車椅子からベッドへの移乗動作において、フットサポートに足を乗せたまま立ち上がろうとすることに関連する病巣はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
フットサポートに足を乗せたまま立ち上がろうとする行為は、状況を正しく認識・判断し、その状況に応じた適切な行動を計画・実行し、不適切な行動を抑制するという一連の遂行機能に問題があることを示唆しています。これらの高次脳機能は主に前頭葉が担っているため、前頭葉の機能障害と関連が深いです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。前頭葉、特に前頭前野は、計画立案、行動の抑制、注意の配分、状況判断といった高次脳機能(遂行機能)を司ります。フットサポートに足が乗ったままであるにも関わらず立ち上がろうとする行為は、状況を適切に判断できない、あるいは不適切な行動を抑制できない遂行機能障害の一種と考えられ、前頭葉の機能と強く関連します。選びやすい理由:高次脳機能障害全般を連想させるため、他の選択肢に比べて最も当てはまりやすいと感じるかもしれません。混同注意:他の高次脳機能障害や、感覚・運動機能障害と混同する可能性があります。
- 2. 視床は、感覚情報の中継、運動機能の調整、意識レベルの維持などに関与しますが、この問題で問われているような複雑な行動計画や抑制といった高次脳機能には直接関与しません。正しくは:視床の機能障害は、感覚障害(しびれ、痛み)、意識障害(昏睡)、運動失調、不随意運動などとして現れることが多いです。選びやすい理由:感覚情報や意識に関わるため、一見すると関係がありそうに思えるかもしれません。混同注意:広範な脳機能に関与するため、特定の問題行動と結びつけにくい場合があります。
- 3. 被殻は、大脳基底核の一部であり、主に運動の開始、方向付け、スムーズな遂行に関与します。随意運動の調節や運動学習に関わりますが、フットサポートに足が乗ったまま立ち上がろうとするような判断や行動抑制の障害とは直接関連が薄いです。正しくは:被殻の障害は、パーキンソン病のような運動緩慢、振戦、固縮、ジスキネジアなどの運動障害と関連が深いです。選びやすい理由:運動に関わる部位であるため、移乗動作に関連すると思いやすいかもしれません。混同注意:他の基底核(尾状核など)の機能や、皮質脊髄路の障害と混同しやすいです。
- 4. 中脳背側は、視覚・聴覚刺激への反射、眼球運動の調節、姿勢反射などに関与します。複雑な行動計画や状況判断、行動抑制といった高次脳機能には直接関与しません。正しくは:中脳背側の障害は、眼球運動障害(上方注視麻痺など)、瞳孔異常、姿勢反射障害などとして現れることが多いです。選びやすい理由:眼球運動や姿勢に関わるため、身体動作に関連があるように思えるかもしれません。混同注意:他の脳幹部位(橋、延髄)の機能と混同しやすいです。
- 5. 小脳虫部は、主に体幹や四肢近位筋の協調運動、平衡機能、姿勢制御に関与します。この部位の障害は、体幹失調や構音障害を引き起こしますが、移乗時の不適切な行動判断や抑制の障害とは直接的な関連は薄いです。正しくは:小脳虫部の機能障害は、体幹失調、歩行障害(酩酊様歩行)、眼振などとして現れることが多いです。選びやすい理由:バランスや協調運動に関わるため、移乗動作に関連すると考えやすいかもしれません。混同注意:小脳半球の機能(四肢の協調運動)や、前庭機能と混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、特定の行動(移乗時の不適切な行動)がどの脳部位の機能障害によって引き起こされるかを問うもので、脳機能局在と高次脳機能障害に関する知識を試しています。特に、前頭葉が遂行機能障害と密接に関連することを理解しているかがポイントです。
混同注意
前頭葉の機能は多岐にわたるため、他の脳部位が関わる感覚障害や運動障害と混同しやすいですが、本質は「判断」「計画」「抑制」といった高次脳機能の障害である点が重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、具体的な『不適切な行動』が示されたときに、それが「思考・判断・計画・抑制」といった高次脳機能の障害なのか、あるいは「感覚・運動」機能の障害なのかをまず切り分け、その上でそれぞれの脳部位との関連を判断することが求められます。
関連知識
前頭葉の機能:遂行機能(計画立案、問題解決、意思決定)、注意、記憶(ワーキングメモリ)、言語(ブローカ野)、情動制御、社会行動。高次脳機能障害の種類と症状:注意障害、記憶障害、失語、失行、失認、半側空間無視、遂行機能障害、病識欠如、脱抑制など。