすいです。特に、上肢の広範囲にわたる神経の複雑な走行と枝分かれを正確に理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず感覚障害の範囲からどの末梢神経が損傷している可能性が高いかを特定します。次に、その神経が腕神経叢のどの部位(神経束など)から派生しているかを確認し、図示された損傷部位と照合します。最後に、その損傷した神経が支配する筋肉を選択肢の中から選びます。
関連知識
腕神経叢の構成(神経根、神経幹、神経束、末梢神経)、各神経束から分枝する末梢神経、各末梢神経の運動支配と感覚支配。特に外側神経束からは筋皮神経と正中神経の外側根が、内側神経束からは尺骨神経と正中神経の内側根、内側前腕皮神経、内側上腕皮神経が、後神経束からは腋窩神経と橈骨神経が派生することを理解しておく必要があります。