Danielsらの徒手筋力テストで肩関節屈曲(前方挙上)の段階3の測定をする際、図のような代償がみられた。代償動作を生じさせている筋はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
Danielsらの徒手筋力テストで肩関節屈曲(前方挙上)を測定する際、三角筋前部線維などの屈筋が弱いと、肩関節を外旋させて上腕二頭筋(長頭)の作用で上肢を挙上しようとする代償がみられます。図はこの代償で、代償動作を生じさせている筋は上腕二頭筋です(公式正答2)。
選択肢ごとの解説
- 1. 回外筋は前腕の回外に関与する筋肉であり、肩関節の屈曲(前方挙上)における代償動作とは直接的な関連がありません。正しくは:回外筋は前腕の回外に関与し、肩関節の屈曲には関与しない。選びやすい理由:上肢の筋肉であるため、一部の受験者は迷う可能性がありますが、機能が異なります。混同注意:他の上肢の筋肉と機能が混同される可能性がある。
- 2. 正解。上腕二頭筋の長頭は肩関節の屈曲にも働きます。肩関節屈筋が弱い場合、肩関節を外旋させて上腕二頭筋(長頭)を働かせ、上肢を前方挙上しようとする代償が生じます。正しくは:上腕二頭筋は肘関節屈曲の主要筋であり、肩関節屈曲の補助筋でもあるため、純粋な肩関節屈曲の評価時に肘屈曲による代償が生じやすい。選びやすい理由:肩関節屈曲の補助筋であり、肘関節屈曲が伴うため、代償として現れやすい。混同注意:主要な肩関節屈筋(三角筋前部線維など)と上腕二頭筋の作用の区別が曖昧になることがある。
- 3. 前鋸筋は肩甲骨の安定化や上方回旋に関与する筋肉であり、肩関節の屈曲そのものの代償として肘関節の屈曲を直接引き起こすことはありません。肩関節屈曲時に肩甲骨の動きを補助する役割はありますが、図のような代償とは異なる。正しくは:前鋸筋は肩甲骨の動きに関与し、肩関節屈曲の代償として肘関節屈曲を引き起こす筋ではない。選びやすい理由:肩関節の運動に関わる重要な筋であり、誤って選択する可能性がある。混同注意:肩関節周囲の筋として、他の筋と混同されやすい。
- 4. 肩甲下筋は肩関節の内旋作用が主であり、屈曲動作の代償として肘関節の屈曲を直接引き起こすことはありません。正しくは:肩甲下筋は肩関節の内旋筋であり、肩関節屈曲時の肘屈曲代償には関与しない。選びやすい理由:回旋腱板の一つであり、肩関節の安定性に関わるため、判断に迷う可能性がある。混同注意:肩関節周囲の深層筋として、機能が他の筋と混同される可能性がある。
- 5. 広背筋は肩関節の伸展、内転、内旋に関与する筋肉であり、肩関節の屈曲動作の拮抗筋に近いです。屈曲の代償として肘関節の屈曲を直接引き起こすことはありません。正しくは:広背筋は肩関節の伸展・内転・内旋に関与し、肩関節屈曲の代償として肘関節屈曲を引き起こす筋ではない。選びやすい理由:体幹と上肢をつなぐ大きな筋肉であるため、機能が広範囲だと誤解されやすい。混同注意:肩関節の他の筋肉と機能が混同される可能性がある。
国試ポイント
徒手筋力テスト(MMT)における代償動作の理解は、正確な筋力評価を行う上で極めて重要です。特に肩関節の評価では、複合的な運動や複数の関節をまたぐ筋の作用により代償が生じやすいため、各筋の機能とそれによる代償パターンを把握しておく必要があります。この問題では、肩関節屈曲の際に肘関節屈曲が伴う代償に注目し、その原因筋を問うています。
混同注意
三角筋(肩関節屈曲の主動筋)、烏口腕筋(肩関節屈曲の補助筋)など、純粋な肩関節屈筋群と、上腕二頭筋のように複数の関節をまたぎ、他の作用が強い筋との代償の違いが混同されやすい点です。
次に同じ論点が出たら
もしMTP3の評価で代償が見られた場合、純粋な筋力低下を疑い、MTP2(重力除去位での運動)や、他のより詳細な評価法(例:特定の筋に対する徒手抵抗運動)で再評価を検討します。また、代償を避けるためのポジショニングや固定の指導も重要となります。
関連知識
MMTの各段階(0-5)の基準、重力と抵抗の有無、各関節の主要な動きに関与する筋肉の機能解剖、および一般的な代償動作のパターン。