65歳の女性。左変形性股関節症。3年前からの左股関節痛に対して、後方進入法で人工股関節置換術を受けた。術後のX線写真(別冊No. 1)を別に示す。手術後3週までの患側下肢に対する理学療法で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
人工股関節全置換術後、特に翌日から筋力増強運動(等尺性収縮など)を開始することは、早期の機能回復、筋力維持、深部静脈血栓症の予防に不可欠です。この時期に免荷や長期安静を強いられると、廃用症候群や合併症のリスクが増大します。脱臼肢位への注意は必要ですが、適切な範囲での運動は積極的に行われます。
選択肢ごとの解説
- 1. 一般的に人工股関節全置換術後の荷重は、早期から部分荷重を開始し、骨頭固定型であれば術翌日から全荷重を行う場合が多いです。術後3週間の免荷は、股関節の機能回復を遅らせる可能性があります。正しくは:術後のリハビリテーションでは、患者の状態に応じて早期からの部分荷重、または全荷重を許可します。選びやすい理由:骨癒合やインプラントの安定を重視しすぎると、早期免荷が安全であると誤解しやすいです。混同注意:過去の人工関節置換術の概念や、股関節周辺の骨折などと混同しやすいです。変形性股関節症に対するTHAでは、ステムの固定性から早期荷重が推奨されます。
- 2. 人工股関節全置換術では、術後の合併症(深部静脈血栓症など)予防と早期機能回復のため、早期離床が重要とされています。術翌日から座位や起立、歩行訓練を開始することが一般的です。正しくは:術後早期(通常は翌日)からベッドサイドでの活動や離床を開始します。選びやすい理由:手術の侵襲が大きいという認識から、安静期間を長く取るのが安全だと考えがちです。混同注意:他の重篤な手術や、高齢者の安静期間に関する一般的なイメージと混同しやすいです。THAでは早期離床が標準です。
- 3. 正解。人工股関節全置換術後、特に翌日からは、周囲筋の廃用性萎縮を防ぎ、股関節の安定性を高めるために、大腿四頭筋や臀筋などの等尺性収縮運動を中心に筋力増強運動を開始するのが一般的です。これにより、早期の機能回復と合併症予防が図られます。正しくは:選択肢の記述は正しいです。
- 4. 後方進入法による人工股関節全置換術では、股関節の過度な屈曲・内転・内旋の複合運動が脱臼肢位とされます。立ち上がり動作で内旋位を取ると、この脱臼肢位に近づき、脱臼のリスクが高まります。正しくは:立ち上がり動作は、股関節の屈曲を控えめにし、内転・内旋を避けた肢位で行います。外転位や軽度外旋位が推奨されます。選びやすい理由:動きやすさを優先すると、無意識に内旋位を取ってしまう場合があります。また、術後の可動域制限を気にしすぎて、不適切な代償動作につながる可能性もあります。混同注意:関節を動かすこと自体は良いことと捉えがちですが、脱臼肢位の禁忌を無視してはいけません。
- 5. 後方進入法による人工股関節全置換術後の脱臼予防では、股関節の『過度な屈曲』が禁忌とされますが、一般的には90度以上(または90度を超える屈曲)が危険肢位と認識されています。45度は日常生活動作に必要な範囲であり、この制限は厳しすぎ、活動を著しく制限し、機能回復を妨げます。正しくは:術後、特に後方進入法の場合は、股関節の屈曲を90度以内にとどめるように指導します。日常生活動作に必要な45度程度の屈曲は許容されます。選びやすい理由:脱臼を恐れるあまり、過剰な可動域制限を設けてしまいがちです。制限が厳しいほど安全だと誤解しやすいです。混同注意:他の進入法(前方進入法など)の禁忌肢位や、股関節周囲骨折など、脱臼リスクが非常に高い病態の制限と混同しやすいです。
国試ポイント
人工股関節全置換術(THA)後の理学療法における、術後早期の運動療法や荷重、脱臼予防のための禁忌肢位に関する知識が問われています。特に後方進入法での脱臼肢位と、早期離床・早期運動の重要性がポイントです。X線写真は、問題文が変形性股関節症に対するTHAであることを示すものであり、個別の所見を細かく読み解く必要は今回の問題では低いです。
混同注意
THA後のリハビリテーションは、進入法(前方、後方、側方など)によって脱臼予防の禁忌肢位が異なります。また、骨折後のリハビリテーションと混同し、免荷期間を長く設定しがちですが、THAではインプラントの安定性から早期荷重・早期運動が原則です。
次に同じ論点が出たら
THA後のリハビリテーション計画を立案する際、進入法による禁忌肢位の違いを理解しているか。また、術後の合併症予防(特に深部静脈血栓症や廃用症候群)のために早期介入の重要性を認識しているか。
関連知識
人工股関節全置換術後のリハビリテーションプロトコル、各進入法における脱臼肢位、荷重の段階的導入、深部静脈血栓症の予防、廃用症候群の予防、日常生活指導(ADL指導)。