便秘を最も生じやすい薬剤はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
モルヒネのようなオピオイド系鎮痛薬は、消化管壁に存在するオピオイド受容体に結合することで、腸管の蠕動運動を著しく抑制します。これにより、腸内容物の通過時間が延長し、便から水分が過剰に吸収されるため、硬い便となって排便困難(便秘)を引き起こします。これはオピオイド使用時の主要な副作用の一つであり、「オピオイド誘発性便秘」として知られています。他の選択肢に挙げられているグリセリン、センノシド、ラクツロース、酸化マグネシウムは、いずれも便秘を治療・改善するために使用される下剤であり、作用機序は異なりますが、便秘を誘発する薬剤ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。モルヒネをはじめとするオピオイド系鎮痛薬は、消化管の蠕動運動を抑制する作用があるため、重度の便秘を誘発しやすい薬剤です。これは腸管に存在するオピオイド受容体に作用することによります。
- 2. グリセリンは坐薬や浣腸液として用いられ、直腸内で浸透圧作用により便を軟化させ、排便を促進する薬剤であり、便秘を改善する目的で使われます。正しくは:グリセリンは便秘を改善する効果があります。選びやすい理由:薬剤名として一般的に知られているため、作用を詳しく知らないと選択肢として残ってしまう可能性があります。混同注意:便秘を緩和する目的の薬剤と、便秘を誘発する副作用を持つ薬剤とを混同するかもしれません。
- 3. センノシドは、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を活発にすることで排便を促す刺激性下剤であり、便秘の治療に用いられます。正しくは:センノシドは便秘を改善する効果があります。選びやすい理由:下剤の一種であることを知っていても、具体的な作用機序を把握していない場合、他の薬剤と混同しやすいです。混同注意:他の浸透圧性下剤や膨張性下剤との違い、あるいは便秘の原因となる薬剤と混同する可能性があります。
- 4. ラクツロースは腸内で分解されにくい糖であり、腸内の水分を引き寄せる浸透圧作用によって便を軟らかくし、排便を助ける浸透圧性下剤です。便秘を引き起こす作用はありません。正しくは:ラクツロースは便秘を改善する効果があります。選びやすい理由:比較的新しい下剤として耳にすることがあるため、その作用を正確に理解していないと迷うかもしれません。混同注意:薬剤の種類が多く、その作用が類似しているため、他の下剤や便秘を誘発する薬剤と混同しやすいです。
- 5. 酸化マグネシウムは腸管内で水分を吸収し、便を軟化させて排便を促進する非刺激性の浸透圧性下剤です。便秘の治療に広く用いられます。正しくは:酸化マグネシウムは便秘を改善する効果があります。選びやすい理由:一般的に知られている下剤であるため、その作用機序を詳細に知らなくても「薬」として選びがちです。混同注意:ミネラル製剤としての側面もあり、便秘改善以外の目的(制酸作用など)と混動して、便秘誘発作用があると誤解する可能性があります。
国試ポイント
本問題は、薬剤の主要な作用とその副作用に関する基礎知識を問うものです。特に、理学療法士として患者の全身状態やADLに影響を与える薬剤の副作用を理解しているかが重要となります。オピオイド系薬剤が消化管に与える影響(便秘)は臨床で頻繁に遭遇する問題であり、下剤の種類と作用機序(刺激性下剤、浸透圧性下剤など)の区別も、薬剤知識として重要視されています。
混同注意
便秘の原因となる薬剤と、便秘の治療に用いられる薬剤(下剤)の区別が曖昧な場合、誤答しやすい問題です。下剤には様々な種類があり、それぞれ作用機序が異なるため、名称と作用を結びつけて覚える必要があります。特に、オピオイドの副作用としての便秘は特徴的なため、他の薬剤による便秘とは異なる機序で起こることを理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、まず問題文が「便秘を『生じやすい』薬剤」なのか、「便秘を『改善する』薬剤」なのかを正確に読み取ります。その上で、各選択肢の薬剤が持つ主要な作用と副作用、特に消化器系への影響を想起し、正しく分類できるかを確認します。オピオイド系薬剤は便秘の代表的な原因薬剤であるという知識を軸に、各下剤の作用機序の違い(例:刺激性か浸透圧性か)を区別して判断することが重要です。
関連知識
関連知識として、オピオイド受容体の生理学、オピオイド系鎮痛薬の種類と副作用(呼吸抑制、悪心・嘔吐など)、各種下剤の作用機序(刺激性、浸透圧性、膨張性、上皮機能変容薬、胆汁酸トランスポーター阻害薬など)、薬物誘発性便秘の予防と対策(食事指導、運動療法、水分摂取、適切な下剤の選択など)が挙げられます。理学療法において、薬剤副作用が運動機能やADLに与える影響を評価し、介入計画に反映させる能力が求められます。