75歳の男性。右変形性股関節症で歩行時に疼痛の訴えがあった。歩行時床反力の垂直分力(両側)を図に示す。右大腿直筋が活動する期はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1・5番(いずれも正解)
解説
【公式の取扱い】この問題は1つを選ぶ形式ですが、公式の正答表では1・5のいずれも正解とされています。 大腿直筋は二関節筋であり、股関節の屈曲と膝関節の伸展に作用します。歩行周期におけるその主な活動は、荷重応答期(初期二峰性の最初のピーク付近)と遊脚終期に認められます。荷重応答期(①)では、下肢の衝撃吸収のために膝関節の屈曲を遠心性に制御し、股関節の安定化に関与します。遊脚終期(⑤)では、次の立脚期に備えて下肢を準備するため、股関節の屈曲を減速させながら膝関節を伸展させる目的で活動します。したがって、これらの時期に大腿直筋の活動が高まります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。大腿直筋は股関節屈曲と膝関節伸展の両方に作用する二関節筋であり、歩行周期の荷重応答期(初期二峰性の1つ目のピーク周辺、立脚初期)では、股関節の屈曲モーメントを制御しながら膝関節の屈曲を抑制し、下腿の衝撃吸収に貢献するため活動します。また、遊脚終期(②と③の間、pre-swingの後半から初期遊脚期)から初期遊脚期(acceleration phase)にかけて、股関節の屈曲と膝関節の伸展を助けるために活動が高まります。図の①の期間は、荷重応答期から立脚中期にかけての初期の垂直床反力ピークを含む時期に相当し、大腿直筋が遠心性収縮や求心性収縮で活動する重要な期間です。選びやすい理由:歩行周期の生理学的知識を正確に理解していれば、正しい選択肢として選べます。混同注意:他の大腿四頭筋の作用や、股関節屈筋群の作用と混同しやすいかもしれません。
- 2. この時期は、立脚中期から後期にかけての垂直床反力が比較的低い、いわゆる谷の時期に相当します。この時期は大腿直筋の活動は比較的低くなります。主に重心の上昇を促す役割があり、下腿三頭筋などの足関節底屈筋群の活動が優位になります。正しくは:②の時期は大腿直筋の活動は低下し、下腿三頭筋の活動が優位になります。選びやすい理由:床反力の変化が大きい時期と関連付けてしまいやすいかもしれません。混同注意:床反力パターン全体の解釈と、個々の筋活動のタイミングの関連性を誤解しやすいです。
- 3. この時期は、立脚後期から前遊脚期にかけての垂直床反力の二つ目のピーク(プッシュオフ期)を示します。この時期は大腿直筋よりも下腿三頭筋の活動が最大となり、地面を蹴り出す動作に関与します。大腿直筋は次の遊脚期への準備のために活動を開始しますが、ピーク時の活動は低いとされています。正しくは:③の時期は下腿三頭筋の活動が最大となり、大腿直筋の活動は低い時期です。選びやすい理由:二つ目のピークであるため、何らかの大きな筋活動があると推測してしまいやすいです。混同注意:下腿三頭筋のプッシュオフの役割と、大腿直筋の遊脚期への準備活動を混同しやすいです。
- 4. この時期は、遊脚中期(mid-swing)に相当し、下肢が振り子のように前方に加速している期間です。大腿直筋は遊脚後期に活動しますが、遊脚中期は主に股関節屈筋群が股関節を屈曲させ、膝関節は重力により屈曲します。大腿直筋の活動は低いか、ほとんどありません。正しくは:④の時期は大腿直筋の活動は低いか、ほとんどありません。主に股関節屈筋群が活動します。選びやすい理由:遊脚期全体で大腿直筋が活動すると誤解しやすいです。混同注意:遊脚期の異なるフェーズでの筋活動パターンを混同しやすいです。
- 5. 正解。大腿直筋は遊脚終期(terminal swing)に活動が高まります。この時期は、下肢が振り出しの最終段階に入り、次の立脚期に向けて股関節の屈曲を減速させ、膝関節を伸展させて接地準備を行うため、大腿直筋が遠心性収縮によって膝関節の伸展を制御し、求心性収縮によって股関節の屈曲を助けることで、適切に足を前方に振り出して設置に備えます。これは垂直床反力が再度上昇し始める直前の、初期接地に向けて下肢を準備する期間に当たります。選びやすい理由:遊脚期の運動学・キネシオロジーを理解していれば、正しい選択肢として選べます。混同注意:他の膝関節伸展筋群(内側広筋、外側広筋、中間広筋)との役割の違いや、ハムストリングスなどの拮抗筋との協調性を混同しやすいかもしれません。
国試ポイント
歩行の運動学と筋電図学に関する知識が問われています。特に、二関節筋である大腿直筋が歩行周期のどのフェーズで、どのような目的で活動するかを正確に理解しているかが重要です。床反力曲線と筋活動の関連を理解し、グラフの各セクションが歩行周期のどのフェーズに相当するかを識別する能力も必要です。
混同注意
大腿直筋の活動を、他の大腿四頭筋(単関節筋)や、ハムストリングス(二関節筋で拮抗筋)の活動と混同しやすいです。また、床反力曲線のピークと谷が必ずしも筋活動の最大値を示すわけではない点を誤解しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の問題が出た場合は、以下の点に注目して判断しましょう。 1. 設問の筋が二関節筋か単関節筋かを確認する。 2. 各選択肢の時期が歩行周期のどのフェーズに当たるかを把握する。 3. そのフェーズで、当該筋が遠心性収縮・求心性収縮のどちらで、どのような役割を果たすかを想起する。 4. 床反力曲線は、特定の筋活動と直接的に一致するとは限らず、複数の筋や関節モーメントの総和として捉える。
関連知識
歩行周期の各フェーズ(立脚相:IC, LR, MSt, TSt, PSw、遊脚相:ISw, MSw, TSw)、床反力垂直分力の典型的なカーブ(二峰性)、主要筋群(大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋、前脛骨筋など)の活動タイミングと役割。