右股関節の可動域を表に示す。快適速度で直線路を歩行した場合に予想される特徴はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
右股関節の内転可動域が10度と著しく制限されているため、歩行時に遊脚期にある右下肢が立脚期にある左下肢と衝突するのを避けるために、股関節の内転運動が抑制されます。この制限がある場合、体幹の側方動揺が増加しやすいため、安定性を確保するために基底面を広げようとします。その結果、歩隔が増加し、がに股歩行のような様式を呈することが予想されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。右股関節の内転可動域が10度と制限されており、これは健常者の約30度と比較して顕著に狭いです。歩行時には、遊脚側の下肢が接地側の下肢と交差しないように、骨盤の回旋や立脚側の股関節の内転運動が重要となります。この内転制限があると、遊脚側の下肢を振り出す際に体幹が左右に動揺しやすくなり、バランスを保つために歩隔を広げて基底面を確保しようとします。これにより、歩行の安定性を向上させることが期待されます。正しくは:正しい選択肢のため修正不要です。選びやすい理由:他の選択肢も歩行の代償運動として考えられるものが含まれていますが、股関節の内転制限が直接的かつ一般的な代償として歩隔の増加を引き起こします。混同注意:股関節の可動域制限が広範に及ぶ場合、他の要素も影響しますが、内転制限は特に歩隔に影響します。
- 2. 右股関節の屈曲可動域が50度と制限されています。正常な歩行では股関節屈曲は約30-40度、伸展は10-15度程度必要とされますが、遊脚期の振り出しや立脚期の最終段階での股関節伸展は歩幅に大きく影響します。しかし、与えられた可動域の数値だけでは、ただちに歩幅の減少に直結するとは限りません。特に屈曲50度は日常歩行で一般的に必要とされる範囲をカバーできており、この値単独で歩幅が短縮するとまでは断定できません。むしろ、伸展制限15度の方が歩幅減少につながりやすいですが、選択肢は「右の歩幅の減少」であり、この肢位での可動域だけでは断定できません。正しくは:「右足の歩幅が短縮する」という表現自体は股関節可動域制限の結果として起こり得ますが、本件の可動域制限の中でも特に内転制限による歩隔の増加がより直接的かつ特徴的な変化とされます。選びやすい理由:股関節の可動域制限があれば歩幅に影響が出ると考えやすいですが、具体的な制限の度合いと他の代償運動との兼ね合いで、最も顕著な特徴が何かを判断する必要があります。混同注意:股関節の屈曲・伸展制限は歩幅に影響しますが、内転制限は歩隔に直接影響します。
- 3. 右股関節に可動域制限がある場合、右下肢での安定性が低下したり、推進力が得にくくなったりすることが考えられます。そのため、右足への荷重時間を短縮し、左足の立脚時間を延長することで、全体的な歩行安定性を確保しようとすることが一般的です。結果として、左足の遊脚時間はむしろ短くなる傾向にあります。左の遊脚時間が延長するということは、右立脚期が延長することを意味し、右股関節に制限がある場合はこのパターンは考えにくいです。正しくは:右股関節に制限がある場合、一般的には左立脚時間が延長し、それに伴い左遊脚時間は短縮する傾向にあります。または、右立脚時間が短縮するため、左右の遊脚時間のバランスが変化します。選びやすい理由:障害側の立脚時間が短縮し、健常側の立脚時間が延長するという代償運動は起こり得ますが、遊脚時間の延長として捉えるのは適切ではありません。混同注意:遊脚時間と立脚時間の関係性を混同しやすい。制限のある側での立脚時間と、反対側の立脚・遊脚時間の関係を整理する必要がある。
- 4. 右股関節の可動域制限がある場合、特に外転筋の機能不全や股関節の外転制限がある場合に、患側(右)の立脚期に骨盤が反対側(左)に傾斜する「トレンデレンブルグ徴候」が見られることがあります。これを代償するために、体幹を患側(右)に側屈させることで重心を移動させ、骨盤の傾斜を抑えようとします(デュシェンヌ徴候)。したがって、右立脚時に体幹が左に側屈するのではなく、右に側屈するのが一般的です。正しくは:右立脚時に体幹は右に側屈すると予想されます。選びやすい理由:トレンデレンブルグ徴候とデュシェンヌ徴候の区別が曖昧だと間違えやすい。どちらに体幹を傾けるのか、その理由を理解することが重要です。混同注意:股関節疾患に伴う体幹の傾きは頻出事項であり、トレンデレンブルグ徴候とデュシェンヌ徴候のどちらがどちらに傾くのかを正確に覚える必要があります。
- 5. 右股関節に可動域制限、特に内転制限がある場合、バランスを保つために右下肢を外側へ振り出す傾向があります。左立脚時には、右足が遊脚期に入るため、左股関節の安定性が重要となります。しかし、左股関節の外転角度が増加するということは、左脚がさらに外側に開くことを意味し、これは歩隔を広げる代償と関連しますが、直接的な代償運動として左股関節の外転角度が増大すると表現するのは適切ではありません。むしろ、右股関節の内転制限を補うために、右遊脚時に右股関節が外転位で振り出される、または骨盤が回旋することで代償されます。正しくは:左立脚時に左股関節の外転角度が増加する直接的な理由は乏しい。右股関節の内転制限により、右下肢を振り出す際に右股関節が外転位で動く可能性があります。選びやすい理由:歩隔の増加と関連付けて考えることで、外転運動が増加すると連想しやすいですが、具体的な関節の動きを特定する必要があります。混同注意:左右の股関節の動きと歩隔の関連を混同しやすい。どの関節のどの運動方向が増えるのかを正確に理解することが重要です。
国試ポイント
股関節の可動域制限が歩行に及ぼす影響、特に各方向の制限がどのような代償運動や歩行様式の変化を引き起こすかを理解しているかが問われています。股関節の内転制限は歩隔の増加に直結する重要な知識です。また、トレンデレンブルグ徴候とデュシェンヌ徴候の違い、遊脚時間と立脚時間の変化についても確認しておく必要があります。
混同注意
股関節の各可動域制限が歩幅、歩隔、遊脚・立脚時間、体幹動揺などにどう影響するかは混同しやすいポイントです。特に内転制限と外転制限、屈曲制限と伸展制限がそれぞれどの歩行因子に影響するかを明確に区別して理解することが重要です。
次に同じ論点が出たら
提示された可動域制限が歩行のどの局面、どの運動要素に最も強く影響するかを判断します。特に内転制限は歩隔、外転筋力低下は体幹の側屈(デュシェンヌ徴候)、屈曲・伸展制限は歩幅に影響しやすい傾向があります。
関連知識
正常歩行における各関節の可動域、歩行周期における各相の長さと役割、主な歩行異常の種類と原因(股関節疾患によるものを含む)、トレンデレンブルグ徴候、デュシェンヌ徴候。